夜の一戦
あれから、リンドにしごかれ、アムザとゲームをして遊んでいたら、思っていたよりも早く、一年が過ぎた。
最近は、リンドに怒られるなども減ったし、アムザにゲームで、少し勝てるようになってきたので楽しかった。
いや、誰も遊んでくれないし、父も母も構ってくれない頃よりは、3歳の時はずっと楽しかった。
ところで、今僕は馬車にいる。お爺ちゃんが今年の冬に来れないと言っていたので、僕が頼みこんで、王都に行かせてもらえるようにしたのだ。
両親は、領にいるらしい…お爺ちゃんが、ついでに婚約者候補と会うとか言っていたので、それが少し怖い。
「どうしたんですかー?ご主人様、顔が引き攣ってますよー?今回も私の勝ちになりそうですねぇー。」
「考え事してただけだよ。」
「勝負の最中に…ですかー?」
「あぁごめん。こっちに集中するね。」
アムザとリンドが、ついてきてくれるので、良かった。
まぁ、侍女と祖父の執事だと考えれば当然のような気がするが…
「魔物が出ました。最初にはいい相手ですね。坊っちゃん実戦をしてみましょうか。」
リンドから…呼び出しを喰らった…今、いいとこだったのになぁ…
その魔物は、ゴブリンと呼ばれるものだった。
天里千鶴の記憶とまったく同じの緑色の肌に変な耳、僕と同じくらいの背丈の人型の化け物。
「ぎしゃぎしゃきゃ」
少し速いくらいかなぁ。
「うわぁ…縮地っと…」
ゴブリンに向かって急接近し、スピードが乗った状態で上手く殴る。
パキン…骨を折った感触のあとなんか変なのが…
「ぎが…」
「倒した?」
『レベルが上がりました。』
倒したっぽいな…結構骨とか折ったしな。
「…もう少し抵抗があると思ったんですが、では行きましょうか。お乗りください。」
リンドが、頬をかきながら言った後、直ぐに馬車に戻ろうとした。
「なんか取るとかないの?」
「…?、ゴブリンには魔石くらいしか使える所はないのですよ?」
「じゃあ魔石持っていかないの?」
「…貴方が砕いたのが魔石です。その感触は忘れないようにしないと駄目ですよ。欲しかったら胸の中心は狙わないほうがいいですよ。」
「そっか…」
魔石あればなんかできるかなと思ったけど、それならしょうがないか…
「随分はやかったですねー。」
「あぁ、うんゲームの途中で抜けちゃってごめん。」
「…ゲーム、やり直しますかー?」
「んーなんか気分じゃないから景色見てるよ。」
「そうですかー。じゃあ私も外でちょっと遊んできますねー。」
「うん。うん?リンドさんに迷惑かけないようにね。」
「リンドさんがどうしたんですかー?」
程なくして、馬車は動き出した。
その後も、出て来た魔物を倒すなどしていた為、結構、王都まで時間が、かかりそうだった。
「ここで野宿しましょうか…」
「そうですね~料理は任せてください!」
「野宿するの?」
「あれ?聞いてませんでしたか?王都までに一週間ほど掛かりますので、その間野宿で強さを身につけて貰いますので、街にはよりません。」
「え?」
一週間くらい…ずっとですか?
「テントならありますし、問題はないですよ〜にしても、魔物多くなかったですかー?」
「冬の直前の秋ですから、食事集めに必死なのでは?」
「なるほど〜そういうことですかー」
寝とこう…今日はどっと疲れた…
「お待ちください坊っちゃん、夜番の時間をまだ決めてませんよ。」
「そうですよー」
「………」
地獄が再び…やって来た。
寝ていた所に、アムザがやってくる。
「では、お願いしますね〜ご主人様。」
「うん。」
僕の夜番は、これから3時間、それぞれ9時から0時、0時から3時、3時から6時だ。
その内の最後の夜番をやることになった。
「一応、ステータスとか確認しようかな。」
もしかしたら、戦うかもしれないし、その相手が強敵かもしれないので確認しておこう。
「ステータス」
名前 ガルム・ラドムート・フォン・ガッザベル
年齢 4
種族 人間
レベル 3
称号 【財公爵家の嫡男】
HP 180/180
MP 600/600
STR 30
VIT 30
INT 70
RES 12
DEX 9
AGI 600
LUK 1
ATK 1000
DEF 510
MAT 210
MDF 40
HIT 9
AVD 300
CRI 0.1
ユニークスキル〈天龍の箱庭〉
ランクスキル
身体強化系
〈天速判断・レベル1〉〈情報処理・天・レベル3〉〈並列思考・天・レベル1〉
竜系
〈王龍の瞳・レベル3〉〈古龍の鉤爪・レベル8〉〈天龍の角・レベル1〉〈竜の尻尾・レベル9〉 〈龍帝の翼・レベル3〉〈天龍の息吹・レベル2〉〈天龍血・レベル3〉 〈龍帝の鱗・レベル2〉 〈古龍化・レベル4〉
武術系
〈剣魔・レベル10〉〈徒手帝拳・レベル2〉
魔法系
〈聖炎魔法・レベル2〉〈海魔法・レベル9〉 〈鉱物魔法・レベル3〉〈嵐魔法・レベル5〉 〈影魔法・レベル4〉 〈聖魔法・レベル2〉 〈重力魔法・レベル3〉
EXスキル
〈苦痛耐性・レベル8〉〈火耐性・レベル7〉〈記憶力・レベル9〉〈魔力操作〉
「まぁいいか、〈空間龍化〉」
「gyaaaa」
「静かにな…範囲内の魔物を狩り尽くせ。」
首を振る小柄な龍…僕が何しているのかというと〈天龍の箱庭〉の遠隔発動による〈古龍化〉の発動だ。
元々は、自分の体を龍にして暴れまわるスキルだが、こうすることによって龍を使役してるのと同じように使える。
僕の体が、小さいからかまだ幼体みたいな大きさだが…
「ふわぁ…んぅ…眠い…でも一応起きておこうかな」
突如、轟音がした。
…龍がやられた?そんな強い魔物がこの辺りにいるはずがない…2ランク上までなら対応できるのに…
「ギギ、ガァァァァ」
「は?」
大きな大剣を振るってきた緑の巨躯、ゴブリンの上位種だろうか?跳ね跳んで後方に下がる。
「あれの名前は?」
『エンペラーゴブリン、ランクは帝級です。』
「〈王龍の瞳〉…〝光〟〝生成〟〝形成〟〝球〟〝射出〟〈光魔法〉ライトボール」
〈剣帝・レベル9〉〈指揮〉〈帝王の執念〉《ランク不足です》
流れるようにミスリルの剣を取り出し魔法を使う…魔導書とかせがんどけばよかった…
「ガァ…」
光で、目を一時的にやることができた、ミスリルの剣を投げつける。
「〈剣魔〉遠隔発動。」
「…!」
ゴブリンは、短剣を弾く為に大剣を振るうが、短剣が途中で軌道が変わる目を痛めているゴブリンにはこれに対応できないだろう、注意がかなり逸れた。
「〈徒手帝拳〉《縮地》…《ねこだまし》。」
パァン!急接近してねこだまし。
「カッ…」
「〈天龍の息吹・火〉ふぅ…」
怯んだ所に、至近距離から、思いっきりブレスを浴びせる。
「ぐがぁぁぁぐるぁ!」
ゴブリンが湧いて出てくる。なんかのスキルだろう。
「あっても聖級か、〈古龍の鉤爪〉遠隔発動。」
ドラゴンの爪がゴブリンを襲う。
雑魚なら、これで殺れる。
「ガァァァァ」
「〈剣魔〉再発動。周りのゴブリンを殺れ。」
エンペラーゴブリン…長いな略すか…が、鉤爪を止めようとしていたので周りのゴブリンを始末して、踏み込みを甘くした。
「ガァァァ…ギ、ギィ…」
皇帝緑くんは、最初は受けとめられていたが、途中で体制を崩した。
「ぎ、ぎぎが…」
後ろのゴブリン達を殺した。
「ゴブリンくらいなら、帝級でも殺れるな、やっぱり種族の差か。」
「グゥガァァァァ!!!」
皇帝緑が、あり得ない速度で駆けてくる。
大剣の風圧と叫びでふっとばされそうだ…だが、ここで体制を崩すと不味い。
「〈龍帝の鱗〉〈徒手帝拳〉《震脚》、《餓狼の発剄》」
震脚で、体を固定、思いっきり首を搔っ切る貫手。
「やっば…」
「ゴフ…ガァ…」
喉は裂けた、多分殺した…けど僕も切られた…
「〈天龍血〉遠隔発動…いったぁ!あれか、帝王の執念もっと予測しとくべきだった。瞳のランクが下だったからスキル内容見れなかったけど。」
『レベルが上がりました』
『ランクが上がりました』
『スキルレベルが上がりました』
天龍血を傷の周りに発動して、即座に止血する。あとは、体の血が回復してくれるだろう。
「油断した…疲れた…〈空間龍化〉おやすみ…」
寝ないと回復しない。死にそうなので、夜番は任せ寝ることにする。
「マジで、ヤッちゃいましたねー」
「ふむ、最後はヒヤッとしましたが、問題無さそうですね。ですが、エンペラーゴブリン以上は厳しいでしょう。」
「そうですかー」
「ガッザベル家は、安泰ですね。嬉しい限りです。」
帝級の魔物が、出たことに気づかない者などいるわけがない。
二人は、いつでも止められるように最初から、戦いを見ていた。
「さて、少し遅らせて9時くらいに出発しましょうか。」
「そうですね~」
「朝食の用意はお任せください。」
「あっありがとうこざいます〜」
「さて、他の予定も変えましょうか、必要な物が増えましたしね。」
リンドは、スープをコトコトと煮込みながら楽しそうに笑った。
「ん?なんか言いましたかー?」
「いえ、今後が楽しみだなと…」
「そうですかー」
竜系のランク、下から亜竜、竜、龍、古龍(聖竜)、龍王、龍帝、天龍、龍神といった感じです。