生き物の怖さ
どの階層でも魔物がうじゃうじゃいる。
うじゃうじゃいるのは相変わらずシルバーアントだ。
いくつか、上位種っぽいのもいるっぽいが蟻だらけのダンジョンになっている。
空を飛べばある程度無視できるが、壁に張り付いてる奴がいるので、そいつらが面倒くさい。
5階に降りてから自分の攻撃を弾く上位種が増えた。
名前は鋼鉄蟻や甲冑蟻など、アントはどうしたのだろうか。
そういう奴らにはわざわざ近づいて殴った後に爪を生やして貫く《拳龍爪》で一々殴らないといけないので、さっきよりも時間を喰らう。
「ちょっと試してみるか。〈天龍の息吹〉」
火を吹かないように気をつけてブレスを放った。
すると、風が思いっきり出され結構な数の敵を倒すことができた。
『レベルが上がりました。』
急ごう、カイリのいる場所結構広いな…モンスタートラップだからだろうか?
「遠隔発動〈帝龍の瞳〉」
帝龍の瞳を使って、中の状況を確認する。
結構、ボロボロではあるが、体はまだ大丈夫そうだ。
「遠隔発動〈帝龍の鉤爪〉」
カイリを巻き込まないようにして、鉤爪を振るっていく。
あともう少しで、着きそうなのでもう問題はないだろう。
「大丈夫か?カイリ。」
「あっ、ガル兄ぃ〜ごめん…」
「いや、俺が試しに開ければよかったし、判断間違えてるから別に謝らなくていいよ。むしろ、ごめんね。カイリ。」
「俺が悪いっ」
カイリが安心したのか泣いてしまった。
年相応の部分があるのは安心した…
実際、3層目くらいから腕で敵殺せたと思うし、結構動揺していたにしても、もっと早くやるべきだった。
それにトラップの可能性があるなら自分でやって見るべきだし、カイリに間違っても触れさせちゃ駄目だ。
「はぁ、結構俺も抜けてるなぁ。」
カイリが泣きつかれたのか、それともよっぽど疲れたのか寝てしまった。
ダンジョンコアも遠くからぶちこめないか?と思って丸い土みたいなものを収納しようとしてみたが、無理そうだ。
壊さないと駄目なのだろうか?それとも近づいて攻略しないと?
わからないが攻略したら出るらしい魔法陣とかが出る仕組みなら崩落に巻き込まれるかもしれない。
ちゃんと攻略しないと駄目かな。
「この下にブレス展開させて置いて壊滅させてから行くか。カイリも起こすのは悪いし。」
酸欠の心配もなさそうだし炎でいいだろう。
ダンジョン自体が呼吸らしきものをしているようだ、外から空気をもってきている。
中の魔物?を生かすためなのだろう。
その階層でなければ火の大技を使っても問題なさそうだ。
「んぅ。」
俺もちょっと疲れたし少し休憩しよう。
『レベルが上がりました。』
30分くらいして、カイリが起きた。
「ん〜、ご飯…」
「まぁ、しょうがないか。はい。」
「ん。」
肉が挟まれたパンを渡して、僕も食べ始める。
「ん〜30分超えちゃったなぁ…」
「まぁ!説明したら許してくれんだろ。行こうぜ!ガル兄。」
「そうだね。」
5階層は、直ぐ降りられるだろうし、ある程度の魔物はもう倒している。
「そこまで、時間はかからないかな。」
急がなくてもなんとかなりそうだ。
それにカイリは俺の全速力についてこれるわけがないんだし。
「気長に行こうか。」
「それでいいのか?」
「まっ大丈夫でしょ。」
事情を説明したら許してくれると思う。
えっと、こっちに行けば…8層…
「キシィヤァァァン」
唐突に現れたな、一定時間空けば新しく産まれるのか?
「聖騎蟻って種族で、スキルは聖ランクのがほとんどだね。やる?」
「いや、無理そうだからガル兄頼んだ!」
「了解。」
まぁそんなものか、この蟻ゴブリンよりは強い種族だろうし。
魔力2500くらい逝くけどしょうがないか。
「〈空間王龍化〉蟻を蹴散らせ。」
「ガルァァ」
「キシィ…」
王龍の幼体ってのもわけわからんけど、小さいのに結構やるっぽい。
「すげぇ!ドラゴンすげぇ!」
「ガルァ」
ドラゴンが勝利した、今の所ドラゴンしか出していないがワイバーンも出せるようになるんだろか?
ドヤ顔を見せている、なにから影響を受けたのだろう?
『なぁ、なんかあったのか?』
いきなりだなぁ、見てなかったの?
『あぁ、アイツとの話が面白くてなぁ。暇つぶししてたら、おもしれぇもの見逃しちまった。クソッ』
アイツって誰だろう?まぁいいか。
「なぁ!ガル兄なんか落としたぞコイツ!」
「ガルァ?」
見てみると、蟻が魔貨以外に変な物を落としていた。
『ん?おードロップじゃねぇか、よかったな。』
ドロップ?
『あ?もしかして、今まで見てねぇのか?運わりぃんだなお前。意外だなぁ、いや盗賊にこの国で襲われてる時点で不幸ではあったか!ハッハ。』
「…」
「で、これなんなんだ?ガル兄。」
で?なんなのこれ?グルガオン。
『あ?遺物じゃねぇか?運良かったな。魔石とか入ってねぇのに動くようわからんダンジョン産の奴ならそう呼ぶだろ?』
知らねぇよ。最近無駄に働かねぇな、このユニークスキル。
『てめぇが無意識に制限かけてんじゃねぇか?トラウマなんだろ?』
…そうなのかも。
「おーい。聞いてる?ガル兄。」
「あぁうん。ちょっとスキルで見てみる。」
【聖域蟻キット】
・一ヶ月に一匹自動的に蟻が産まれます。
また、一ヶ月経つと、中にいる蟻の数の二分の一の数、増えます。
・蟻を一匹でも放つと周囲の魔素による魔物の発生の抑制、魔物が寄り付かなくなります。
・少し時間がかかるため、出したら魔物が逃げるといったことにはなりません。
・放った蟻は回収することもできるが、非常に小さいため見つけにくく、2日外にいると死んでしまいます。
・蟻の数によって効果範囲が決まります。
注意!!聖域蟻を殺してしまうと意味がありません!気をつけましょう!また、ケースを壊してしまうと効果が無くなります。
注意!!子供が蟻を食べてしまうと魔力を作る器官に重大な問題が発生することがあります!手の届かない場所に置きましょう!ちなみに食べさせて攻撃手段にする等の使い方は幼体以外には効果がありません。
「…なんこれ。」
「なぁ!なんだったんだ〜それ!」
「なんか蟻出せる奴。危険っぽいからしまっとくね。」
「ん?おう。」
まぁ喰いはしないと思うが一応空間に入れとこう。
「ここが8層?」
「なんか、普通に外みたいだなぁ。ワクワクするな!ガル兄!」
「ん。太陽みたいなのはどうなってるんだろ。」
かなり広い空間だなぁとは思っていたが、空モドキがあるとは。
森林などがちゃんとある。
いる魔物は、虫が多いのだろうか?
普通にゴブリンっぽいのもいるっぽい。
木とかも、ダンジョンの土と同じ判定なのが面倒臭いなぁ。
「え〜と、こっちが9層への道かな。」
さっきの聖騎蟻みたいな強さのやつはいないが、数が多いみたいな感じだったのだろうか?
予め殺しまくったせいで、その数も減ってしまっている。
「余裕だな!ガル兄。」
「ガルゥルルル」
「ん?まぁ…」
空中に浮いている団子のような物体を感知する。
その方を恐る恐る向くと黒色のミツバチが飛んでいた。
「羽音がしなかっ〈天龍の鱗〉あぶなっ」
「なっガル兄!」
いきなり高速で殺そうとしてきた…まぁ魔物だし当たり前のことか。
名前は、密影蜂で、スキルは…
「〝深淵〟〝堕落〟■■ ■■ ■■」
「ちっ、深淵魔法か。」
闇魔法の相手を闇に落とすことができる領域だったはずの深淵魔法を使える蜂。
結構強敵かもしれない…
「徒手聖拳…《縮地》からの!《発勁》」
密影蜂は、思いきっり吹っ飛ばされた。
「あまり物理耐性はない?〈天龍の翼〉」
なにをされたかわからないが、飛べば抜けられる筈だ…
結構キツイなこれ、なかなか抜けない。
「大丈夫か?ガル兄!」
「大丈夫。集中しろ。」
周囲をスキルで確認するが見当たらない。
倒したのか?いや…
「あっつ!」
「どうした!ガル兄ぃ!」
「ぐるぅ?!」
足元が物凄い熱い…焼け死ぬ…
「〝影〟〝侵入〟〝拡張〟〈影魔法〉《影潜り》」
これで、影の中に侵入できるようになった。
「〈帝龍の鉤爪〉で、全部貫けぇー!」
影に向かって同時に何個か展開し、鉤爪で攻撃した。
『レベルが上がりました。』
感覚的には、5体くらいはいたような気がする。
「はぁはぁ…〈天龍血〉」
「大丈夫か?ガル兄。」
「まぁ大丈夫。油断しないように気をつけるよ。」
これ、天龍血よりも冷たい物のほうが重要かもしれない。
「〈氷魔法〉あぁ、気持ちぃ。」
「?また変なのあったぜー!」
【影蜜のイヤーカフ】
・自身の影を密状にし、相手を動きにくくする。自身には関係はない。
・また、自身の影から成分が普通の蜂蜜とほとんど同じ蜜を採取することができる。
ステータス MDF10アップ。
「つけるか?」
「え?ガル兄がつけていいぞ!大体ガル兄が仕留めたしなそれならガル兄のもんだ。」
「あ〜了解。」
カイリは獣人だから、野生を優先するあの宗教に少しばかり影響されてるのかもな。
「動ける?ガル兄。」
「まぁ、大丈夫かな空飛べばいいし。」
少し進むと階段が見えてきた残り後2層だ。
そう考えるともうそろそろだな。
結構疲れた、流石に氾濫が起きてるレベルのダンジョンに挑むのはヤバかったのではないだろうか?
「扉?ここが9層か?ガル兄。」
「んー?中が空洞になってるな。」
「先にやったのか?」
「いや、そんなことはできなかった筈…」
8層が広かったから、手を出してはなかったと思う。
「なぁ、どうする?」
「一旦見てみるか。」
「りょ!じゃあ開けるぜ。」
「ガルァルァルァ?」
カイリが手に触れただけで開いてしまった。
出した龍が不思議そうな目で見ている。
「なぁ!これってあの冒険譚で出たボス部屋って奴じゃね?ガル兄。」
「そうかも?ちょっと入って見てみよう。」
「おう!」
入った瞬間扉が閉まり、大量の聖騎蟻と密影蜂が現れた。
「キシキシキシ」
「シィィィノ」
そんな鳴き声だったんか、蜂。
「なぁ!不味くねぇか?嫌な予感がする!」
「クィキシィィィィィィ」
「サァァァァァッシィイィィィノゥ」
【タンクイーンアント】
【暗殺王蜂】
爆発を周囲にまき散らす女王アリと強い筈なのに感知しにくいクソみたいな蜂が現れた。
俺一人なら、なんとかなるかもしれないが、カイリを守りながらなんて無理だ…
どうする?どうする?どうする?
「また、判断を間違えた…」
「ハァァ《餓狼の発剄》、ガル兄!」
カイリが、聖騎蟻をなんとか倒している。
それなのに、俺はまだ考えがまとまっていない…
チッ…判断能力は上がってる筈なのにいつも選択を間違える…
「展開〈天龍の息吹〉…ガァァァァァ」
「「Gyaaaaa」」
二首を作りだし、一緒にブレスを吐く。
『レベルが上がりました。』
考える前に動かないと…死ぬんだ、行動しなくちゃ!
読んでいただきありがとうございます。