FIRST
とある配信者さんのリスナーさんが創作した物語をご本人様の許可のもと私の手でリメイクさせて頂きました。なお、原文は後書きに記載させていただきます。
今回は連載式にしてみました。これもまた初挑戦なので至らぬ節々があるかもしれません。暖かな目で見ていただけるとありがたいです。
〜登場人物〜
影山-カゲヤマ
蜂谷-ハチタニ
白神-シラカミ
翌日未明、俺と蜂谷は約束の時刻より少し早く目的地についた。俺も蜂谷も高校の部活で揃えた白いウィンドブレーカーを身につけている。一応集合場所は展望台となっていたが、たまたま麓で蜂谷と会ったのでここで待とうか、という話になり、一緒に白神の到着を待つことになった。しかし、十数分待って予定時刻になってまたそこからしばらく待っても白神は現れなかった。
「まさか俺たちより先に来てもう展望台で待ってるとか……ないよな?」
このようなトラブルを考え、日の出までだいぶ余裕を持たせて集合時刻を設定したが、こうまで遅いと流石に心配だった。
「んー、白神に限って先に待ってるなんてことないと思うけどねー……。僕らも展望台行こうかー」
「そうだな、元々あっちが集合場所だったわけだしな」
そうして二人で歩き出した。スマホのライトをつけ、足元を照らすと紅く染まった葉が石畳の山道の端に寄せられていた。今は落葉のピークだし、昨夜は風もあったから山道は歩きにくくなっているだろうと予想していたのだが、むしろ駅前の街路樹の下より歩きやすいくらいだ。
「おや、おはよう」
急に蜂谷ではない声がかかり、驚いてスマホを落としそうになった。
「おはようございますー」
蜂谷はいつもの口調で返している。蜂谷の目線を辿ると真っ黒なジャンパーを着て、熊手と大きな袋を持った年配の男性がいた。俺が会釈すると男性は穏やかな表情で笑いかける。
「朝早くからご苦労だね。朝日を見に来たのかい?」
「そうなんですー、おじいさんこそ落ち葉かきご苦労様ですー」
「いやいや、この時期は大変だからね。誰かがやらないと誰かが怪我しちまうから。おぉ、そうだ、この先はまだ手付けられていないから、足元に注意するんだよ」
「はーい、ありがとうございますー」
俺が出る幕もなく会話は終了し、男性にお辞儀をし、蜂谷の後に続いた。
「影山ぁ、挨拶くらいしなよー」
途中蜂谷は俺を振り返り言った。
「足元しか見てなかったから人いるの気付かなくて。びっくりして声出なかったんだよ」
俺は相変わらず足元を見ていた。段が見えない程積もった落ち葉は踏みしめる度にザクザクと音がする。そして間もなく展望台に到着した。
「んー、やっぱいないねー」
「...はあ、まぁ、予想通りってとこか。朝日昇り切る前にくるといいな、せめて」
ねー、と言いながら蜂谷は置かれているベンチに腰を下ろした。俺もその隣に座る。
「そんなに残り距離なかったし、俺たちが帰る頃には落ち葉かき終わってそうだったな」
「そうだねー、道具と時間があったらお手伝いしたかったなー」
「いくつなんだろうな、あのおじいさん。歳聞いたらびっくりするタイプの人だとは思ったけど」
「若かったねー、僕もあんなおじいちゃんになりたいなー」
そこで会話は途切れ、二人ともスマホを覗き始める。ネットで調べた日の出予定時刻まであと五分。白神が来るような気配はない。
しばらくして、
「あと一分だしもっと前出よーかー」
と蜂谷から声がかかり、展望台の先端まで行き、柵に体重を預けた。蜂谷は俺の右隣で一度伸びをした。
「結局あいつ遅刻かよ。自分で誘っといて...」
「まーまー、いつものことだし、目瞑ってあげよー」
会話も程々に俺と蜂谷は地平線に目を向ける。暗い空は地平線に近付くにつれて段々と色が淡くなっていて、もう日がそこまでやってきているということを感じさせられた。俺はぼんやり眺めている風に振舞ってはいたが、その目線は確実に朝日を映そうとしていた。食い入るように見ていると後から蜂谷にからかわれそうだと思ったからである。そして徐々に朝日が姿を現していく。横一直線の地平線をど真ん中から歪めていくように、ゆっくりと。
「よぉ!!」
神秘的な光景に目を奪われていると聞き慣れた声が突然背中に投げかけられ俺は肩を跳ねさせた。今度は蜂谷も驚いた様子だった。
「あー、びっくりしたー、急に大声出すなよなー白神ぃー」
蜂谷にも見慣れた呆れ顔が浮かぶ。それに白神は反省のはの字も知らない様子でしししっと笑っている。
「ほらー、朝日もう昇り始めてるよー、早く来なよー」
という蜂谷の声で俺も向き直った。後ろからはおぅ!という声がして白神が勢いよく俺の左側の柵に飛びついた。そうして静かになった空間に俺は一抹の不信感を抱いた。白神の呼吸が妙に荒かったからだ。気になって着実に昇る朝日から目線を外し、横目で白神を見てみると、こめかみや頬のあたりに汗が滲んでいることに気付いた。朝日も昇り切っておらず、まだまだ寒いというのに。
「白神さぁ、なんでそんな疲れてる感じなの?」
白神にそう問いかけるとすぐに答えは返ってきた。
「いやー遅れすぎたなと思ってさ!麓から全力で走ってきたんだ!!」
「ふーん」
色々と疑問はあったが面倒くささが勝って適当に流してしまった。そして、目線を戻すと、太陽は既に半円を晒していた。おかげで暗さはなくなり、下に広がる街並みも自分たちが立つ足元もすっかり見えるようになった。その後は鳥の鳴く声と風が木を鳴らす音だけを聞き朝日が完全な円になるのを見届けた。地平線の上にちょこんと乗った世界を照らすその円はなんとも神秘的で、俺はしばらく目を離せなかった。微動だにしないあたり恐らく蜂谷も同じだったのだろう。
「昇ったな!!」
白神の声で俺たちは現実へと引き戻された。
「だな」「だねー」
俺と蜂谷の声が被って、蜂谷はもう一度伸びをした。そして蜂谷は踵を返しベンチに腰を下ろした。俺もまた隣に腰掛ける。そして柵越しにまた太陽へと目をやったが、白神が目の前に立ち視界を塞いできたのでそれも束の間だった。
「なんだよ、邪魔だよ、白神」
俺が不機嫌そうに声を出しても、それを気にするような様子はなく、白神は
「やまびこしようぜ!!」
と提案してきた。隣で蜂谷が呆れ顔になったのが雰囲気でなんとなく分かった。
「白神ぃ、やまびこは山があるところでするものでしょー?山なんて見当たらないよー?」
蜂谷がそう言うと白神は一度振り返り
「うん!!ないな!!」
と言い、また続けた。
「でもこういう広いとこに来るとなんか叫びたくならねぇか!?」
「あ、それは分からないことねぇかも」
目を輝かせながら言った白神のその言葉に心のどこかで共感して俺は思わず口に出してしまっていた。
「影山正気ー?」
蜂谷の呆れが俺にも向けられてしまったので、俺は被害拡大を試みる。
「ほら、蜂谷もやんぞ、立て立て」
俺が蜂谷の腕を引きながら立ち上がると、白神も反対の腕を取った。でも蜂谷は頑なに立ち上がろうとしない。
「無理だってー、僕大声出せないからー」
「別にデカくなくたっていいんだ、やったもん勝ちだ」
「そうだそうだ!!」
一歩も引かない俺たちをどうしようか蜂谷は一瞬悩んでまた口を開いた。
「分かった分かったー、声大きかった方に僕がジュース奢るでどうよー」
その一言で俺と白神の動きが止まったよね蜂谷は少しホッとしたようだった。
「どうするよ、白神」
「いいぜ!!勝負だ!!」
そして俺たちは蜂谷を解放し、また展望台の先端へと歩み出た。蜂谷の合図で同時に、ということに決まり、俺は深呼吸してコンディションを整えた。さっきとは反対の右側に立った白神は特に何もしていないが、ワクワクしているのが空気伝いに感じ取れる。
「いくよー」
背中に蜂谷の声がかかる。俺と白神は短く返事をして腹に力を入れた。
「せぇーのぉー」
「やっっっっほーーーーー!!!!」
「あ゛ぁ゛ああああああああ!!!!」
人生で一番の大声を出した自信がある。しかし隣から聞こえた声はその何倍も上を行った。まぁ、はなから勝つつもりはなかったが。俺は潔く負けを認める用意をした。でも。
「なんだよ白神『あああ!!』って。やまびこは『やっほー』だろ」
これについては触れずにはいられなかった。
「影山こそ!!大声対決だぞ!!『やっほー』じゃ力入らないだろ!?」
すぐに返ってきた白神の反論に俺は黙り込んだ。ぐうの音も出ないとはこのことである。
「どうするー?なしにしてもう一回やろーかー?」
蜂谷の助け舟に俺は心の中で感謝して答える。
「いや、いい。俺も『あああ』にしたところで白神の声には勝てなそうだわ、俺の負け」
これを聞いた白神は太陽の方に拳を突き上げ歓声をあげた。その横顔はぱぁっと花咲いたような満面の笑みに包まれている。しかし、それを微笑ましいと思う隙はなかった。
「なぁ白神」
声をかけると白神は無邪気な顔をこちらに向けてきた。
「肩なんか赤くなってるけど、どうした?それ」
丁度肩のラインの部分が赤く染まっていたのだ。
「ほんとだ!!」
ジャージを乱暴に引っ張り、赤くなった部分を視認した白神はそう言っただけで、すぐに興味をなくしたように手を離した。
「何なにぃ、ケチャップでもくっつけてきたの、白神ぃ」
いつの間にか俺の隣まで歩み寄ってきていた蜂谷がふんわりと言う。俺は思わず苦笑してしまった。
「やめてくれよ蜂谷、さすがにフォローできねぇぞ。何をどう食ったら肩にケチャップつくんだよ」
そう言うと蜂谷はえへへーと緩く笑った。俺は白神の方に向き直る。
「大丈夫か?白神さっき大急ぎで来たって言ったろ?なんかに引っかけてどっか怪我とかしたんじゃないか?」
「んー、まぁどこも痛くないし大丈夫なんじゃないかな!そんなことより早く帰ってゲームしようぜ!」
白神は俺の心配も他所にせかせかと帰路に着いた。
「心配するだけ無駄だったか、あいつには」
「まー、白神は大怪我して血だらけになってもケロッとした感じで『生きてるから大丈夫!!』って言うような奴だからねぇー。.....あ、ていうかどうしたのかなー、『秘めたる力ごっこ』、もしかして忘れてるー?」
「まだごっこ遊びだって決めつけてやるなよ、今度の今度の今度は本当に何か手に入れたかもしれないだろ?まだ駅まで時間あるし」
「何ぃ、影山もしかして信じてるー?」
「いや?」
俺と蜂谷は目を見合って笑い、早歩きで白神の後を追った。石畳に出ると数段下で白神が腕を組んで
「遅いぞ!!」
と吠えてきた。若干急ぎめに石畳を踏みしめるとザクザクと落ち葉の鳴る音がした。何段か下ったところでザクザクという音はタッタッという靴音に変わった。そこで俺はあっと声を漏らした。
「落ち葉かき終わってなかったのか」
「あー、そういえばそうだねー、用事でもあったのかなー」
俺が来た道を振り返って言うと、蜂谷も同じように石畳を見上げた。
「んー、残り少しくらいお手伝いしたいけどねぇー、やらせてくれるわけがないよねぇー」
蜂谷が向き直ったのを見て、俺も目線を戻すと白神が
「行くぞ!!」
と大きな声を出し、また先を歩き出してしまった。
「仕方ねぇな、また機会あったら手伝うようにしようぜ。そん時は多分、白神抜きで」
俺はそう帰りを促すと、蜂谷はんーと気のない返事をして後をついてきた。
それからは先を歩く白神が時折後ろを確認してまた歩き出すという行程を挟むだけで何も気になるところのないただの帰路だった。白神だけ別の電車のため、白神とは駅前で別れ、俺と蜂谷は帰りの電車に乗り込む。疲れと眠気もあり、結局何も見せなかった白神のことを少しだけ話題にしただけであとはお互い目的の駅に着くまで黙っていた。家に帰り間もなく白神から連絡が入り、ゲームを付け、昼食前まで没頭。昼食後はあまりの眠気に耐えきれず、昼寝と銘打ち、ベッドに潜り込んでしまった。やっと目を覚ますと窓の外はもう暗がりを有していて、午後の四、五時間を軽く寝て過ごしてしまったことを物語っていた。寝ぼけ眼でリビングへ向かい、眠気覚ましとしてテレビを付けるが、時間的にどこもニュースばかりだった。その上どこも今朝行った山で起きた殺人事件の話題ばかり.....。その瞬間、俺の目は完全に覚めた。展望台に向かう途中の道から外れ、山中に入った所で死体が発見されたそうだ。まだ詳しいことは分かってないそうで、現状を報道し、また次の話題に移っていった。俺はテレビを消した。恐怖と不安が入り交じったような気分だった。殺されるのは俺だったかもしれない、疑われるのは俺たちかもしれない。そんなことが頭の中を駆けて巡った。間もなく夕食の時間になったが上手く喉を通らず短時間で済ませてしまった。その後もやることなすこと身が入らない感覚がし、あれだけ寝たというのに、さっさと布団に入りまた眠りに就いた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
今回の本文と対応する部分の原文と少々の変更点を記載させていただきます!
〜原文(誤字脱字も直さず記載しています)〜
森でみんな集合したがあと1人がどれだけ待っても来なかった
もう2人で行こうぜとなっていたすると遅れた子が来た
はぁはぁと汗をかいてあり
かたに赤いものがついていたみんなケチャップかな?と思っていた
そんなことは気にせず森を歩いていた
帰宅した後テレビをつけてみると
歩いていた森に死体があったらしい
他の人が殺ったのか?と思いながらぐっすりと眠りにつく
〜私が書くにあたり変更させて頂いた部分〜
山の入口で合流ではなく、展望台での合流にしました。
ぐっすりとは寝せず、不安をかき消すために寝せました。
次回もお楽しみに!!