表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/41

9.王子の求婚

 気がつくと見知らぬ部屋にいた。

 うつぶせに倒れた私の手には、天井のステンドグラスから、色とりどりの光がさらさらと落ちてきていた。天井には星型の装飾があり、そこがくり抜かれ、色付きの硝子をはめられているらしかった。


 周りを見渡すと、黒と金色の衣装を着た見知らぬ人々に囲まれていた。年齢はさまざまだが、揃って褐色の肌をしており、皆、一様に泣いている。


「聖女さまだ!」

「なんてお美しい」

「瞳までもが真っ黒だ……」


 私は気圧されて、ずるずると後ずさりした。見知らぬ男性たちがにじり寄ってきて、恐怖で泣きそうになる。


 どうしてこうなったのかを慌てて思い巡らせていた。


 そして、ふと思い出す。それは夜道を歩いていたときのことだ。まるで宇宙のような、真っ暗でいくつもの星が輝く空間を滑り落ちていく感覚があった。

 途中で、だれかが腹に手を回し、支えてくれている感覚があった。また、耳元で優しく大丈夫だと囁かれたのをぼんやりと思い出す。


 そのまま空から落ちてきた。そんな感覚があったが、床に叩きつけられる瞬間、ふわりと身体が浮いて、誰かの見えない手に支えられたような気がした。




 豪華な扉が大きな音を立てて開いた。そこから出てきたのは、とても美しい男の人だった。

 同じく褐色の肌をしているのだが、その髪の毛は見慣れた黒い色で、瞳は深い緑色。ーーどうしてだか既視感がある。


 その人は、興奮していた周囲の人々をなだめると、大仰に私の前に跪いた。


「驚かせてすまない。私は、この国、サーブルザントの第二王子。名をアイユーブと言う。この国を救ってくれる聖女を探していた。あなたこそが、まさに聖女だ」


「王子……? 聖女……?」


 私は新手の勧誘を受けているのだろうか。こんなに壮大な舞台装置まで用意して?

 よけいに怖くなってきて身を硬くしていると、その人は私の手を取り、くちびるを落とした。


「これからあなたには、私と一緒に魔王の討伐に向かってもらう。そして、この国を救ったあとは、共に王妃として歩んでほしい」


 そう言うと、王子はまっすぐに私を見つめた。周囲の男性たちが、おお、と歓喜の声を上げる。

 おかしな世界にいることが恐ろしくて、泣きそうになっていると、天井から吊るされていた星や天体の模型が、矢のように降ってきた。


 だがしかし、それは誰にも刺さることはなかった。王子が手を空中に向けており、その手から、半円状の障壁のようなものが出ているのだった。


 上のほうから舌打ちが聞こえた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ