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マイホームダンジョン  作者: ニケ
第4章 ダンジョン編
222/222

接触


 翌朝、セシルは地面の硬さと冷たさに、寝て起きて寝て起きてを繰り返し、少し鼻水が垂れる様な微妙な体調で起き上がる。


「ライン、鼻水取ってくれる?」


 肉食担当のラインに、鼻水って肉扱いで合っているのかな? と自分で疑問に思いながらもお願いをする。


「ピョー」


 ラインが鼻に取り付き『ゾッッ』という吸引音と共に鼻水が無くなりスッキリするが、あまりの勢いに脳みそまで吸い取られたのではっ!?と恐怖を感じたのはご愛敬だ。


 外はまだまだ暗い中、トイレを済ますとすぐにヨトとユーナを起こす事にした。


 ヨトとユーナは元よりこの環境での睡眠に慣れていたのでぐっすり寝ていたのだが、ワイバーンマットレスのブルジョワな睡眠に慣れ切ったセシルに耐えられるものではなかった。


 ワイバーンマットレスを盗まれ一晩経てば怒りが収まるどころか、弥増すばかりだった。


 ディビジ大森林という厳しい環境の中で、苦労して岩山に家を掘り、安心安全の住環境になったかと思えば、奥の洞窟と繋がってしまう最悪のハプニングに魚っさん達の襲来に生臭い臭い。

 そんなろくでもない環境の中、ワイバーンマットレスだけは王侯貴族にも自慢できる程の物だと自負していたのだ。


 許せない。


 すぐにでも犯人から取り返さなければならない。と気合を新たにヨトとユーナを早朝から起こす。


 ヨトとユーナはもちろんの事、マーモット達も朝早くに起こされた事に眠たげな声で不満を訴えるが

「じゃマーモット達と寝ていると良いよ。僕とマーモ、ライライだけで取り返しに行ってくるよ」

 マーモット『達』の中にマーモがカウントされておらず、強制的に連れていかれるメンバーに入っていたマーモはびっくりした顔をしているが、セシルは見ないふりだ。


 そそくさと準備を始めるセシルに、ヨトとユーナは急速に眠気が冴え背筋に冷たい汗が流れる。

 ここの生活に慣れたとは言え、セシル達の戦力無しで生きていける様な環境で無い事は痛いほど理解している。

 慌てて参加を表明し、準備を始めるのだった。


 ヨトとユーナは改めてここでの生活はセシル達に担保されていると気付かされた。

 いや、よく考えるとライライ、マーモの能力もセシルがいなければ成り立たない。

 マーモやライライも結局はセシルの魔力を使って魔法を使っているのだ(多分)。

 セシルの魔力がなくなったらマーモもディビジ大森林では多少デカいだけのマーモット。

 ライライは魔物界では最弱クラスのスライム……いやライライに関しては魔法無くてもそれなりにやれそうな気もしなくもないが……。

 ――とりあえずヨトとユーナ、そしてマーモット達だけで残されても選択肢は犠牲を出しながら逃げるだけになってしまうだろう。


「さっ早く虫食べて」


 夜に大量に獲っていた虫を、セシルを含め全員が嫌な顔をしながら口に放り込んでいく。

 簡単に獲れる虫とは言え、全部が食用に向いているとは限らない。

 細かい棘があり口に刺さる虫もいれば、触れただけで激痛が走るものもある。

 今ではだいぶ見分けが付くようになっているし、細かい棘がある虫はラインに食べやすい所だけを残してもらう事も可能だ。

 とは言え、単純に成虫は基本的には苦くマズい。


 虫という栄養食を無理くり入れ込んで、溜めてあった水を飲むと出発だ。


「水も後で取りに行かないとね……」


 大所帯になった今では水もすぐなくなるので、洞窟の奥か外まで毎日取りに行かねばならない。

 最悪水魔法もあるが、空気中から汚い物も集めてしまう水魔法はやはり飲用には向いていないだろう。

 洞窟の水も魚っさん達が浸かっていたので、今となってはどっこいどっこいな気もしているが。


 用心しながらセシルハウスを出る。

 もう骨だけになったアンキロドラゴン、ティタノボアにはスライムくらいしか集っていないようだ。


 安全を確認したセシルは颯爽と帝国側に向かおうをするが、マーモに服を咥えられ止められる。


「ナー」

「おっそうだったそうだった。もう外に出たから僕の臭いが染みついたワイバーンマットレスを追えるのかな?」

「ナー」


 マーモが得意気に頷くとセシルが歩こうとした反対側に向かって行く。


「まさかの王国人が犯人だったパターンかな? いいね。マーモ最高だよ。この調子だとすぐ解決しそうだ」

「ナー!」


 もうワイバーンマットレスを取り返せた気分になっているセシルはニコニコだ。

 最近、ライライばかり活躍している事に若干の嫉妬をしていたマーモも得意げだ。


「セシルさんがニコニコするようになってホッとしているんだけど、犯人を見付けた時の地獄絵図を想像すると……ウッ、もうさっき食べた虫を吐きそうなんだけど」

「おい、想像させるなよ。何人いるのか知らないけど、盗んだやつら全員……全員ヤるつもりなのかな?」

「お~い、聞こえているよ~。流石に……全員は……どうしよう。見せしめ? に何人かでいいかな?」

「怖い怖い。セシルさん怖いって」

「そう? だって僕の大事なやつを盗んだんだよ?」

「考えてみてよ。セシルさんのって知って盗んだのならまだ分かるけど、落ちていたのを拾って持って帰ったって認識なら殺すのはやり過ぎじゃないかな?」

「いやいやいや、あの生活臭のある部屋で落ちていたは無理があるでしょ」

「それは……そうね」

「いやいや、昨日洞窟の中に入る前に奪わなきゃ奪われる。これがここのルールだ!とかなんとかセシルとユーナで言ってなかったか? あいつらがワイバーンマットレスを奪ったのもここのルールだろ? ならルールを守ってるとも言えるぞ」

「ヨト、そういうとこあるよ」

「なっなんだよ。間違った事言ってねぇだろ」

「女の子は正しいとか正しくないじゃなくて、肯定して欲しいんだよ。お兄ちゃん」

「どこでそんな事覚えたんだよ。あとセシルに言ってんだよ」


 そんな会話をしながら歩いているといつもの水場付近に近付いて来た。


「あーそうか。一泊するなら水場の近くが良いのか。僕も水の確保に苦労したもん」

「あっ誰か居る」

「ほんとだ」

「あっこっちも見付かった」


 バッカ組の見張りの冒険者がセシル達を見付けると、朝方で起きている人数が多かった事もあり、セシル達が近づく前にはすでにキャンプ地が俄かに騒がしくなっていた。

 ちなみにワイバーンマットレスを持って行ったのは帝国人である。

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