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マイホームダンジョン  作者: ニケ
第4章 ダンジョン編
215/222

迷宮内部へ


「ねぇねぇ、あの人たち交易品持ってきてなくない?」


 ライライ達の光でほの暗く見えている帝国人達を見ながらユーナが指摘する。


「えっまじ!?」


 セシルは後ろに付いて来る帝国人側の地面に雷鎖を放り投げるとバチバチと雷魔法を流す。

 セシルの低火力の火魔法よりも雷鎖を使った方が全体を照らす事が出来るのだ。


『うわっ!?』

『なんだっ!?』


 突然足元からビカビカと光出すと共にバチバチと音がし始めた事に帝国人が驚く。


「うわぁほんとだ。簡単な手荷物しか持ってなさそうだ」

「どうする?」

「家の前の魔物を排除するか?」

「ん~いや、交易品取りに行くのは後でも良いでしょ。流石に衣類とかは魔物も放置すると思うんだよね」

「それもそうか」

「あのおじさん達はどうするの?」

「あいつら臭いから入ってきて欲しくないよね」

「その臭い人に生臭いって言われたワタシたちは……」

「臭さの種類が違うから!! 俺らは魚っさんの臭いが付いてしまっているけど、あいつら本人から出てる臭いに違いないから!」

「まあ僕達も魚っさん臭どうにかしたいよね」


『おいっ何話しているんだ。もっと奥に行けよ!』


 チッ


『舌打ちが聞こえたぞ! 大人を舐めるんじゃねぇぞ!』

『おいネンドルンやめろ! 敵対してどうする!』

『隊長さん、あんたにはお子さんいねぇのかい? 子供には立場ってもんを分からせてやんなきゃダメなのよ。教育よ。教育』

『俺は子供がいるし、お前は子供持った事無いだろうが』

『……? 何で俺に子供がいないのを知っている?』

『っ、それは……』


 死んでも差し支えない人物として案内役に選ばれているネンドルンは身内がいないかなどの身辺調査もしっかりされている。


 なんかごちゃごちゃ言い合っている帝国人を余所にセシル達は徐々に奥に進んでいく。


「決めた。撒こう。撒いてしばらくしたら戻って交易品も貰おう」

「おっけぇ」

「……人のを盗る事に躊躇いがねぇな」

「ふふふ」


 セシルの喜んでいそうな声色にヨトは顔を引きつらせる。


「褒めてねぇよ。ユーナも盗る事が当たり前になるなよ」

「お兄ちゃん、何を言っているの? これがここのルールだよ」

「ヨト、そうだぞ。奪わなきゃ奪われるんだ。さっきも僕らの寝室を抜け目なく見てたぽいよ」

「だが。あいつらは盗ろうとしていたんじゃなくてちゃんと交易をだな……長期的に見ると友好関係を築いた方が良くないか?」

「まあそれはそうだけど、多分あいつらじゃ何度も交易品持ってくるの厳しい気がするんだよなぁ」

「それは分からないだろ。それに、俺とユーナが王国行った時も堂々と生きられる様にしていたいんだ」

「すごい。僕を殺そうとしてきた人のセリフとは思えないよ」


 セシルは心底驚いた顔をする。


「ぐっ」

「まあ交易品についてはまた後で考えるとして、とりあえずあいつらが付いて来られないように光は最小限にあの水場を目指すよ。明かりが強いライライ達はマーモが運んで先頭を進んで。ヨトとユーナもそのすぐ後ろ辺りを付いて行って」


 セシルが指示を出すとそれぞれが頷き、行動に移していく。

 ライライ達もフッと光を消すとスルスルと先頭に向かって行く。


『えっ!?』

『暗くなったぞ!』

『明かりを点けろ』


 帝国人達がバタバタしている間にセシル達は火魔法で最低限の視野を確保し離れて行った。


 残された帝国人達は持ち歩いていた荷物からどうにか松明を付けた時にはセシル達の姿は見えなくなっていた。


『あいつらいないぞ』

『チッどうする』

『慌ててここに逃げ込んでしまったが表にポストスクスも繋いでいるぞ』

『そっちに逃げた方が安全だったんじゃねぇか?』

『……多少危険を冒してでもポストスクスの方に戻るか』

『それが賢明かもしれませんね』

『……よし戻ろう』

『隊長さん。小部屋に魔石とか魔物の素材が少し見えたぞ』

『流石にそれはダメだろう』

『なぁに少しだけならバレねぇって。もし高級素材があれば少しだけなんて言わず全部持っていけば良い。交易なんて難しい事考えなくて良いんだ。こんな危険な場所からはとっととおさらばすれば良いのさ』


 ディビジ大森林と言う場所に辟易としていた隊長は心が動かされてしまう。


『……とりあえず見るだけだぞ』

『へいへい』


 帝国人達はそのままワイバーンの羽や魔石などをごっそり持っていくのであった。




☆☆☆



 バッカ率いる冒険者組、ロディとカーナが所属する神殿組もすぐ側まで来ていた。


 先行していた冒険者組は意外にビビりのバッカの英断により安全を優先した遠回りな道を通っていたが、神殿組は冒険者組に先を越されまいと斜めに突っ切る道を選んでいた。


「思いの外、通り易いな」

「ええ、街道から外れるともっと鬱蒼としているかと思っていましたが、木と木の間は割と離れていますし、草もあまり背が高くないですね」

「荷車は時間差で現地に着けば問題ないと思っていたが、思ったより進みが良いな……森でそんな事がありえるのか?」

「シルラ領の近くの森は街道から少しでも外れると鬱蒼としていましたよね。徒歩でも苦労するくらいには……ロディ殿に聞いてみましょう」

「ああ、あいつか。田舎暮らしだから多少は詳しいか」



「……お呼びですか?」


 ロディが呼び出され後ろにはカーナの姿もある。

 2人にはまた何か理不尽に叱咤されるのではないかと怯えが見えていた。

 神殿女騎士のリマはその様子を見て迂闊にロディの名前を出してしまった事を少々後悔してしまう。


「なぜこの辺りの森が歩きやすいか分かるか?」

「え? あぁほんとですね……」


 心身共に疲弊しているロディとカーナにはそんな事を考える余裕は無かった。

 何も考えず言われた指示のままに動く事が楽だった。


「なんだ。田舎育ちだと言うのにそんな事も気が付かなかったのか」

「もっ申し訳ございません」


 慌てて栄養の足りていない脳みそをフル回転させ周りをきょろきょろと見渡す。


「えっと、あっ……」

「なんだ言ってみろ」

「確かな事は分からないのですが……」

「前置きはいい。早く言いなさい」

「一般的な魔物と言うには……少々大きすぎる魔物の移動したであろう痕があちこちに見えます。恐らく中型から大型の魔物が頻繁に移動しているからこの様な植生になっているかと」


 それを聞いた騎士は慌てた様に周囲を見渡し安全を確認したあと怒りが沸々と湧いて来る。


「どれだ?」

「はい?」

「どれが魔物の痕かと聞いている」

「たとえば、この落ち葉が周囲より少し凹んでいますが、恐らく昨日通った痕かと」


 ロディは狩りの専門家ではないが冒険者業でだいぶ分かる様にはなっていた。


「分からん。リマ、分かるか?」

「いえ、私には……」


 森慣れをしていない騎士には魔物の通った後など、よっぽど分かりやすものでない限り言われても良く分からない。


「なぜそれを早く言わなかった!?」

「えっ、いや」

「くそっ! 役立たずめ。急ぐぞ……」


 そこら辺の雑草を苛立たし気に蹴ると先を急ぐ様に進み始めた。


 出発前の優しい騎士たちの姿は見る影もなくなっている。






最近忙しくて中々更新できなくてすみませぬ。

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