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マイホームダンジョン  作者: ニケ
第1章 大賢者の再来編
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領主報告1




 それから二日後、コルトがトラウス辺境伯の元へ辿り着いた。

忙しい領主との面会は通常すぐ出来る物ではないが、コルト隊長が面会理由を「大賢者に関わる事」とした為、領主の指示により通常業務の後に無理やり面会の時間が作られた。


 コルト隊長が通された領主の執務室は華美な装飾が全く無く、家族の絵画が一枚飾られているのみという質実剛健を表すかのような部屋だった。


 部屋には辺境伯の他にも辺境伯の右腕マルエットが長椅子に座ってコルトを待っており、

 テーブルの反対側にはお抱え魔術師のルーレイが座っている。

 部屋の隅に騎士が1人と侍女が1人いた。


 コルトも辺境領専属騎士である為、挨拶もそこそこに末席の椅子に座らせて会話が始まる。

「手紙では無く、直接そなたが来たと言う事は何か問題が起きたのか?」

「ハッ。決して悪い事が起きたのでは無いのですが、お耳に入れたい事が。人払いをお願いしたいのですが……」

「よろしい。ではお前たち退出せよ」


 待機していた騎士隊長が少しムッとする。コルトより階級が上なのに人払いの対象となったのだ。立場が無い。

しかし領主の指示と思い直し、侍女と共に不承不承出ていく。

 マルエットとルーレイに付いては予め同席をお願いしていた為、当然その場に残る。


「はっはっはっ。あやつには後で謝って置かんとな」

「お手を煩わせて申し訳ございません」

「よい。では早速だが人払いしてまで話す事とは何だ?」

「セシルについてですが、いや正確にはセシルの従魔についてです。セシルの従魔が……魔法を使いました」

「なんだとっ!?」


 真っ先にルーレイが驚いた声を出す。


「魔法を使う魔物はいるだろう? そんなに驚く事か?」

「はい。従魔にはマーモットとスライムの2匹だったのですが、そのどちらとも魔法を使った事例は過去に無いかと……で、どちらの魔物が魔法を?」


ルーレイが身を乗り出して聞いてくる。


「2匹ともです」

「なっ……」


 ルーレイが絶句する。


「どれほどの魔法だ?」


 絶句するルーレイを他所に、まだ落ち着いているマルエットが訊ねる。

 領主のリンドルは面白そうに話の行方を見守っている。


「現段階で魔法の規模は小さいです。蝋燭に点った火程度の魔法しか使えません……が、引力と斥力の魔法を使えます」

「……2匹ともか?」

「2匹ともです」


 それを聞いた3人は疲れたように溜息を付く。

面白そうに聞いていたリンドルも流石に引力と斥力に付いては驚いたようだ。


「間違いなくセシルの影響であるな」

「報告はそれか?」

「いえ、まだありまして……その何て言いますか、ダラス様がセシル家族を鍛えていたのですが、その訓練に2匹も横で参加していまして。端的に言うと、強くなりました」

「ん? その2匹がか?」

「はい。その2匹がです。具体的に言うと、2匹とも木刀を持って弱弱しくも振れるようになりました」


「「「なっ……」」」

3人が驚くが、コルトは話を続ける。


「それだけではなく、イルネがセシルに格闘術を教えていたのですが、それも横で2匹が参加しておりまして「ちょっちょっと待てちょっと待て」」


 リンドルが話を遮る。


「いったん落ち着かせてくれ。いやもう話の先は想像が付いているのだが、喉が渇いてきた。外の侍女にお茶を煎れさせてくれ」

「はっ。では伝えてきます」


コルトは部屋を出て外で待機していた侍女にお茶をお願いする。

 3人ともそれぞれが先ほどの話を深く考えこんでいて、静かな時間が流れる。

 そんな中、お茶が用意され侍女が外に出た所で話が再開される。


「続きをよろしいでしょうか?」

「ああ頼む」


「イルネがセシルに格闘術を教え、その横で2匹が見様見真似で参加していました。そして、端的に言うと強くなりました」


 クックッと思わず笑ってしまう3人。

 先ほどの間で心構えが出来た3人は、予想通りの展開に思わず笑ってしまったのだ。


「具体的に言いますと、スライムが関節技をかけられるように」


「……は?」


 3人に共通しているのは身体の大きなリスみたいなマーモットが体当たりをしたり可愛らしいパンチを放ったりを想定していたのだ。

スライムの関節技は斜め上だった。先ほどの剣を振ったと言うのもギリギリ木刀を持てるレベルだと思っていたのだ。


「さらに細かく報告しますと、ダラス様に技を掛けた際にはスライム自身の体積が足りず出来ませんでした。次に7歳のセシルに技を掛けた所、見事に腕を取りギブアップを捥ぎ取っております。察するに10歳程度の子供くらいまでなら技を掛ける事が可能な範囲かと」


マルエットが反応する。


「待て待て待て。いくら関節を取っても圧倒的に力の差があれば外すことが可能であろう? スライムは軟体だぞ?」


 残りの2人もウンウンと首肯する。


「はい。なんと表現するのがよろしいのか分かりませんが、人間が力を入れたら筋肉が硬くなるようにスライムも力を入れたらグッと筋肉の様に固まるようで・・・」

「はぁ……冗談のような話だな。まさかパンチも強いとか?」

「いえ、試していませんがパンチは流石に弱いかと。動きを見てもそんなに素早い動きは出来ていませんし、体重も軽いですからね。これからいくら強くなってもパンチ力には限界があるかと」

「まあそうだな。常識で考えればそうだな。常識が何か分からなくなっている自分がいるが。マーモットの格闘能力はどうなのだ?」

「力が強くなってきている事は間違いないようですが、今の所特筆すべきことは無さそうです」

「やっとまともな情報だったな。報告は以上か?」


「異常事態に付いての報告はここまでです。尽きましては情報漏洩対策として2匹が魔法を使える事、格闘術を使える事の秘匿の為、セシルの裏庭に木の囲いを作らせています。2匹はこちらの言っている事が理解出来ており、外で使う事は無いでしょう「ちょちょちょっと待てぃ!!」」


 マルエットが待ったをかけた。

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