はじまり《挿絵あり》
「あぁぁ!!? もうっ!! 何で人の家に勝手に入ってくるんだよっ!! いい加減にしろぉよおおおお」
ここは剣と魔法の世界。
その世界に住む人々が未知、そして宝を求めて訪れる場所があった。
そこは「ダンジョン」と呼ばれた。
だがそこは1人の男の子の家だったのだ。
元々、この世界にダンジョンと呼ばれるような場所は存在しなかった。
ダンジョンの始まりは、悲しい男の子のすれ違いの物語だった。
親との不幸なすれ違いが起き、帰る場所を失った少年が真実のマイ ホームを探すお話。
『マイ ホーム ダンジョン』
☆
その不幸な少年セシルはトラウス辺境領のさらに辺境に位置するトルカ村で生まれ育った。
トルカ村は開拓村として出来てからまだ8年程度の村だ。
その為、魔物への危険度が高いのだが防備がまだ整っていない。
「セシル! また森に遊びに行っていたの!? 魔物がいるから危険だって言っているでしょ!?」
「ごめんなさい。でもね。お友達が出来たよ!」
「お友達?」
「うん! ほらっこっちにおいで!!」
「ちょっっ!? スライムとマーモットじゃない!? 魔物よ!! すっすぐ離れなさい! お母さんが退治してあげるわ!!」
「ダメだよ! 僕のお友達だよ! ほらっ! 安全でしょ?」
セシルはそう言うと屈んでから、左右それぞれの手でスライムとマーモットを撫で始めた。
スライムは少し青みがかった透明で頭に乗るくらいのサイズ。雑食で農作物も食べる為、害獣とされている。追い込まれると消化液を飛ばしてくるため、誰でも倒せるほど弱いが、厄介な存在である。
マーモットはリス科の魔物で、リスとカピバラの合いの子みたいな見た目で大きさも間くらいだ。
雑食で農作物を荒らすだけでなく、爪が鋭く、稀に家などの壁にも穴を掘ってしまうため、マーモットも害獣扱いされている。
5本指があり器用に何かを掴んだりする事も出来る上に2足立ちも出来る。
撫でられたスライムとマーモットは、セシルに頭を擦りつけるようにくっ付いてくる。
それを見た母カーナがまた騒ぐのだった。
「魔物が懐いているぅ!? あなたっ!! あなたーーーーー!! セシルが! セシルが天才よーーーーー!!!!」
裏庭で薪割りの作業をしていたセシルの父ロディがドタドタドタと音を立てて走ってきた。
「どうしたんだっ!?」
「あなたっ! セシルに魔物が懐いているの! この子……天才だわ! 従魔の才能があるに違いないわ!」
「おいおいおいおい!? 天才じゃないか!? さすが我々の子だな!」
両親が2人の世界に入って抱き合っている。
ハッと我に返ったロディが、今度はセシルの肩を掴みブルンブルン揺するので、頭がガックンガックンなってしまう。
「もしかしたら他の魔法の才能も凄いんじゃないか!? これは来年が楽しみだ! 今日は豪勢にウサギの肉を食べるぞ!! お祝いだ!」
「でもあなた、セシルに魔法の才能があると、後2年も一緒にいる事が出来ないわ」
「クッ……しかしセシルの為だ、我々が堪えなくてどうする!」
そう言うとまた二人で抱き合って、おいおいと泣き始めたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
完結まで書きますので、何卒お付き合いよろしくお願いします。
評価は後々でも変更出来るのでお気軽にお待ちしております。
☆☆☆☆☆評価欄で
★★★★★⇐このような感じで評価出来るであります。
☆1つでも評価してもらえることが嬉しい派です。
もちろん多い方が嬉しいです♪