Vol.8 N
《第2章 四天王育成プロジェクト 》
《第1話 N 》
2053年、3月某日。SR王国サッセンス=ラミゴス=フィルミーナ女王がセボルト共和国に宣戦布告してから4日ほど経過した。つまり、セボルトとの戦争まであと96日。長いようで流された時間がもう残された時間も、もう少ない。
そんな中、SR王国の従属下という立場にあるタバレスでは、「なぜ戦争をするのか」などと、SRの女王に対して反発の声が高まっていた。それに伴い、「四天王はいつ出現するのか」という意見を出ていた。というのも、まだ公には四天王が降臨したことが知られていないのだ。
タバレス宇宙研究所のアース・パークでは四天王の1人、南原顕次の育成が行われていた。彼の教官の名前はロジャースだ。
「突然だが、君はなぜ死んだんだい?」
ロジャースは言った。
「えっ、えっ、えっと、うーん。よく覚えてないんですよ。僕の記憶が正しければ父が薬物かなんかを吸っていて、僕はそれはいけない、って思って警察に‥」
「その後、刺されたんだな。で、学校生活はどうだったんだ?運動とかにもついてもな」
「勉強‥。理系に関しては周りに比べてできる方だと思います。でも、文系科目はちょっと…。自分では言いたくないですけどそれで留年してるわけですから」
「分かった。決めた。ここにある君の詳細の記録とさっき君が話してくれたことを踏まえてこうしよう」
「どういうことですか、ロジャース教官」
「君の呼び名はこれからNだ。南原のNもそうだが、君という人間自体が面白くない。私が何を言いたいか分かるか?Nが暗示する本当の意味は"ナンセンス"だ」
Nはポカンとしているが、ロジャースは続けた。
「N、いいから落ち着け。君を見れば運動も出来ないこともお見通しだ。きっと剣を振り回したりかわしたりするのも絶対に無理だ。そして君は不器用だから、ピストルも使えないんだろう。今の状態の君が使ったら君自身が死ぬ」
温厚なロジャースから厳しい言葉を浴びたことにNは四天王の壁の高さを思い知らされた。
「そんな君にはこれをプレゼントしよう」
それは鎧と盾だった。
「ロジャースさん。これ普通の鎧と盾ですよね」
「そうだ。君の言う通り、これは普通の鎧と盾だ。だが、君自身が正義、信念、忠誠心を高めていけば、その鎧と盾はきっと貫通することはないだろう。もし、貫通したら君の実力不足だと言うことだ。だから、N。とにかくこの3つを極めるんだ。」
Nの目付きが変わった。しかし、Nの育成プロジェクトは始まったばかりだ。