Vol.5 期待の星
【第2幕 底辺からの脱出】
《第1章 四天王の召喚》
《第1話 期待の星》
2053年、タバレス島。そこにある旧王国広場の片隅にある、とある病院の444号室の4台のベッドはいつも通り閑散としていた。その病院の名は「旧王国広場病院」。その病院の横にあるジェイコブ・プレイスと呼ばれる場所には、地球とやら星から"タバレスを大きく変える四天王"が召喚されるらしい。この、2053年に。タバレス市民はそれがどういう人たちなのか、そしていつどこに降臨するのかという期待が日に日に高まっていた。
もともと、タバレス王国は幸せで、平和な国だった。けれども、紀元前10321年、海を挟んである隣国・SR王国のサッセンス・ラミゴス・ケンタス王によって、征服されてしまった。タバレス王国の王族、ブライデン一族もその時に滅ぼされた。ただ、ブライデン家の親族、ジェンキンス家は滅びることなく身を隠して生き続けていた。そして、ジェンキンス家は年々勢力を盛り返していき、1万年たった現在ではタバレス王朝全盛期くらいの勢いがあるといっても過言ではない。しかし残念なことに、旧王国はSR王国の従属国だという立場には未だ変わりない。
SR王国、それは長い長い歴史を持つビッグな国。紀元前15579年にSR王国の開祖サッセンス・ラミゴスがヌクレオ島を統一してからずっと続いている。サッセンス・ラミゴスをとってSRというわけなのだ。この1万7千年の間に、SR王国はタバレスを征服したり色々あった訳なのだが、2053年の今、一番危機に陥っている。何があったのかというと、SR王国に新しい王サッセンス・ラミゴス・フィルミーナが就任したことだ。SR王朝史上初めての女王だ。普通だったら、女王だったら安泰と考えるのが筋なのだが、このフィルミーナ女王、魔女なのだ。つまり、暴君。彼女は王に即位した瞬間、西大陸の大国・セボルト王国と戦争すると言い出したのだ。セボルト王国は大国ではあるが、確かに廃れてはいる。でも、常識がある人間なら即位直後「戦争したい」と言うだろうか。この情報はすぐに伝わった。もちろん、タバレス市民は反発した。地図関係的にもどう考えたって戦場がタバレスになることは間違いない。なんて自己中女王なのだろうか。
セボルト、SR両国で戦争の準備が始まった。期間は100日。この間にタバレスでの戦いは食い止めなくてはならない。だからこそタバレス市民は求めた。"タバレスを救う四天王"の出現を。
その日は突如訪れた。ジェイコブ・プレイスにとても強い光が差した。周囲の人たちが驚く反面、四天王の出現かと期待した。もちろん、その通りで四天王がここ、タバレスにやって来た。
しかし、四天王は固まっている。彼らにとって全く知らない場所だから当然の反応だろう。でも、彼らは死んだはすだ。さらに、四天王はお互いのことはひとつも知らない。20代の男は言った。
「ここはどこですか…?あと、あなたたちは誰ですか?」
そう言ったとき、髭を生やした40代後半の男が、
「案内するのでついてきてください」
と言った。
「おい調子に乗んなよ。何をする気だ。それを言え」
さっきまで平常心を保っていた20代の男はついにカッとなってしまった。
「お前、黙れ。黙らないならこうだ。」
ガタイのいい白人の男が銃口を20代の男に向けた。なぜか20代くらいの女がそれを見て興奮している。
仕方なく4人は屈強な男達についていくことにした。すると病院の中に案内された。444号室だ。部屋の番号は不吉ではあるが、病室だとは思えないくらい広く、輝いている。
「何をするんですか」
とニキビの少年が言ったが、無視された。
「あとでジェンキンス王の弟のアーロン様がいらっしゃいますので、そのままお待ちください」
と言い残し、40代後半の男は去っていった。