Vol.4 ショット・ア・ガン
《第4話ショット・ア・ガン》
季節は冬。だが、大学生の錦本清花は大学の長い冬休みにバイトで一生懸命ためたお金を使って1週間ほど、ハワイに旅行に行っていた。昨日はハワイで友達へのおみやげを買ったり、美味しいものを食べたりして、楽しい時間を過ごした。
でも今日は最も楽しいことをする。絶対に日本ではできないことである。『アメリカ』だから出来ることだ。そう、それは銃を撃つこと。日本では銃刀法という厄介な法律があるからできないのだが、ハワイでなら出来る。これが彼女にとってのメインイベントだといっても過言ではない。
ホノルルにある世界有数の海水浴場がある都市、ワイキキ。そこに初心者でも銃撃体験ができるスポットがある。その名はワイキキ・ショッティング・レインジ。そこには多くの観光客はもちろんのこと、現地の人もいる。ただあまり女性はいない。「女性もやればいいのに…」と彼女は思った。
受付を済ませた後スタッフの人に言われ、「ショッティング・ルーム」と呼ばれるところに連れられた。防弾チョッキや防音ヘッドホンを装備し、銃について一通りのことを学んだ。その後スタッフから銃を渡された。重いなと思いつつも、彼女は銃の引き金を引いた。銃声が聞こえ、体に衝撃が走る。快感だ。一瞬彼女は心の中で人を撃ったら「どれだけ快感なんだろう…」そう考えてしまった。
射撃は初めてだったがスタッフの人に「アメイジング・ショット」といわれたのでとても嬉しくなった。2時間が経ち、体験の時間が終わった。帰るときに同伴してくれたスタッフに「是非また来てください」と英語で言われた。射撃場を出ると左に「ハワイアン・ガン・ショップ」という店があった。彼女は好奇心でその店に入った。そこには色々な銃が売られている。やっぱりどの銃も高い。庶民が買うもんじゃない、と思った。その店は諦め帰っていると、ある看板を見つけた。「銃レンタルサービス」と書いている。
外国人向けなのか色々な国の言葉で書かれている。見ると外国人が身を守るために良く使われるサービスらしい。肝心の値段は3日間で810ドル。大体9万円だ。しかも防弾チョッキもついている。財布には悪いが彼女は護身用として小さい銃をレンタルすることにした。
その日の夜、彼女は食事をしに外に出た。今日はあいにくホテルの食事がでない日らしい。夜でもリゾート地はやっぱり違う。多くの人がいる。そんな中、銃声と悲鳴が聞こえた。すぐそばにいる男が「フリーズ」(動くな)と言った。彼女は自分の身を守るために恐る恐るレンタルした小銃をバッグから出した。男は彼女に銃口を向けた。彼女も自分の身を守るために男と同じことをした。その時彼女はさっきの考えが頭に浮かんだ。というかこう思った。「今なら人を撃っても大丈夫じゃないのか?これは正当防衛だから大丈夫だよな。人を助けてなおかつ自分の欲望も叶えられるなんて一石二鳥じゃないか」
そして、自分の身を守るためだったはずの小銃の引き金を自ら引いた。見事に男の心臓に命中した。やはり快感だった。その射たれた男の仲間が大丈夫かと言わんばかりに駆け寄ってきた。しかし、彼女はまた引き金を引いた。駆け寄った男も倒れこんだ。周囲の悲鳴のボルテージも上がってきた。快感により彼女は狂ったように笑い始めた。あと弾は1発ある。その弾を近くにいた観光客の子供に撃とうとした。この子を撃ったらどれだけ快感なんだろう。彼女はそう考えながら銃口を向けた。その時、近くの人の通報から警察が駆け寄ってきて銃口を彼女に向けた。彼女はすぐに、目の前の警察官に向けて撃った。命中しなかった。
別の警察官に撃たれ、死んだはずの彼女だったが、実は死んでなかったのだ。