Vol.3 サーデン・デス
《第3話 サーデン・デス》
場所、SR高校。日時、2020年2月某日。顔に印象的なニキビを持つ男子高校生がいた。そんな彼の名前は南原顕次。彼は勉強好きだ。得意科目は数学。誰よりも早く登校し、数学の問題や英単語をひとりで黙々と勉強するのが彼のルーティンであった。
ただ、勉強は好きではあるのだが、苦手科目のテストはあまりよい点数がとれずに、高校1年生を留年する羽目になっていた。
しかも、勉強というものに没頭しすぎて、男女関係なく敬遠されるようになっていた。しかしそんなことさえも彼は知らずにいた。
いつも通り6限までちゃんと授業を受け、みんな「今日も疲れた」だったとか言いながら、彼は一人で帰りの支度をしている。
そんな中、担任の西川が南原に寄ってきた。
「南原君、ちょっといいかな。大事な話があるから、あとで職員室に来てくれ。」
西川はそう言い残して教卓に向かった。その後にすぐに行われた西川の長い話を含めた終礼が終わった。みんなが帰り始めたころ、南原は西川に言われた通り、職員室に向かった。
「1年の南原です。西川先生いらっしゃいますか」
モゴモゴした声で彼は言った。すると西川が出てきた。西川はここで話すのもあれだからと、南原を密室みたいなところに連れていった。そこは南原が入ったことのない部屋だった。
「今から大事な話をする。よく聞いてほしい。来週から君、学校に行けないんだ。だから、明日の土曜日が来れるの最後になる」
「えっ、ちょっとどういうことですか」
「君の両親が学費を払い切れていないんだ。君がスマホを持っていないというのもそういうことなんだ。君が素晴らしい学力を持っていることも私は知っている。できることなら私だって助けてあげたい、でもこれ以外の選択肢はないんだ。」
「でもなんで先生から」
「親御さんに言われたんだ。私から言えと。でも言おうか悩んでた。だから今言った。とにかく、詳しいことは親御さんに聞いてくれ。話は以上だ。すまない、南原君」
話を済ませ、顕次は家に帰る途中、涙を流した。やっぱり悔しい。南原は家に帰った。彼の両親もいた。珍しいことである。
父が出てきた。何かを吸っているように見える。
「ただいま、父さん。今日はお仕事早かっただね。ていうか、それ何?」
「お前、見たな。こ、これは」
「薬物だよね?父さんどうしちゃったんだよ」
そう言いながら南原は近くにあった電話を手にした。南原はとても真面目で犯罪というものを嫌っていた。いくら親だといえども、薬物に手を染めた親が許せず、110番通報しようとした、その時。
「グサッ」
南原は母親に刺し殺された。父親は間一髪だったな、と言った。
また、両親はその場が危険だと感じ、荷物をまとめ逃げ去った。
その後、近所の住民からの通報により駆けつけた警察が来たときには、南原はもう跡形もなく消えていた。