Episode 3 新しい先生
すごい先生が来たようです。
「おはよう。生徒諸君。」
アランが僕に構わなくなって三日が過ぎたころ、新しい先生がこの学校にやってきた。金髪に白い肌、僕たち農民とは全く違う体格の持ち主だ。赤ん坊のように綺麗な手をしている。一目でこの村の人ではないだろうと気づける容姿だ。
「私はユリウス。藍玉の魔法使いです。これから魔法の授業は私が担当しますのでよろしくお願いします。」
そう挨拶し爽やかな笑顔を僕らに向けたあと、教室は一瞬の戸惑いの後、歓喜の渦に包まれた。生徒の皆は口々に話し始める。それは単純な疑問、指導を受けられることに対する歓喜、中には卒倒しそうになっている生徒もいた。
「あのユリウスさんが?」
「この王国でも両手で数えられるほどの強さって聞いたことがある有名人だぞ。なんでこの村に...」
「それだけのこの学校が優秀ってことじゃないか」
ユリウス・アルメア。この国で魔法使いの名前を挙げるなら、かの三聖女の次に候補が上がるような人である。そんな人がなぜこんな村の学校で教師をするのか。
「なぜ私がここに来たのかを説明する前に、お話ししておかないといけないことがあります。」
彼は一呼吸おいて真剣な表情で話し始めた。
「皆さんの中には知っている人がいるかと思いますが、魔女がまた動き出しました。」
クラスの中のほとんどは何を言っているのか分からない様子だった。僕自身も魔女と聞けば、数世紀前の魔女狩りにあった魔女しか思い浮かばない。それも史実通りなら、彼女は火炙りの刑で死んでいるはずだ。そんな中アランは手が震えていた。彼はこのことについて何か知っていたのだろうか。
「王都の一部ではすでに噂になっていましたが、前回の戦争では敵は魔女たった一人でした。」
これにはクラスすべての生徒が驚いていた。そうなるのは当然だろう。この国の魔法戦力は周辺国家と比べても頭一つとびぬけている。紫玉が四人、藍玉が十人以上いる人間の国は他にない。その戦力をもってしてもたった一人の魔法使い相手に兵士の四割が戦死するなんて馬鹿げている。だが、たった一人の魔法使いに王国が負けたとなれば他国から戦争を仕掛けられる可能性があるのも事実であり、今までどこの誰と戦っているか知られていないも納得できる。
「そこで優秀な人材を確保するために私が王の命を受けてこの村にやってきたというわけです。」
なるほど。それなら確かに納得できる。戦死した魔法使いを国中からかき集めているというわけか。優秀な魔法使いはその才能を見極めることができると聞いたことがある。この村にその御眼鏡にかなう者がいるかは分からないが。
ユリウス先生は魔法の適性を見ると言って、クラスの生徒を一人ずつ訓練場に呼び出していた。アランの取り巻きはこのクラスに何人選出される生徒が出るかを話し合っていた。
実際に魔法と言っても様々な種類がある。派手なものはアランが使っている火球など攻撃に使えるものや、人の思考を操るものがあり、珍しいものでは傷や病気を回復するものもあるらしい。だが、多くの魔法は戦闘向きではない。このクラスも半分以上が戦闘向きではない魔法使いなのだ。なので、ほとんどの生徒はユリウス先生に採用されないだろう。まあどちらにせよウィザーである僕には関係はないが。
そうこうしているうちにアランの番になった。きっとアランは今回の徴兵に参加できるだろう。取り巻きたちは帰ってきた生徒にどういう風だったかを聞いていた。一方、僕は何をするわけでもなくただ外を眺めていた。時折爆発音や風を切る音、金属音などが聞こえる。かなり派手にやっているらしいと推察される。
アランが呼ばれてからかなりの時間が経過した。もう魔法の音は聞こえないがなかなか帰ってこない。何か話でもしているのだろうか。実際、アランがこの村で一番の魔法使いであることは間違いないだろう。
アランが帰ってきたあと、僕の番となった。ユリウス先生のもとへ向かっている途中にすれ違ったアランは呼ばれる前よりも生き生きとしていた。やはり、ユリウスほどの魔法使いを前にして緊張したようだ。
そして、僕の番が訪れる。
ユリウス・アルメア
金髪の男。顔立ちはかなり美形。細身の体つき。藍玉の魔法使い。王国内であの三聖女に続いて有名。穏やかな物腰で現在主人公の村の学校で教師をしている。数少ない後天的なマルチウィザード。
三聖女
王国内に存在する紫玉の女性三人組。全員先天的なマルチウィザード。全員がオッドアイであり、チームの目標は魔女を殺すこと。
マルチウィザード
魔法使いは一つの魔法しか使えないという原則から逸脱した魔法使い。生まれてから魔法を使える先天的なものと生まれた後から後天的に魔法を得られるものがある。非常に少ないため緑玉以上にはほぼ確実にランクづけされる。
感想ありがとうございます!すごいモチベーション上がりますね!( ´∀` )