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バッドエンドは異世界で  作者: なみだ
Chapter 1 バッドエンドへのカウントダウン
3/6

Episode 2 始まり

少しずつ物語が進んでいきます。

 残念ながら本日は学校がある。こんな田舎の村にも一応学校があり、体術、算術、農法、魔法、書法を学ばなければならない。まあ、学校といっても大きな部屋が4つあるだけの少し大きな家のようなものだ。将来農民や兵士になるようなこの村にそこまで学校に費用はかけられないのだろう。

当然と言えば当然だが、登校中僕のことをひそひそと笑っている生徒はいるけども、もちろん一緒に学校に行く友人はいない。そんなことを考えていると背後から走ってくる音がした。


「よう!」


肩に衝撃と痛みを感じるとおなじみのアランがニコニコしながら背中をたたいてきた。


「今日は体術の授業があるからよろしくな!」


周囲の生徒に聞こえるようにアランが話しかける。実質の処刑宣告だ。魔法を人に対して行使するのに比べ、体術であれば負傷をさせてもそこまで大きな問題にはならない。つまり、体術の時間は文字通りサンドバッグになることが確定したのだ。

 周りの生徒も避けるような目で僕たちを見る。アランはこの村のガキ大将(といっても15歳は既にガキというほど幼くはないが)のようなものであり、体格は大きく性格も明るい。それが僕のようなパッとしない人間と絡んでいるのだ。そんな目をしても仕方ない。

 昔は僕がアランを引き連れて遊んでいたような気がするが、それももう遠い昔の話であまりよく覚えていない。今は見ての通り、アランに引き回されている。学校に行かなければいいと考えたが、それを決行すると親に懲罰が下される。それは何としても避けなければならない。叱責されるならまだいい。もし何も罰が与えられなければあの家でこの先暮らしていける自信がない。あんな両親でも少しは僕に愛情を持っていると信じたいのだ。

 そうこうしているうちに学校についてしまった。学校の広場では数人の子供たちが木刀を使って武術の練習をしている。

 学校生活だが、幸いなことに僕に絡んでくるのはアランくらいしかいないので、彼さえうまく対処すればそこまでひどい扱いは受けない。教師も僕をいないものと扱ってくれる。


 さて、算術の授業が終わり体術の授業になった。逃亡を図るわけでもなく、まな板の上の鯉のごとくぼーっとしていたら、休憩時間にアランに捕まり、剣術の相手をさせられてしまった。

 一応は手加減をしてくれているようだが、かなり激しく当たってくる。木刀を使った剣術の授業だったがつばぜり合いで僕は何度も吹き飛ばされ、そのたびに周囲の生徒が驚いたようにこちらを見てくる。何度飛ばされたか数えるのをあきらめたころ授業の終了の合図があった。


「雑魚が。」


 そんな言葉を残してアランは去っていった。かなりイラついていたように見えたが、弱い者いじめをしておいて弱いことに腹を立てるとはどういうことなのだろう。教室に戻る途中、ハンス校長とリリシア先生の話す声が聞こえた。


「...たらしい。しかもこちらへ向かっているそうだぞ」


「戦争の時期も近いですかね。うちからは何人招集されるのですか」


「分からないな。ただ」


 こちらに気づいたのか教師達は話をやめてしまい、それ以上は聞こえなかったが、非常に僕にとっては嬉しい話のようだ。また戦争をするとなればアランは多分この村を去ることになるだろう。彼がいなければ僕に敵意を持つ人はいなくなるのだ。


教室に戻ると数人がその話は既に広まっていたようで、アランの周りには人だかりができていた。


「アランは戦争に行くのか?」

「アランの魔法なら即戦力間違いなしだな」

「帰ったら話聞かせてもらうからな」


アランはみんなの話を聞きながら適当に相槌を打っている。その顔はどちらかといえば不安な顔をしているようだ。いつも自信満々な態度をしているのにやはり実戦は緊張するようだ。


「もしかしたら紫玉にまでいくかもな。」


 取り巻きの一人がそう話しかけた瞬間、アランの顔が強張った。そして目線だけをこちらに向けまたすぐに会話に戻った。なぜかその顔は恐怖に満ちていた。

 この国では武人や魔法使いに能力や戦果に応じてランクがつけられる。下から紅玉、黄玉、緑玉、藍玉、紫玉とランクが査定される。もちろんこれには軍人であれば階級の査定にも影響する。これらは昔の大戦、龍と人との戦争の時に恐れられていた龍の色にちなんでいるらしい。また最上位である紫玉まで到達する人は国に一人か二人しかいないだろう。まさに国宝と呼ばれるような人間しかいない。アランにその才能があるかは分からないが、仮にアランが紫玉まで達したときにこのいじめがどうなるかを考えれば僕の存在を自身の汚点として考えるに違いない。


(これでこのいじめがなくなればいいのだが)


結局その後算術の授業を終え、僕が帰宅するまでアランが絡んでくることはなかった。

学校

主人公の村には学校があるが、武術を鍛えることが中心の授業となっている。これは王国が現在戦争状態になっているからであり、戦争の度に成績上位者が徴兵される。実質兵士を鍛えるための学校である。


ハンス校長 

年齢は四十過ぎだが元軍人で体の衰えは感じさせない。魔法の制御ができないため、魔法を使うところを見たものは数少ない。

リリシア先生 

黒髪ロングのお姉さん。魔法学者。精神安定の魔法を使える。スタイルが良い。


ランク

魔法や武術の強さを考える上での基準。下から紅玉、黄玉、緑玉、藍玉、紫玉とつけられる。龍人大戦と呼ばれる戦いにおいて、人類側に最恐とみなされた龍の強さを序列に反映させている。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 設定がかなり凝っていていいと思います。あとがきにまとめて説明があるのも、親切でありがたいです。弱い状態から始まる話には何パターンか展開があるので、先を読ませすぎないのもとてもいいのではない…
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