表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

日々こまごま、オムニバス

日々こまごま、オムニバス。Case.3 オチあり、熨斗無し、夫婦譚

作者: 大道寺 轟天(だいどうじ ごうてん)

庭先の風が頬を撫で、花弁をひとひら連れてきた。足下の砂利に、百日紅。手に取ろうと屈んだ途端、薄紅の花弁が紅葉に染まる。ポタ。ポタ。薄紅の斑点に、深紅の水玉。我が家には、もう秋が来たのか。私がそう呟くと、駆け寄った君が教えてくれたね。「お父さん、鼻血が出てますよ。」




「共に地獄へ参りましょう。」

君からそう告げられた時、断崖の上で手を繋ぎ、海へと落ちる私が見えた。明くる日、君から渡されたのは、大分行きの二枚切符。


お正月の叔父さん家。お年玉だと渡された、銀杏の描かれたポチ袋。袋の口を広げて見ると、そこにはお金ではなくて、お宝探しのヒントが書かれた、名刺ほどの紙が一枚。

「3.9」。

ウチの中を探してごらんと、叔父さんニヤリと微笑んだ。

どこだ、どこだ。冷蔵庫の中、ない。お仏壇、ない。叔父さんの書斎、ない。縁側の下、ない…。必死に探す僕を見て、叔母さんクスクス笑い出す。

「まー君、まー君。」

叔母さんが指差したのは、炬燵の上に置かれたCD。

ケースの蓋を開けてみると、2つに折られた諭吉が3枚!

これには僕も驚いて、やった、やったと大はしゃぎ。叔父さん、一つ聞いて良い?僕にくれたヒントの数字、「3.9」の意味は何?

僕はそう聞いた後、CDケースの蓋を見た。すると、そこには…。

「桂枝雀(しじゃく)、傑作選」。



繁華街の帰り道。甥が跨がるバイクにニケツ。街の灯りが遠ざかり、草木とカレーの匂いが漂ってきた。庭の百日紅まで、あと少し。今日は妻と出会ってから、25年目の記念日さ。両手に下げた紙袋。この後の妻の喜びようは、今度、おいおい教えます。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ