The World In The Separated World
この世には、常に数多の種族が存在している。だが、‘人’だけは一種族のみしか存在していなかった。
しかし!
ある時、世界は地をも揺るがす雷鳴を聞いた。多くの赤子のの泣き声を聞いた。何日間もの月明かりのみの暗闇に閉じ込められ、気づくと月は二つになった。
偽者の月はどんどん明るくなっていき、夜と昼の隔てを消し、その後、偽者の月は、促進力を失ったかのように消えてなくなり平穏が戻った、かと思われた。
平穏を取り戻したと勘違いした人類は、外を改め見回し驚いた。セカイには知らない土地が突如現れ、同じ言語を用いる違う種族の人間が現れた。
新しく現れた種族をムーンと呼び、昔から存在する人類をサンと呼んだ。
ムーンが現れ、五百年の月日が流れた。彼らが現れた瞬間から、お互いの生存をかけ殺し合いをした。その争いの中で、両者とも、お互いをより効率よく殲滅するための戦法や道具が発明され、それぞれの能力に特化した民族が出来た。また、過去の科学技術は淘汰された。全ては無意味であったから。
サンは気が付いた。ムーンに科学技術などは到底及ばない。及ぶのは、自分達で彼らを直接傷つけることだけだと。
ムーンは、核によって汚染された土地でも平気で生きていけた。それまで、サンは必死に得た放射線の影響を少なくする治療をしてきた。しかし、ムーンにそんなものは必要はなかった。また、ムーンは対応力もサンとは比べ物にならぬほど高い能力で、極寒でも熱帯でも顔一つ変えず生きていた。
ムーンとサンの違いは能力のみならず、身体でも表れていた。ムーンは、色素が薄く、少し青ざめている病的な顔に、白に近い色をした髪の毛。また、顔には似合わぬ屈強な体を持っていて、瞳孔はサンよりも大分大きい。
だけれども、一番大きいサンとムーンの身体的差は、生殖能力にあるだろう。ムーンは、男女問わず、子供を生むことが出来る。つまり、決して男女の番でなくともいいということだ。それゆえか、ムーンは瞬く間に人口を増やしていった。
しかし、ムーンも同じ人間。いくら屈強であろうとも、直接的攻撃には弱かった。
あるムーンの民族に一人の少年が生まれた。
彼が生まれたその日、太陽は一日昇らず、また、月も昇らなかった。しかし、天から続く眩い光が一直線に彼めがけて輝いた。
彼の名は、ユエナリク・エーステイル。