異世界転移したけど私に18禁を求められても困ります。
神話の話をしよう。
広大な大地と広大な海で満たされたこの世界には、数多の獣が住んでいた。
彼らは弱肉強食の不文律でその数を減らし、増やし、地に満ちていた。
しかしそこに神の使いである天使が舞い降りる。
原初の ヒト である。
天使は言葉も知らぬ獣たちに言葉を教え、和を説き、自らを差し出して子を成した。
天使の腹からは様々な獣人が産まれた。聖母である天使はそれら全てを愛し、育んでいった。
天使は言った、「私はケモナーである」と。
故に全ての獣人は天使の子であり、天使の子孫である。
そしてケモナーとは神の使いを表す言葉であり、尊称でもあるのだ。
聖典1章より抜粋。
「……は?」
私は頭を抱えた。
それ聖母じゃなくて性母じゃないかとかケモナーは異常性癖だとか頭がパンパンだった。
目の前の頭に耳を生やした先生は聖典を読み進めていくが全然頭に入らない。
というかどう考えてもR18な内容でその最初に降りてきた人の性癖を赤裸々にした日記帳のごとき冒涜的な本を燃やしてしまいたい衝動にもかられたていた。
この世界には獣人が住んでいる。
獣人が圧倒的に多いがエルフも住んでるしゴブリンやオーガなんてのも住んでる。
そしてそれら全ても最初の人の子どもだと言う。だから最初は怖いかもしれないけど兄弟姉妹だから怖くないよだって。
一時期そういった形の違いすぎる人達を迫害した歴史なんかもあるけど愚かなことであるとか言ってる。
私は頭が痛くなってきていた。
全ての人にはそれぞれの種類の名残が必ずあるらしい。
獣人なら獣耳尻尾とか、エルフなら尖った耳とか。
だからそういうのがない、生まれもっての先祖がえりである天使の特徴をもつヒトは神子として扱われる……つまり私である。
この流れで私はもう嫌な予感しかしなかった。背中に冷たい汗が流れて胃がキリキリと痛みだし、逃げたしたくて仕方がなかった。
「神子様……今やこの世界は原初に帰ろうとしています。お慈悲を頂けますようお願い致します。」
つまり致せということに他ならなかった。
その夜私は逃げ出した。