悪意の底
くそ暑い日々+
おもちゃ箱をぶちまけたように
雑然とした事務所+
もう汚れのおちなくなった作業着+
男だけの職場=
【とびきりのストレス】!!
『なぁ』
細身の男、顔は逆三角形
鼻はいちごばなの若干赤みがかり
上唇の直上より両サイドに
細くひげをのばしている
(仮にボヤッ○ーとする)は
油よごれに淀むバケツの水をながめながら
傍らのおとこにひとり事に近い低いトーンで
話しかけた
『なんや?』
話しかけられたほうの
ただ怠惰によって生みだされた膨張した身体に
おにぎりのような輪郭をもつ頭部
口まわりに広がる青みがかった
ヒゲ剃り跡が目立つ男
(仮にト○ズラーとする)は
窓ガラスにスポンジローラーで
洗剤を含ませた水をぬりつけ
ころがしながら目線もうつさず問い返す
『わしら毎日毎日こうやって
ビルの窓みがきつづけてるが
こんな生活ていつ終わりをつげると思うかね?』
『いつってそら何かおっきなミスして
クビになった時とちがうんか?』
『そんな話しとらんがね!!』
『おい』
そのふたりの背すじが一瞬でこおりつくような
ただ低く野太くそして冷たい声がフロアに響いた
その声の主のゆうに190cmはあろうかとゆうその巨躯は
針金で編み込まれたかのような見事な筋肉と筋肉の
集合体として成り立っておりただそこにいるだけで
同じ空間にいるもの全てを戦慄させずにはおれない
空気をまとっていた
仮にオーガとする
新人バイトである
『びっくりするだがね!何かね急に?』
『あ、すまない先輩たち
その今の話にちょっとまざりたかっただけなのだが
おどろかせてしまったようだな』
オーガは持ち前の握力でぬれ雑巾を
5秒でしぼりきりながらつづけた
『話の流れをきくに人生一撃逆転をねらいたいみたいなことかと思ってね。もしそうなら』
ここで軽く先輩ふたりの顔をゆっくりと見渡し
『ひとついいプランがあるのだが』
窓ガラスにうつるオーガの背中におにっぽい何かが
うつっていた




