表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編

滑舌悪いオペレーター奮闘記 完結編

作者: oga

銀行のエントランスに取られた人質の数およそ20人、一般の客も含まれている様子だった。

強盗の数は5人、うち3人が人質にサブマシンガンを突きつけ、出入り口に1人ずつ、同じくサブマシンガンを持った強盗が待機している状況。


建物の構造から、侵入できるルートは3つ。

正面入り口、裏口、そして、隣の建物伝いに、2階から侵入、の3つだ。


作戦はおおざっぱに3つある。

1、突撃

これは文字通り、正面から一気に警察を投入して、制圧する方法だ。

そのためにまず、入り口と出口の強盗を始末しなければならない。

見通しのいい正面からでは、敵の恰好の餌食になるため、大体裏口から攻めていくことになるが、敵が無線で連絡を取っていた場合、突入がバレれば中の人質はただでは済まない。

そのため成功率は低めだ。

2、狙撃

突入せず、中の強盗を一人ずつ葬っていく作戦だ。

これは、突入と同時に行われる場合が多い。

今回のようなケースなら、まず人質に銃を突き付けてる強盗を先に始末し、突入により、入り口と出口の強盗を後から始末していく。

3、交渉

これが一番の安全策で、基本はまずこの交渉から進めていく。


オペの仕事は、人質の数、建物の構造、敵の配置、持っている武器、相手が無線でやり取りしているかの有無、を現場の警察にデータ送信し、突入時の敵の動きの補足が主となる。


「オペレーター、聞こえるか?」

隊長のレイジが連絡してくる。

「データの送信を頼む」

「了解しました」

直ちに、建物をスキャンし、そこから得られた必要なデータを送信した。

「オーケーだ、突入時はよろしく頼む」

「了解」

突入だけはやめてよね、今回はシュンがいるから、私のオペでやられるようなことになったら、立ち直れないわよ…


ネゴシエーターのゴウが交渉に当たっていた。

しかし、かなり狼狽していた。

「こちらはどんな要求でものむ、お互い、穏便に済ませるのが正しい選択じゃないか?」

「今、建物内に爆弾を設置した。もしそちらが突入すれば、それを起動させる。そうしたら人質は皆死ぬ。

加えて、今から10分置きに人質を一人ずつ始末していく。それを止める方法は、そちらの隊員の死体を一人ずつ差し出すことだ。それで10分は人質を殺すのをやめてやる」

「君たちの要求を教えてくれ、隊員の命など、本来の目的とは違うはずだ」

しかし、その会話は途切れてしまった。


「爆弾はプラフですね」

「了解だ、突入の準備に入る」

さっきのスキャニングで、爆弾の存在は確認されなかった。

突入を防ぐためのプラフだわ。

しかし、相手の狙いが分からないわね。

金が目当てなら、そういう要求を出すはず。

隊員の命なんて、相手にとってどんなメリットがあるのかしら?


別チームから連絡が入った。

「犯人の身元判明、全員殉職した警察官の身内です」

「何っ!」

署内に動揺が走った。


更にネゴシエーターのもとに、新たな連絡が入った。

「オペレーターに伝えろ、俺たちはお前の殺した警察官の身内のものだ、大事な人間を失った苦痛を味合わせてやる、お前の同僚を一人ずつ殺し、同じ痛みを味合わせてやる、まずは、お前らをその気にさせる」

ドンという銃声、そして悲鳴があがる。

「やめてくれっ!」

「次の10分を楽しみにしている」

そして通話は途切れた。


「……どうやら、オペレーターのお前に恨みがあるらしい」

「そんな……」

今まで私のミスで死んでいった警官の身内が犯人、そして、私を苦しめるのが目的なんて……

「安心しろ、お前を差し出すような選択肢は存在しない、突入のカウントダウンに入る」

ドクン……

滑舌の悪さがこんな波紋を呼ぶなんて……

そして、この突入で、シュンは死ぬかもしれない。

相手はやりあう気だ。

ああ、なんでこんなことに……


「突入開始3分前!」

「データ送信します!」

相手の配置は変わらず、もう人質が一人死んでしまった以上、強行策を取らざるを得ない。

狙撃の範囲内に相手も現れない。

一番成功率の低い方法を取らざるを得ない。

「ジュリア、聞こえるか?俺だ」

この声はシュン

「聞こえるわ」

「君のオペ次第だ、それで人質が助かるかどうかが決まる」

こんな時にプレッシャーかけないでよ

「俺の命は二の次でいい、とにかく、人質優先のオペを頼むぞ」

やめて、やめてよ……

「いくぞっ!」


隊員が突入した。

「入り口付近に敵がいます、気を付けて」

何とか言えた。

でももう口が言うことを聞かない。

「人質をとらえてる犯人3人に動きあり、す、速やか、速やかに犯人さ……犯人確保に……」

もうだめ!!

「ジュリア!」

頭の中が真っ白になった。

なんでこんなことに……

「問題ね、聞き取れらし」

え?今なんて??

「津軽弁の勉強したんだ 問題きゃえさ」

まさか、私のために津軽弁を!?

それならもう気にすることはないわ!

「そのまま突き当りば、右さいってけろ!」

「了解!」


終わり




まじめか

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 津軽弁の勉強したって……。や、優しい……(笑) [一言] 確か、日本軍は、通信手にあえて、ばりばりの薩摩弁(うろ覚えですが)の方を起用して、敵国の傍受に対応したと聞いたような……。 ジュリ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ