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純情少年大ピンチ!

「比奈さんっ!?」

 

 あたしを見た小宮の声は完全にひっくり返ってた。

 それもそのはず。あたしはセクシーなレースのブラとショーツというあられもない姿なのだ。

 その上から着てるのはスケスケのキャミソール。全部ピンク色という甘々さ。

 はっきり言ってこれを買った時はもんのすごく恥ずかしかった。店員さんに冷ややかな目で見られてる気がして。

 

 小宮はというと、これまたトランクス一枚というあられもない恰好。

 体からホカホカと湯気を立て、頭にはバスタオルを被って、びっくりまなこであたしを見てる。

 もうパンツ穿いちゃったの? 早いよ小宮。

 心の中で舌打ちしつつ、あたしは後ろ手にドアを閉め、ガチャリと鍵をかけた。

「なんでいきなり入って来るの!? その恰好はなに!?」

 咄嗟にバスタオルで下半身を隠そうとする小宮にじりじりと近付いていく。

 にっこり笑顔を浮かべながらじりじりと。

 

「もっちろん、桃色課外授業だよ〜。今日こそ脱・チェリーしようね、小宮♪」

 バスルームに逃げ込む暇なんか与えない!

 言って、後ずさる小宮に素早く飛び掛った。

  

「うわっ!!」

  

 予想通り、身を翻して逃げようとする小宮。でもここは狭い脱衣場。あっとゆう間にあたしに飛びつかれて足を滑らせた。

 慌ててシンクを掴み、床に倒れるのを防ぐ。その胸に、これ幸いとしがみつくあたし。

 この際、アブナイ女になりきっちゃうもんね!

 

 風呂上りの小宮の体は、仄かに上気してすんごいセクシーだった。微かに石鹸の香りもする。

 部活で少し筋肉もついたような気がする。胸板も厚くなったみたい。腕も足も、ちょっとだけ固くなったかも。

  

「だっ、ダメだよっ! そんな恰好でひっつかないで比奈さんっ!」

「だってぇ〜。小宮ったら奥手すぎるんだもん。やっぱあたしから積極的に行かないと〜」

 言いながら薄っすら汗ばむ胸板に頬擦りをする。チュッと音を立ててキスもしてみた。

「ひっ!」

 ビクンッとすくみ上がった小宮はシンクから手を離し、床に尻餅をついた。そして後ろ手にずりずり逃げようとする。

 以前はあたしが抱きついたら完全に固まっちゃってたのに、随分動けるようになったもんだよね。

 あたしは一旦しがみついてた腕を離し、四つんばいになって小宮を追いかけた。

 あたしの体が離れるとスピードアップし、必死に逃げようとする小宮。ムリムリ。ここは狭いんだってば。

 ほどなく小宮の背中は壁に当たって止まる。もう逃げ場はない。

 

「あたしは小宮との約束を守ってるだけだよ? せっかくここまでスキンシップできるようになったんだから、ちゃんとエッチしようよ〜」

 小宮の太股に手をかけ、ゆっくりにじり寄っていく。

 布地の少ないブラに収まりきらず、タプンといいカンジに揺れるあたしの胸。

「小宮……あたしって、そんなに魅力ない?」

「そっ、そんなことはっ。むしろその逆だから困るっていうか」

 あたしを直視すまいと、顔を背ける小宮の頬に手を添える。既に真っ赤なそれは今にも火を噴きだしそう。

 可愛い表情にちょっとだけきゅんとなるけど、それより言葉が気になった。

「困るって、なんで!?」

 胸にツンッとしたものが走ってへこみそうになる。でもここで引き下がっては女がすたる!

 

「初体験したいって言ったじゃん! 男なら一度言ったコトは突き通してよ!」

 

 叫んだ後、無理矢理こちらを向かせて、小宮の唇に吸い付いた。もう何も喋らせちゃダメだって、女のカンが訴えてた。

 

「そっ、んむっ! ん――っ」

 

 今日はばっちりシラフ。体の感覚がちゃんとある。

 唇に感じる柔らかい小宮の感触に背筋が痺れた。これが小宮の唇――

 

「……んっ。やっ。逃げちゃやだ……」

 

 離れようとする頭を引き寄せ、何度も唇を重ねる。ぴったりと挟み込むように。

 数回重ねた後、舌を差し込んでのディープキス。小宮にとっては数段飛びのステップアップ。

 

「あふっ……。比奈さ……んっ、ん」

 

 大丈夫。小宮は耐えてる。

 歯をなぞり、舌に舌を絡めると長い睫毛がピクッと震えた。

 強張ってた体から力が抜けていき、されるがままになる小宮。どんどん体が火照っていってるのが分かる。

 完全に抵抗がなくなったのを確認してから、体を支えようと壁に当てられた小宮の手に、あたしの手をそっと重ねた。

 

「この下着……今日のために買ったんだよ? 小宮のために。だからちゃんと見て……」

 上目遣いに言いながら、ぎゅっと握った細い手をあたしの胸元に引き寄せる。

 見つめた瞳は何か言いたそうにしてるけど、あたしから逸らされることはなかった。 

 

 と。

 

 

「……うん……。綺麗だよ、比奈さん……」

 

 

 え? ホントに? ドキンッと心臓が跳ね上がる。

 

 そ、そんなコト言ってくれるなんて。もっと嫌がるかと思ってた。

 

 無理矢理胸に当てさせた手も、意外なことに、じっと大人しくあたしの感触を感じてる。

 

 とうとう観念してくれたのかな、小宮?

 

 あたしは何故か震え出すもう片方の空いてる手を動かした。

 無防備な下腹部にそっと添えると、ビクッと再び強張る小宮。

 

「比奈さんっ、そんなとこ……っ!」

 

 だって、基本だもん。あたしだって恥ずかしいけどやんなきゃしょうがない。

 動かしやすいよう、少し隙間を空けて、手を下に滑らせる。

 すぐに到達したそこは、一枚の布を隔てただけの熱い小宮自身。

 思わぬ硬さにビックリした。

 

「あ、あれ? 結構……キテる? あ。あはは。やっぱオトコノコだね♪」

 

 おどけた風に言いながらも顔が火照ってくのが分かる。

 照れ隠しの笑顔もビミョーに引きつって恥ずかしいったら。まさかこんなになってるなんて!

 

 これなら十分エッチできるよ小宮! 

 

 相乗効果で、どんどん体は熱くなる。だけどそんな状態なのに小宮はあたしの手首を掴み、

 

「ダメだよ。これ以上はもう……」

 

 なんて止めようとするのだ!

 

 この期に及んでまだそんなコト言うか、この甲斐性なし!

 

 構わず布地の上からソレを握って上下にこすると、

 

「あっ! やっ、やめっ!」

 

 体をくの字に曲げて腰を引こうとする小宮。でも背後は壁で逃げれない。抗議の声はあたしの手が動くにつれて甘い声に変わっていった。

 

「んっ、くっ……、ダメっ、比奈……さんっ……ぅあっ!」

 

 ビクビクとせつなそうに痙攣する細い体。

 色っぽすぎるよ小宮。あたし、女の立場なくない?

 

「うっ……く、あっ……、あっ、ダメっ、だって」

 

 あたしまで疼いてきちゃうよ。追い詰められてく声に頭が痺れる。

 一回このままイカせちゃおっかな――

 と思ったけど小宮の手に残念ながら引き剥がされてしまった。

 だけど――

 

「……はっ、はっ、ストップ。も、止まらなく……なる、から」

 

 荒く息をつきながらのセリフは、あたしの待ち望んでいたものだった。

 

 止まらなくなるって、欲情してきたってこと?

 

 ボッと顔が熱くなる。

 

「と、止まらなくても、いいんだよ?」

 

 もっとソノ気にさせなきゃ。あと一押し!

 

 チラチラと小宮の顔を見上げつつ、言葉を探しながら誘ってみた。

 

「だ、だってあたしも、小宮に……だ……抱いて、欲しい……し……」

 

 うひゃぁ〜〜っ。ダ、ダメダメだっ。

 小宮に言うのってなんでだか恥ずかしい。詰まりまくり!

 もっとうまいセリフがあっただろうに、こんなのしか出てこないし。

 まともな顔でなんてとても言えないっ。

 

「比奈さん……」

 

 一度ぎゅっと瞑った目を開いて恐る恐る顔を上げてみた。

 やっぱり小宮の手は動かない。

 

「……ダメ、かな?」

 

 色っぽさが足りなかったかな、やっぱ。

 不安の入り混じった声で確認しつつ、小宮の顔をチラッと窺う。

 すると。

  

 次の瞬間、ごくっと小宮の喉が動いた。

 

 

「僕、もう……。ごめん……抑えられない」

 

 

 え?

 

 返事を返す間もなく体が動いた。

 

 なに? 何が起こってんの?

 

 突然熱いものに肩を覆われ、景色が急速に流れていった。

 後ろ向きに倒れていってる、あたし。

 視界に映るのは白い天井と細い肩、首筋をかすめるのは熱い吐息――

 

 

 これってまさか。

 

 小宮があたしを――――――お、押し倒してる!?

 

 

 

まだ連載中の企画作品で、オススメのものを紹介します。

 

アルファポリス恋愛小説大賞・特別賞を受賞された『らしく』の作者である五十崎由記様が執筆されてる可愛い恋のお話です。

 

『きらり、キスのカウント』

 

幼馴染との恋を中学生らしいフレッシュさで描かれてます。

思わずニヤリとしてしまう展開はさすが五十崎さん!

文章も軽すぎず、重すぎずでとても読みやすいです。

是非読んでみてください。 

 

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