表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

第1話

 ドサッ。


 私が神への復讐を誓う雄叫びを上げ終わったと同時に、目の前に何かが落ちた。


 不審に思いつつ、その物を確認する。

 黒い洋服の上に手紙が置いてある。

 私は手紙を手に取り読んでみた。


『無事にその世界に行けたようで何よりじゃ。

 お主の好みであろう黒いドレスを送っておくので、我を滅ぼす決意とかやめるんじゃぞ?

 お主の場合、訳も分からず日本に戻って来そうで我マジびびっちゃうからの!』


 そこまで読んでから私は手紙を置いて服を着る。


 書いてあった通りに黒ゴス服だ。

 ブーツも漆黒で素晴らしい。

 しかし黒部分が多い。

 否、白い部分が無い。


 これではまるで喪服のようだ。

 ゴスロリは喪服とも通ずるので間違ってはいないけれど。


 服を着た私は改めて手紙を読んだ。


『喪服っぽくてすまなんだ。

 だがあれじゃ。お主、中学では一人ぼっちで喪女だったし、喪服がとっても似合うと思うのじゃよ、我的に』


 パチン。


 私は黙って火をイメージして指を鳴らす。

 すると私のイメージと寸分違わず、手紙がメラメラと燃えて地面に落ちる。


「まずは日本に戻る方法を探しましょう」


 歩き出そうとした私の前に燃やしたはずの手紙が浮かんできた。

 燃やした後などなく、綺麗な状態で。

 仕方なく私は手紙を手にとった。


『ちょっとしたジョークじゃろう! いきなり燃すとかなんなの!? 最近の切れやすい若者なの!?』


 これはもはや手紙なのだろうか。

 リアルタイム通信をしている気がしてならない。


「必要な事を手早く言わないと、本当に日本に戻る為に行動するわ」


『まずお主の種族じゃが、トゥルー・ヴァンパイア。最も古く強い吸血鬼である真祖にしておいた。その世界での真祖は絶滅してるんで、実質お主吸血鬼で最強。よかったの!』


 真祖。

 吸血鬼の祖にして最強のヴァンパイア。

 悪くないわね。


『次に魔法じゃが、さっきお主がナチュラルに使ったあれが創造魔法じゃ。お主が想像した事を魔力が足りる限り具現化する。その世界で創造魔法を使えるのお主だけじゃ。よかったの!』


 素晴らしい魔法ね。

 あらゆる魔導書ラノベを網羅した私にお似合いだわ。


『最後に、お主は言わなかったが真祖の能力のおまけとして、その世界の言語及び文字の解読能力を付与したのじゃ』


「あら、良い仕事してるじゃない。天照(アマテラス)


 言語に関しては考えていなかった。

 良い仕事と言わざるを得ないわね。


『このように、我ってばとってもナイスじゃろう! なので間違っても日本に戻って我を殴ろうとか思わないようにの! その世界で吸血鬼としてどこでも良いから君臨して末永く過ごしてくださいじゃ!』


 最後の文を読んで思わず微笑んでしまう。


「ふっ、私に末永く君臨してほしいだなんて。実はツンデレだったのね」


 ロリババァって思って悪かったわね。

 なんて思って手紙を見て居ると、新たに文字が追加された。


『尚、この手紙は読み終わったら自動的に消滅します』


 ボワァン。


「……」


 紙とは思えぬ煙を撒き散らしはじけ飛ぶ手紙。

 私に怪我は無い。

 怪我処か爆発の風圧すらそよ風だった。


「なるほど。最後に吸血鬼の強さを体験させたかったのね。良いでしょう」


 私はいつの日か殴る事を決意して歩き出す。


「そう言えば何で手紙なのかしら。……神と紙をかけた? まさかねぇ」



 ◆



 10分ほど歩いただろうか。

 未だに景色は変わる事無く、森、森、森。

 一本一本の樹木は太く、屋久島を思い出させる。


 道々――とは言っても獣道ですらない――を進みながら見る他の植物も生命力に溢れ見応えがある。


 正に異世界情緒。

 日本の都会、いや、田舎でも見られぬ、まったく人の手が入っていない光景。

 その素晴らしい大自然の景色だが。


「飽きたわ!」


 吸血鬼であるせいか肉体的に疲れは無い。

 だが精神的に疲れ始めた。


 折角異世界に着たと言うのにこれはまずい。

 そう考えた私はテンションを上げる為にある事をする事にした。


「煉獄より誘いし獄炎よ。我が前に立ちし愚者を焼き尽くせ! 死の紅(デスクリムゾン)!」


 私は両手を前に出した状態で止まる。


「最強の炎系魔法の呪文にしては地味かしら? 敵を威圧するには、呪文を唱えてる最中にも演出が必要ね」


 私が始めた事。

 それはもちろん、魔法の開発!


 今のは呪文だけだが次は違う。

 今度はゆっくり眼を閉じ息を吸う。

 すると私の足元から地面が凍りついていく。


 想像するのはシベリアの氷河。


「世界に満ちし氷霊よ。我が呼び声に応え、静寂の世界を現したまえ!」


 私の呪文に呼応して、周りの地面が!植物が凍り付いていく!


「『絶対零度( アブソリュートゼロ)』!」


 眼を開けた瞬間、右手を前に出し魔法を放つ。

 私の右手からは蒼い極光が放出され、それに当たった木々が凍りつく。

 放出が終わると私の前面にあった木々全てが凍り付いていた。


「ふふふふ。本命発動前の地面を凍らせる演出が良いわね! あとは詠唱中はスカートがなびくようにしましょうか?」


 あ、やばい、楽しい。

 創造魔法、想像以上に楽しい。


 これなんだか細かい演出も自分で作れるんだもの。


「はぁぁぁああ!」


 私は全身に炎を纏う。

 そして右手を掲げる。


「我が身に宿りし炎よ! 我が手に集い、爆炎と化せ!」


 全身の炎が私の体を螺旋を描くように右手に登っていく。

 そして全ての炎が右手に集まり球状になる。


「『爆発弾(ブラストショット)』!」


 声と共に右手を振りかぶりった。

 ゴォォォと轟音を鳴らしながら、灼熱の弾丸が凍った木に向かう。

 衝突と同時にバジュウウウウと音が鳴り熱風が吹き荒れた。


「今のは体を螺旋に這うのに意識が行き過ぎたかしら? 効果を具体的に想像するほうが威力も上がりそうね」


 氷の魔法に比べ今の爆発は地味だった。


「炎纏ってから、それを束ねるのは良かったわね。でもその後が地味。あ、炎を竜にするとか? そして決め台詞は、これが魔を秘めた本当の炎だ。とか!」


 私は台詞を考えると同時にポーズも考える。

 様々な英雄劇(アニメ)を見た私にとってすら、その作業は難航した。


「やっぱり最初の登場シーンからして魔法を使うべきかしら? 闇を纏って現れるとか! 雷も捨てがたいわね! でもビリビリってあだ名されたら微妙だわ。派手で威厳が在るのはやはり闇属性よ! 私の闇に包まれて眠りなさい。とかボスっぽくてよくない? あら、私天才!?」


 私の魔法の創造は夜になっても続いた。


「闇夜すら飲み込む闇。我が闇の力の前に跪きなさい。雑種!」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ