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プロローグ

 私は事故で死んだらしい。


 それはいい。

 人間いつか死ぬものだ。


 だが私の場合はソコで終わらなかった。

 死んだ私の体に別人が入って生活していたのだ。


 まぁ、それもいい。

 家族と仲良くしてるようだったし、私の体に憑依転生した奴はいい奴だったから。


 問題が在るとすれば……。


「あんたの手違いで生き返った私の魂を、気軽に連れて行こうとするとかふざけてるわねぇ」

「我の手違いで蘇ってしまい申し訳ないのぅ。次の生で特典をつけるから許してたもれ」


 目の前の神を称する金髪ロリっ子曰く。

 なにやら手違いが在り、私は再び自分の肉体に魂が戻り蘇った。

 しかしそれは手違いだから、蘇った私の魂を次の輪廻へ連れて行くからと迎えに来たらしい。


 それを聞いた私は目の前の神を――


「うりゃぁ!」

「ぎゃぁあ!?」


 ――バックドロップした。


「ふっ。今ので少し気が晴れたわね」

「お、お、お主、自国の主神をぶん投げるとか!?」

「神は死んだ!」

「死んだのお主じゃし!」

「言いたかっただけよ」

「お主なんなの! なんなの!」


 目の前の神は見た目通り子供なのか癇癪を起している。

 子供がぶんぶん手を振ってる様は可愛いわね。


「わざわざ主神たる我、天照が迎えに来たというに、敬意すらないとかなんなんじゃ!」

「ふっ。愚問ね。貴女より私のほうが美しいからよ」


 綺麗に腰まで伸びた艶のある黒髪。

 つぶらに大きく見開いた宝石のように輝く瞳。

 瞳に負けない整った顔立ち。

 常夏の砂浜の様に真っ白な肌。

 そして一切無駄のないボディライン。


「一切無駄のないって言うか、お主15歳の割に胸が一切無いだけじゃ?」

「あんただってどう見てもつるぺったんでしょう!」

「ふっふ~ん。我のこの姿は信仰を集める仮初の姿じゃ~。実際の我はぼんきゅっぼんじゃ!」

「……うっわっ。目立ちたいからってロリを作ってるって言うの? うわー引くわー」

「なんじゃと! お主だって生前、奇妙に黒い西洋ドレスとへんてこ化粧をしてたじゃろう!」

「あれは黒ゴスという至高の在り方なのよ!」


 ガシッ!


 お互い掴み合いもつれ合う。

 私と金髪ロリ神は互いの誇りをかけて戦った。


 ――戦いが始まってから数分後。


「ハァハァハァ。もうなんだか無駄に疲れたのじゃ……。さっさとお主を輪廻の輪につれてゆこう。さっさと要望を言うが良いわ」


 先に音を上げた神の提案に頷く。

 私もなんだか無駄な事をしていた気がするから。


「良いわ。では次の生まれ先は剣と魔法のファンタジー世界で!」

「よし、了解じゃ。では行くかの」

「お待ちなさい!」


 何かをしようと手を上げた神の肩を強く掴む。


「な、なんじゃ?」

「あんたの手違いの責任をとるんでしょう? 生まれ先だけじゃなく、もっと色々希望を叶えて貰うわよ」

「まぁ、我の責である故に良かろう」

「次は堕天使に生まれたいわっ!」

「却下じゃ!」


 何故!?

 人類の生まれたい種族ランキング私調べのベスト3に入る種族なのに!?


「お主、神に向かって神に反旗を翻した『堕ちた神の使い』にしてってダメじゃろ。我が生まれ先の神に怒られるじゃろうが!」

「チッ。神の癖に心が狭いわね。反逆者の一人や二人や一万人くらい良いじゃないの」

「一万人って地味に多いの!?」


 心の狭い神ね。

 では第二希望。


「吸血鬼でいいわっ!」

「お主人間の癖に人類の敵になりたいのかっ!?」

「あ、あと吸血鬼としての最高の能力が欲しいわね」

「我の発言スルー!?」

「煌びやかなドレスが似合い、グラスにワインを注ぎ傾けるのが似合う。そして魔眼も使えるわよね、きっと。うふふふ」

「あれワインじゃなく生き血じゃからな?」

「あ、それと私が自由に魔法を使えるようにするのよ」

「アレ!? 希望じゃなく命令になっておる!?」


 吸血鬼となり、綺麗なお城で玉座に座る光景を頭に浮かべる。

 おほほほ、私の前に跪くのよ!愚民共!


「転生先は剣と魔法の世界。種族は吸血鬼で吸血鬼的に最高スペックの能力。で創造魔法を使えるようにと。我侭放題じゃな」

「そうそう、0歳からなんてめんどくさいから、今の私の姿のままで頼めるかしら。至高たる我が身のままの転生こそ、世界が望む事でしょうし」

「それ、転生じゃなくトリップと言うんじゃが……。まぁいいか。お主と同じ見た目の肉体を転生先の世界に作って、ソコに魂をぶち込もう」


 堕天使じゃないのは残念だけど吸血鬼。

 貴女に血を吸われたい。

 とか言われてしまうかしら。

 罪作りな私。


「もー他に望みはないのー?」

「えぇ、大丈夫よ。闇の女王として立派に世界を混沌に陥れてくるわ」

「……うむ、そうか。お主が次の生を地球の日本にしないで、我とっても良かった」


 神は疲れた様子で遠くを見ていた。

 きっと転生先の世界の神と交信でもしているのでしょう。


「では頑張っての~」


 神が手を振った瞬間、私は意識が途切れた――。




 そして意識を取り戻した瞬間、私は見知らぬ森の中に立っていた。


「ふっ。森の中とはお約束ね」


 転生物の読み物を読み捲った私は、動じる事無く自分の状態を確認した。

 そして大きく息を吸い込み叫ぶ。


天照(アマテラス)! 今度あったらぶっ殺すわよぉぉぉぉ!」


『裸』な自分を確認し、揺らがぬ決意を口にした。


 私の第二の生の目標は、神を打ち滅ぼす事になりそうだ。




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