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清華廉学園女子テニス部による超絶的青春謳歌の日々

作者: 麦田めろん

 真奈美まな。彼女はソフトボール部のエースだった。

 幼稚園の時から、身体を動かすのが大好きだったまなは、小学校入学と同時に野球を始め、中学に上がった時にソフトボールに転向した。

 抜群の運動神経を持ちながら、努力家。もちろん技術も中学生レベルからすれば抜きんでるモノがあった為、全国のソフトボールに力を入れている各高校は彼女のスカウトに走った。

 そして、運命の二者面談。彼女は進路希望を提出し、教師の机の前に座った。

『第一志望:清華廉(せいかれん)学園』

 それを見て、担任は別段驚きもしなかった。

 清華廉学園。日本が誇る学問で頂点を目指す為の学園。清廉・可憐・華麗という意味が込められているその学園は、1に勉強、2に勉強、3、4も勉強、5も勉強といった感じの日本が誇る、最強の頭脳を持った子供たちが集結する国内最難関最高峰学術機関なのである。

 しかし、彼女は頭脳も明晰であった。

 父親が弁護士、母親が大学教授という家庭では、当然勉強も強いられた結果だった。

 担任からの質問は一点のみ。

「ソフトボールは、もういいのかぃ?」

「はい、仕方がありません」

 清華廉学園にはソフトボール部は存在しない。それどころか運動部の活動自体が盛んではない。清華廉学園の主役は文化部なのだ。

「ご両親の意向かぃ?」

「はい。流石に一人暮らしというわけにもいきませんし、スポーツはお金が掛かりますから、親の援助がなければ続けられませんので」

 普段、教室では今時の女子中学生と何ら変わりない態度なのだが、目上の人への対応に関しては流石は運動部といったところだ。

「納得をしているのなら、先生は何も言いません」

「はい。ありがとうございました」

 こうして進路相談は終了し、彼女は新たな道の一歩を踏み出すのだった。

 しかし、輝かしい未来がやってこない事をこの時は知る由もありませんでした。

 スポーツを止めた彼女は、友達の影響で見た目が派手になり、色気づき、非行に走るようになってしまいました。口癖は「別にぃ」。

 そんな彼女が友人と共に夜の街をフラついている時の事です。

「ねぇねぇ君達可愛いね。テレビとかって興味ないかな?」

 まだ20代と思われる、スーツ姿の男性に声をかけられた。

 まなを含む3人は、男の口に乗せられ、崩壊の一歩を辿るのでした。


 連れて来られたのは、古いマンションの一室で――(R指定中略)


 まなは、痩せに痩せた。食欲など感じないようになっていた。そして自分を正常に保つために手元の白い――(R指定中略)

 気がついた時には、まなは全てを失っていた。肌はもうボロボロで、顔色は厚い化粧で誤魔化さなければ、死ぬ前の病人とほぼ同等の状態であった。

 けれど、もうまなにはアレがないと生きていけないほど依存症状が出ていた。金を作らなければアレは手に入らない。どうする。でももうこんな体では働く事も出来ない。

 それ以上考える事は出来なかった。アレが無いなら死ぬしかない。選択肢は2つしか用意されていなかったのだ。

 そして、まなは最後のアレが使い切り、効果が薄くなるのを感じて、死んだ。


『真奈美まなという女』完。



「どうかしら。この自主製作のドキュメンタリー風作品を今度の文化祭で上映しようと思うの」

 部屋(シアタールーム)の電気を点けて、『清美(きよみ)きよ』はその長い黒髪をかきあげながら、自慢げに2人に告げる。

「製作期間2週間の大作よ」

「いや~、凄かったねぇ」

「ふふふ、モモンガは気にいったようね。嬉しいわ」

 床にぺちゃんと座る『桃井もも』は感心していた。それが作品の内容なのか、清美きよ自前のホームシアターセットなのかは定かではない。

「で、あなたはどうだったのかしら」

 桃井ももの隣で鑑賞していた少女は絶句していた。普段ならば、清美きよが付ける、桃井ももへの適当なあだ名にツッコミを入れる立場にある少女は、今回は何も言えず、ただ茫然と、怒りを越えて呆れ、そして……なんだか愉快な気分になった挙句、やっぱり呆れ果てていた。

「そう、感動して言葉になりません『何も言えねぇ』と」

 きよが謎のアンケート用紙に2人の感想を書いている時に、ようやく少女に意識が戻った。

「な……な、何なのよコレは!」

「えっ……『映画』とは。から始めなければならないほど、あなたの頭はスッカラカンだったの」

 きよは絶句した。

「まなちゃん、映画だよ映画~、ムービーだよ~」

 何の答にもならない解答をももが告げる。その「まな」と呼ばれた少女に。

「どうして私の人生が映画になってるのよッ! しかも未来が酷い事になってるし!!」

「いえいえ、何を仰っているのやら。こちらの主役様は、偶々役名が『真奈美まな』なだけで、更に偶然が重なって偶々あなたが演じているにすぎないのよ。全ては偶然」

「高校入学までそっくりそのまま私の人生じゃないかッ! 何が偶然だ!」

「あなたは……私の人生そのものですぅ」

「ももちゃんッ!?」

「そうね、モモの木。嘘は良くないわね。これはあなたの人生をモチーフにしたわ、喜ぶといいわ」

「いや、何がッっていうか私の人生が勝手に酷い事になってるじゃないのッッ!!」

 そう、彼女の名前は「真奈美まな」清華廉学園2年生。清美きよ、桃井もも、の両名も同じ清華廉学園2年生。3人は数少ない清華廉学園の運動部である女子テニス部の部員なのだが、その話はまた別の機会に。

 今はただ、この3人が良き友人関係にあるという知識だけで十分だ。

「無様に朽ち果てる予定の小娘のまだ元気姿を見ていると思うと、ちょっと感傷深いわね」

 3人は良き友人関係だ。

「何勝手な事言ってんのよ!!」

 3人は良き友人関係なのだ。

「私見たのよ、見てしまったの。この小娘が2週間前、馬鹿なのに風邪引いた事があったでしょう。馬鹿なのに」

「あ~あったねぇ。まなちゃんのお家にお見舞い行ったよねぇ~」

「くッ、学年1位という頂点極めし者特有の視点から見下ろされて言い返せない。学年2位なんだけど、勝てないから言い返せない」

 清美きよは『天才』という部類である事は間違いない。

 何事も人の手による物なのだから、出来て当たり前。彼女の辞書に不可能という文字がないのではなく、そもそも彼女には辞書という物が存在しない。型にハマらない常識破りを得意とする。

「そう、桃太郎と一緒に、馬鹿なのに風邪を引いた小娘の無様な姿を見に行った時の話よ」

「ももちゃん何か太郎になっちゃってるよ!」

 桃井ももは、ふわっふわである。「あの雲、美味しそう」という台詞がとても良く似合う、天然をこじらせた少女で、文部科学大臣指定の特別天然記念人である。

「あ~、カッコイイよね~太郎って名前。子供が出来たら太郎にはしたくないな~」

「どっちなのッ!」

 持ち味は、その対応力。計画的なようで、無策。無策のようで、計画的。

 この3人の中では唯一の社交的な一面を持ち、一般生徒との言わば外交官的な役割も果たしている。

「で、その時よ。口裂け女のコスプレで現れた小娘が、一旦そのコスプレを外したのよ」

「えぇ~あれ、コスプレだったのぉ~、私気がつかなかったよ~、そうならそうと言ってくれればよかったのに~」

「単なるマスクよッ!!」

「そして、白い粉を水で流しこんだのよ……」

「えぇ~、あれ風邪薬かと思ってたよぉ、灯台下暗しだねぇ~」

「ももちゃん正解だよッ! ちゃんと灯台付近も明るく照らされてるよッ!」

「でもきよちゃんが、そう言ってるし……」

「信頼度の差ッッ!!」

「冗談だよ~」

「も、もぉ止めてよ、ももちゃんの冗談は怖いから」

「えっっ、アレは風邪薬だったというの……そんな」

「お前こそ真の馬鹿野郎だよ。くっそー、それで最近お前ビデオカメラなんか持ってたのかー。撮った映像の音声消して、上から付けて、背景も合成して……まぁた無駄な努力したもんだよお前」

「えぇ、あれまなちゃんが実際に演技してるんじゃないの!!」

「ももちゃん!?」

「てっきり1度天に召されたのかと思ったのに~」

「ももちゃんッッ!?」

「冗談だよ、冗談~」

「も、もぉ止めてよ」

「えっっ、では、あの時の死に際の演技をしていたのはいったい誰……アレは……まさか、そんな」

「強引にホラーの流れに持っていこうしないッ!」

「というのは冗談なのだけどね。というわけで本来の目的に戻りますけど、コレを文化祭で上映して、ガッポリ稼ぎましょう」

「おい止めろ! ていうか金取るのッ!?」

 きよが今日、2人に部活をサボらせて招集をかけた本題がそれらしい。

 先ほど2人が観たドキュメンタリー風の作品『真奈美まなという女』を今秋の文化祭にて上映しようというのだ。

「子供から大人まで一律2000円」

「業界舐め過ぎだろ、映画館行くより高いじゃん」

「2000円札の真の使いどころが来たんだよ、まなちゃん」

「この為の守礼門ッ!?」

「宣伝方針としては、とりあえず、1人でも多くの爺と婆に声をかける事ね。洗剤とか渡すと来てくれそうね。作り笑いの上手いスーツ姿の少し素朴な印象を受ける、あまり身長の高くない男性が勧誘すれば、尚良し」

「尚良し、じゃないからッ! 何か少し怪しい匂いのする商売になってるわよッ!」

「完璧だね、きよちゃん! 弱者からの徴収は基本中の基本だよぉ!」

「ももちゃん!? なんか黒いよももちゃん!?」

「更に、子供も容赦なく狙い撃ち致します。具体的には、来場特典として限定の色違いレアポ○モンを配信します」

「超大手との抜かりない連携ッッ!?」

「これで興行成績でア○ターを超えるわ」

「まさかの3Dッ!?」

「(3Dはエロシーンのみ)」

「需要がねーよッ!!」

「何言ってるのまなちゃん! 愚かな男達が釣れるよ!」

「約束された金メダルへの道ッ!?」

「チェックメイトね。あとはやたらと声だけ煩い主婦層への対策もバッチリ考えてあるわ。 さっきの芸能界(笑) に誘ったスーツ姿の男性は、本編では某韓流スターにオファーを出しておいてわ」

「断るに決まってるだろッ!」

「あら? ちょっとごめんなさい電話だわ……………えぇ、そうです私です。はい……はい、それでは収録日は明日という事で、えぇ、期待しています。それでは明日……………OKが出たわ」

「何でだよッッ!!」

「これで政府もマスコミに圧力をかけてプッシュしてくれる事間違いないわね」

「メディアのタブーがッ!!」

「右を向く人達による炎上商法も期待出来るね、きよちゃん!」

「そうね、そこも狙い目ね」

「試される日韓問題ッ!」

「集まったお金は、恵まれない子供達(清華廉学園女子テニス部)へ全額寄付します。にすれば社会的にも評価されるね、きよちゃん!」

「ももちゃんッッッッ!?」

「では最後に、念のため上映に対して賛成か反対か、この場で多数決を取ります」

「既に敗北が決定事項なんだけどッッ!!」

「もぉ~まなちゃんも本気にしちゃってぇ~、冗談だよね、きよちゃん!」

 まなの目がきらりと光った。

 良かった、さすがはももちゃん。天然をこじらせてるにしろ、しっかり守るべきラインは守ってくれる、そんな優しい人だ。

「………………………………えっ」

 きよはまるで、世界の終わりを迎えたかのような顔をしていた。

「ももちゃん本気だよ、コイツは本気だよッ!!」

「もぉ、きよちゃんダメだよ。さすがにまなちゃんが可哀想だよぉ」

「審判顔負けの手のひら返しで私の順位が繰り上げッ!!」

「そうね……桃の天然水の言うとおりだわ。私が間違っていたようだわ」

 まなは目撃した。

 この女でも平謝りする事があるなんて、驚いた。思わず携帯で写真を撮りたくなった。

 だから今日は、ごめん記念日。

「だからね、きよちゃん。私がまなちゃんを虐める役の女子高生として出演するよ!」

「ももちゃんッッッッッッッッ!?」

「これで役者は揃ったわね」

「クランクアップまで、あと、2日!」

「早ッ、明後日ッ!?」

「では、早速今からシーン827の河原でまなが迫害を受けるシーンを撮影しに行きましょう」

「そんなシーン何処にあったのッ!?」

「ちょ~ちょ~、そこのお譲ちゃんよぉ~」

「なんか既に始まってたッ!? しかもちょっと古い感じの悪い人!!」

「良いわ! 桃の缶詰続けなさい。ちょっと爺や、ビデオカメラを持ってきなさい(パンパンッ!)」

 説明を忘れていたが、ココは清美きよの自宅である。清美家は、この界隈では有名な富豪であり、当然自宅も超豪邸。

 このシアタールームはまだ序の口、他にもジム、事務、ジム(連邦)や、書庫(その規模は国立図書館をも越える)、車庫(その規模はF1選手も驚く)、チョコ(その規模は、世界の消費量の半数を超えるとか)、更には、精神と時の部屋的な部屋、秘密の部屋的な部屋など想像を遥かに超える部屋を取りそろえた豪邸である。

 そんな一人娘が一度手を叩こうものなら、天井から、床から、隠し扉から、メイドや執事がまるでハイエナのように群がるのである。

 この瞬間も、一叩き目で302人が反応したが、「爺や」の一言で301人は撤退。きよが1番信頼を置く「屋居寺(やいじ)(さん)(じゅう)(すけ) (25)」、名字の「やいじ」から通称「爺や」さんが選ばれ、風のようにビデオカメラを渡すのである。

 もも曰く、「屋居寺さんは忍者」とのこと。

「桃とみかんの缶詰、もっと悪そうにしなさいな!」

 ビデオカメラを受け取り、テンション上昇中のきよがその場で演技指導を入れる。熱くなっている証拠だ。

 映画にかける情熱を、2週間という短い期間ではあるが、学んだきよは、ももへ自分の描く絵を全力で伝えた。

「うぅ……体調が、悪いぜぇ~」

 ももには伝わらなかったようだ。

「これはこれでアリだわ!」

 しかし、きよはレンズ越しに何らかの芸術点を感じた為、撮影は続行。

「なしッッ!!」

 阻止。

 まなはきよからビデオカメラを取り上げ、これにて終了。

「ふぅ、全く、ノリの悪い娘ね」

 普段の透き通った雰囲気の落ち着きのある冷たさが、きよに戻った。

「そだよぉ、まなちゃん、長いものには巻かれないと~」

 ももは、特に変わらず、普段のふわっとしたままで、

「冗談はそこまでッ、ッたくもぉ。人の人生を玩具にしないで」

 まなは落ち着きのある怒りをぶつけた。

 3人は良い友人関係にある。

「まぁいいわ、映画製作のノウハウを学ぶ事が出来ただけでも、良い体験をさせてもらったわ」

「今度は皆で作ろぉ~」

「良いわね。今度は皆で製作しましょう……あなたも当然参加してくれるのでしょう?」

 清美きよはこういう人間だ。真奈美まなは知っている。

 不器用すぎて疲れるが、結局のところ今日の本題はソコなんだろうとまなは心の中で思った。

「今度は真面目に作るのよッ」

 3人は良き友人関係にある。

「では、タイトルを発表します」

 それは今後揺らぐことはないだろう。

「えッ、もう決めてあるのッ!?」

「さすがきよちゃん~」

 清華廉学園女子テニス部。それは、真面目に不真面目な人間が集う、超絶的な青春謳歌……の踏み台。

「タイトルは、『MANAMI MANA』でいくわよ」

「目指すはハリウッドッ!?」

「この映画を観て、勇気をもらいましたぁ!」

「仕組まれた生の感想ッ!?」

「では、早速明日から撮影開始ね。残念だわ、これで明日の部活も参加出来ないわ」

「おい! 真の目的はそこだろッ!!」

「まぁまぁ、まぁまぁ」

 こうして3人は、明日も真面目に部活をサボる。



登場人物だけ先に(テンプレ)考えてから、いくつか短いお話を書いていました。

すると、なんという事でしょう。

1番最後に書き始めたモノが1番軽快に進むではありませんか。


そういうわけで、最初にコレ。


続きは書くの止めるかもしれないので、短編で。


ありがとうございました。

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