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月曜日に乾杯!

 夏を前に、俺の生活は一気に華やかなものになった。やはり彼女のいる生活というのはいいものだ。心に潤いを与え、日々が一気に楽しくなる。

 井口は子供っぽい所はあるものの、全身で俺への愛情を示してくれるところが何ともいえず可愛い。

 また、子供っぽく俺を頼り、甘えてくる様子もまた良い。弱さを一切みせることのない月ちゃんとは大違いである。また小柄で細い彼女とは違って、井口はDカップでそこも良い!

「うわ〜凄い美味しそう! あっくんって、料理も出来るんだ!」

 料理といえるのかどうか分からないが、俺が作ったチャーハンを見て目を輝かせる井口。金曜日の夜から、部屋に泊まりにきていた井口は、今俺のTシャツをダボっと着て部屋でくつろいでいる。その様子がなんともエロくて可愛い。

「美味いかどうかは、保証できないけどな」

 お腹すいていたのか、テーブルに置かれた途端にスプーンで食べ始めた。ニカっと井口はコチラに向かって笑い親指を立て行動でも美味しいと表現する。

「旨いよ! サイコー」

 こういう開けっぴろげで子供っぽい所と、グラマラスボディーでエロな所と、そのギャップが彼女をまた魅力的にしている。

 思わず、その様子に愛しさと可愛さを感じ微笑んでしまう。

「良かった! 所で今日何処デートいく?」

「ん〜、映画、なんか、ほら、大きな災害が起こって生き埋めになった人を助けるやつ。アレみたい」

 映画というので、ヨシ! と思ったが、その後の言葉にやや落胆する。 その映画、ネットの映画ブログとか、シナリオも酷く映画館に金を捨てに行くような馬鹿映画と言われ酷評されていたものだ。

「それ、かなり微妙って噂だよ」

「え! 私の友達みんな 絶賛しているよ! だから大丈夫!」


 結局彼女に押し切られ、その映画を見に行くことになった。しかしその内容は、ネットでの噂通り酷いものだった。まず関東を襲う未曾有の大災害が、えらく主人公にだけというか、物語に都合のよい被害を与えている。明かに銀座新橋辺りは壊滅状態だろ? という状況だったはずなのに、新橋あたりにあるらしい災害対策本部となっているホテルは、電気から水道まで問題なく使えているようだ。唐突にいろんな事が起こるけど、それも主人公達に決定的な被害を与えず緩い危機感あたえるだけで終わっていく。そんな感じで脚本がかなり適当。主人公やその家族、なんでこんなにも頑丈なんだと呆れるほど皆、埋没しようが何かが上から降ってこようが助かる。

 俺は映画というより、ツッコミをすることの方で楽しんでいた感じである。

 隣では、井口は、デッカイ器に入ったポップコーンをザラザラと音を立てながら頬ばりながら「うほ!」「すげー」とか言いながら夢中になって見ているようだ。いつもなら、そういった態度許せないのだが、今日はいかんせん映画も酷い、全てがどうでもよくなった。

「超、面白かった! 超感動だよね」

 エンドロールに入った途端に、井口は目をキラキラさせ、エンディングテーマに負けないように大声でコチラに話しかけてくる。

 俺は、その言葉に引きつった笑みしか返せなかった。


 ※   ※   ※


 月曜日、あくびをしながら駅の改札をすると、前方に見慣れた小柄の女性の姿を見付ける。

駅から一歩出た日だまりの中で嬉しそうに空を見上げているのは月ちゃんだ。人がそれぞれの目的に向かって動いて雑然としたこの空間において、背筋を伸ばして立っているその姿は、爽やかな朝の空気を感じさせた。俺は雑踏から抜け出しその、爽やかな空間へ誘われるようにその姿を追いかけ、肩を叩く。

「おはよ! どうしたの? 早いね」

 そう、今日は少し早い、朝何かの当番で早くでないといけないという井口の為にモーニングコールを頼まれ、そのまま目が覚めてしまった為にいつもより早めに駅に到着していたのだ。

「おはよ! 黒くんこそ、早いね、仕事?」

 月ちゃんの態度は、俺に彼女が出来る前と後もまったく変わらない。親しげな笑みで挨拶を返してくる。その様子に身勝手だが傷ついている俺。怒りも喜びも隠せない井口成実は、俺と付き合う事になった事を決定直後から社内で触れ回っていた。当然同期である月ちゃんにも嬉しそうに報告している。その現場に、うかつにも居合わせてしまったが、彼女は嫉妬どころか嬉しそうで、祝いの言葉すら発してきて暖かく応援してくれる始末。

「いや、チョット早く目が覚めちゃって」

 俺一人が感じる勝手な疚しさのため、月ちゃんの前で井口の話題をしにくい。

「ふーん 私は毎朝、あそこで珈琲してから会社行っているんだ。だったら、黒くんも一緒に飲む?」

 彼女は、駅前にあるコーヒーのチェーン店を指さす。

「いいね! 行く行く!」

 月ちゃんの誘いに、俺は飼い主に褒められた犬のように、嬉しさをさらけ出して答えてしまう。

そんな様子を彼女は面白そうに見る。

「そんな、喉渇いていたの?」

「もう、満員電車で大変だったからね」

 俺は、本当の理由を隠すように、彼女の意見にのり、『ホント参ったよ』といった感じで言葉を続ける。井口にもなんか悪い気もしたけど、これは浮気じゃない、ただ同期と喫茶店で飲むだけだ、疚しい行為ではない。『そうだろ?』と自分に言い訳をしながら、俺は月ちゃんと一緒に青に変わった横断歩道へと踏み出した。

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