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恋するための3つのルール

 恋する女性というのは、分かり易い。ヘラヘラ馬鹿になるだけの男性に比べれば難しいが、良くみていたらすぐわかる。『綺麗になる』という『当社比何%』的な曖昧な見分け等ではなく、もっと分かり易く行動に現れる。まず、服装の趣味が微妙に変わる。新しい趣味をもつ。携帯をやたら気にするといった行動が出てくるとより完璧である。


 こんな現象が起こり始めると、それはその女の子が恋をしている証拠。


 夏になり、爽やかなブルーのストライプのタイトなインナー白い薄い生地のフードのついた上着に、紺のパンツにヒールのあるサンダルと、夏らしいファッションの月見里百合子を俺はシゲシゲと眺める。

 実に彼女らしい、シンプルで爽やかな服装だ。でも、この違和感は何?

「3Dとか、最新技術とかいうのもどうかと思ったんだけどね、やはりあの映像はI−MAXで観るべき! これだけは声を大にして言えるよ! やっとコンテンツがI−MAXに追いついたという感じ」

 週末観たという映画を熱く語るのもいつもの通り。 俺は営業ビルまでの道のり月ちゃんといつものように映画の話で盛り上がっていた。

「でもさ、I−MAXって映画館限られているのが辛いんだよね」

 確かに、面白そうだけど、関東にI−MAXシアターが二カ所しかないのが辛いところである。値段も普通の映画に比べ、お高い。

「映画自体が面白いかどうかは置いといて、映画界の流れを変える、分岐点となる作品だとは思うよ」

 そういって、自分の言葉に頷くように首を縦にふる。 

「なるほどね〜」

 なら、俺も行ってみようかなと、月ちゃんの顔を改めて見つめる。そして最近の違和感の原因に気付く。顔がなんか近いのだ。

「月ちゃん、背伸びた?」

 そう言うと、ムっとした顔になる。足下をみたら、彼女にしては高いヒールを履いている。動きやすいファッションを好む彼女は、あまりヒールの高い靴は選ばなかったような気がする。

「それ、嫌味?」

 そういえば、最近の彼女の靴は、ヒールが多い。

「あ、靴か、いや、珍しくない? そういう靴はくの」

 月ちゃんは大きくため息をつく。

「だってさ、信子先輩にしても、河瀬さんにしても、友ちゃんにしても、みんな背高いから、一緒にいると、私凄いチンチクリンに見えるじゃん」


 彼女が、身長低めなのを気にしているのは知っていたけど、何で今更とも思う。それに、百五十センチ半ばで、本人が言うほど小さ過ぎる事もない。

「いや、女の子ってさ、寧ろ小さいほうが可愛くない?」

 でも、小さいという単語が気にくわなかったのか、ジロっと睨んでくる。コチラが良しと思っていても、女性にはコンプレックスに感じている箇所の会話はタブーであった。

「身長だけ可愛いといわれてもね……」

 そう言いながら、左手で髪を掻き上げる。その腕に初めてみる腕時計を発見する。彼女が好みそうな、レトロな味わいのアナログ時計だ。

「あれ? その時計いいね!」

 彼女の顔が、途端に嬉しそうになる、取りあえず話は逸らせそうだ。彼女は面白いデザインの腕時計を好む。デジタル時計は嫌いなようで、アナログでデザイン的に凝った時計をいつも身につけている。ブランド品とかいうのではなく、雑貨屋さんとかブティックで見て一目惚れしたものを買ってくるようだ。

「分かる? デザイナー手作りで、一品モノらしいの! この機械というのを前面に出した雰囲気が良いでしょ」

 部分的に装置をあえて見せるデザインのそれは、確かに面白かった。

「ジブリ映画に、なんか出てきそうだよね」

 俺の言葉に、嬉しそうに微笑む。

「だよね! 私もそう思った。ボーナス出た後だから、迷わず買っちゃったよ」

「なんか分かる、面白いな、何処で売っていたの?」

「渋谷から表参道の間にある裏通りの雑貨屋さんにあったの」


 なんか違和感を覚えるのは気のせいだ、いつもの通りの彼女だと俺は安心する。

 というか、気のせいだと俺は自分に言い聞かせた。


この物語で語られている映画は『アバター』をイメージしています。

物語的には、アメリカチックであまり素晴らしいとはいえませんが、この作品によって、映画の表現の仕方・見せ方というのが大きく変わったと私は思っています。しかしその後の何でもかんでも3Dにするという流れはチョットどうしたものかとも……。

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