第三話
「魔界帝国女帝ジュリエ・ド・カッティーノ陛下がおなりあそばされました。風宮様、冬月様、こちらへ」
あたしと風宮薫はそう促されて玉座の前に歩み出た。すると、1人のオバサンが玉座へと向かい座った。
「ジュリエだ。カオル、ナナ、よく来てくれたね」
ジュリエの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
アレ、このオバサン⋯⋯。
あたしにソックリだ。
すると、ジュリエは玉座を立ち上がりこちらへと歩き始めた。あたしの前で立ち止まると、あたしを抱きしめる。
「ナナ、ナナ、ごめんなさいね⋯⋯」
はい?
なんでこのオバサン、あたしに謝ってんだろう⋯⋯。
「ジュリエ陛下は僕の母さんとはどのような関係なのでしょうか?」
「あなたの母エリーゼ・カッティーノは妾の双子の妹よ。本当によく似ている」
ジュリエはそう言って、あたしをさらに強く抱きしめる。
は、なんであたしを抱きしめるの?
「ラーニャ姫殿下のお姿が見えないようなのですが、どちらでしょうか」
「ああ、あのバカ娘は禁術の『ハンテン』を使って今は向こうに行っている」
ジュリエの言葉を聞き、風宮薫は黒縁メガネに手を掛ける。
「「時空反転魔法」ですか。厄介ですね」
「カオル、面白いモノを持っているな」
「『召喚の指輪』ですか⋯⋯」
風宮薫の言葉にジュリエは首を横に振る。
「こっちだ」
ジュリエはそう言って風宮薫の黒縁メガネを指差す。
「ああ、これですか。これは向こうの世界のゲーム機の⋯⋯。まあ、マジックアイテムみたいなモノですよ」
風宮薫はそう言ってジュリエに黒縁メガネを手渡す。ジュリエは黒縁メガネを掛けた。
はあ、やっと解放されたよ。
なんであたしがこのオバサンに抱きしめられなきゃ⋯⋯。
教育ママみたい!
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯。そうね。あなたに任せるわ。好きにしなさい」
ジュリエは大粒の涙を流しながら黒縁メガネを外し、それを風宮薫に返した。
「これはマジックアイテムではないわ。あなたたちにとってとても大切なもの。絶対になくさないように。それから、ナナ。向こうに戻るまでこの指輪を外さないように」
ジュリエはそう言って、自分の指から指輪を外し、あたしの右手の指にはめる。
「あの1人こっちで行方不明になっているのですが」
「大丈夫、時の部屋にいるはずよ。こちらへいらっしゃい」
風宮薫の言葉にジュリエはあたしら2人を出口に誘う。




