第二話
ある日のこと。私を見知らぬ女が訪ねてきた。年齢からして私と同じくらい。ひょっとして魔法学校の知り合い?
「こんにちは。魔法少女さん」
彼女はそう言った。
どうやら魔法少女ではないらしい。
「私はミホ。あなたに伝言があって来ただけよ。あまり警戒しないで」
ミホは古ぼけたポータブルゲーム機を大事そうに持ちながら私にそう言った。
「伝言? 誰から?」
私がそう言うと、彼女はそのゲーム機を指差す。
「システム0007。コードネーム『ナナ』。伝言というより遺言かも」
「お前、政府の犬か!」
彼女の言葉に私は右掌に力を込める。
「『赤い月満ちるとき我復活せん』。ただ、それだけよ。伝えたわよ。私の大事な人の命運もかかってるの。しっかりやってね」
彼女はそう言った後に小声で囁く。
「それとね。ルナはあたしの分身だから何があっても信じてあげて⋯⋯」
彼女はそう言って帰って行った。
はあ?
意味わかんねえ。
私がななちゃんを信じないわけねえだろ!
それから数日後、レジスタンス本部から連絡がきた。どうやら政府軍が大挙してニュートーキョーへ向けて進軍していると⋯⋯。
私は日付を見る。
って、2日前の情報じゃねえか。
「ジョー、ここは引き払う。本部からの情報では政府軍の援軍がニュートーキョーに進軍しているらしい」
「今回は守りきれないかもしれない。ダメだと思ったら後ろを振り向かず全力で逃げろ。私が引きつける」
「政府軍ってそんなに⋯⋯」
「政府軍ではない」
リサはそう言って人差し指を上に向ける。
「おそらくあれば私の仇敵だ。ジョーには関係ない」
私はそう言ってアジトから出ていった。
間違いない。
あの魔女が復活する。
しかも、最悪のタイミングで!
月が、赤い満月が今にも地上に落ちそうだ。
「ジョー! さっさとにげろ。政府軍はそこまで来ている」
政府軍の魔法使いが100人以上こちらに向かって行軍している。
「ムーンライトフォール!」
低く重い声が辺り一面に響き渡る。
「ジョー!」
私がそう叫んでジョーを突き飛ばした瞬間、赤い満月が凄まじい轟音とともに地上に落ちてきた。気付くと辺り一面は焼け野原となっていた。政府軍などみんな消え去っていた。
下弦の月を背に白銀の長い髪をなびかせた赤い瞳の妖艶な魔女が舞い降りてきた。
忘れもしない。
この女!
「ラアアアアアアニャ!」
「あら、まだ無様にも生きていたの。魔法少女! お前などには用はない。裏切り者のカザミヤカオルはどこだ。妾を謀りおって!」
私など眼中にないってこと。
「まあ良い。アヤツも『魔法の種』の能力者。隠れていても関係ない」
ラーニャはそう言って、詠唱を⋯⋯。
違う。
歌だ!
「ジョー! 耳を塞げ! この女の歌⋯⋯」
ダメだ。
ジョーの瞳が真っ赤に染まっている。
「グワアアアアア! 熱い! 熱いぃぃ」
ジョーの悲痛の叫び声が最高潮になった瞬間、ジョーの全身から炎が噴き出して一気に紅蓮の炎でジャンキー・ジョーを焼き尽くしていった。
「ジョー⋯⋯」
私の悲痛の叫びだけとラーニャの歌声だけが後に残った。
「ほおぉ、お前は『魔法の種』は飲まなかったんだな。本当に気に障る女だ。しかしな、これではどうだ!」
そう言うと、ラーニャは右掌を天に突き上げる。
「ファイヤータイフーン!」
突き上げた右掌に炎が生まれ高速回転で渦巻いていく。
「消し炭にしてくれるわ!」
ラーニャの右掌から炎の渦が私に向かって飛んでくる。
「マジックブレイク!」
私はななちゃん直伝の大技で炎の渦を掻き消した。もっとも、ななちゃんのマジックブレイクは魔法ではなくて風圧だけの力技だったけど⋯⋯。
さすが、私のななちゃん!
「お前、魔法を⋯⋯」
私の言葉にラーニャは高笑いをしながら言った。
「魔力の通り道にいくつも障害を作ったんだろう。それくらい妾であればすぐにわかる。妾は天才だからな!」
東條補佐官、バレてるよ。
なんだろう。
ラーニャの顔ってどこかで見覚えのある顔なんだけど⋯⋯。




