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第四話

 いつもの通りバイトが終わってシェアハウスに戻り、共有スペースでカップめんすすっている。サキちゃん救出から数か月が経っている。あたしの行動でロケは中止になり、最終話も待たずに打ち切り。ま、クビだね。どのみち、最終話やってもクビだから一緒なんだけどね。それでも、あたしにはお咎めなしだった。政府関係者が動いたのかもしれない。

そうそう、あの時使えるようになった魔法は元通りだよ。まったく発動しない。それどころか、プチプチも出が悪くなっているような気がする。


 考え事してると、すぐカップめんはのびてふやける。だから、のびるのはアクセスだけにしてほしいって言ってんだろ。そんなことを考えていたら、つけっぱなしのテレビから聞き覚えのある単語が耳に入ってきた。『レッドバロン』どっかで聞いたことがある名前だな。


忘れた。大事なことじゃないんだよ。

忘れるってことは。


なになに。『レッドバロン』の活動が活発化している。なんのこっちゃ。


 いつも通りバイトが終わってシェアハウスに戻り、共有スペースでカップめんすすっている。またかよと思ったろ。今は週7でバイトしているし、まかない以外はカップめんだから、必ずこの文章から入るんだよ。


ん、なんか玄関のほうで物音がしたような。ストーカー、ストーカーなの? ひょっとしてキモおっさん? 


そんなことを考えながら、玄関のほうへ向かって行く。


ん、誰か倒れている。


駆け寄っていくと血だらけで倒れている女の子。


てか、魔法少女?

もう治癒魔法は使えないから救急車呼ばなくちゃ。


「ななちゃん? 助けて、私⋯⋯」


意識不明の重体となった魔法少女をのせた救急車はシェアハウスを走り去っていた。

あの魔法少女、どこかで見たことあるんだけど。

多分、テレビの魔法少女特集でみたのかな。


「んんん。んんん」


別にあそんでるわけではない。

朝起きたら、こんな感じ。

あたしなんか誘拐しても身代金なんか取れねぇよ。

バァカ!

心の中で暴言吐いたら急に冷静になった。やっぱり、毒吐くのは精神衛生上、大事だね。

まず、ココは?

わからん。

あたしの状態は?

猿ぐつわされてる。

手足縛られている。

ご丁寧に身体も固定されている。

なんだろ。

魔法がまったく発動しない。

魔法が発動しないのは、いつものことだろって。

うっせえぞ!

すべての魔法がまったく発動しないんだよ!  


「んんん。んんん」


そうやって唸っていると、ワルモノさんは突然やってきた。


「おっ、おねえちゃん、ようやく起きたか」


ワルモノさんAは雑魚キャラのように言ってきた。


「魔法少女なんぞ、あの魔道具があればおとなしいもんよ」


ワルモノさんBはこれまた雑魚キャラのように言ってきた。


コメディーのワルモノさんはなんで雑魚キャラみたいな喋りしかできないんだろ。


そんなことあたしが思っていると、

なんかボスキャラみたいのがきた。


あたしはつい吹き出してしまった。

すると、そのボスキャラは憤ってあたしを蹴り飛ばしてきた。


めちゃ痛いんですけど。みぞおちだよ。みぞおち。コメディーで描く痛さじゃねえよ。おい、いい加減にしろよ! 


暴言吐いたら冷静になった。これ大事だね。


そうか。

魔法の発動を抑える魔道具か。10年生の時に習ったやつだ!

てか、こんな大事なこと1年生でやれよ。あたししかこんなの習ってないぞ!


これを解除するには呪文だよ。えぇぇっと。


あたしの記憶力を呪う。

まったくおもいだせん。


そうこう言っていると、雑魚キャラAがわけわからんことを言ってきた。


「あの女が逃げ出さなきゃ。こんなことしなくてもよかったんだけよ。ホント、余計なことしてくれたよ」


「そうそう、公安に確保されたらどうしようもねえよ。こいつと交換だな」


雑魚キャラBが続ける。

こいつらみんなワルモノさん顔だけど、生まれた時もワルモノさん顔なんだろうか。

そんなこと考えてたら吹き出してしまった。

すると、ボスキャラがまた憤って、あたしを蹴り飛ばしてきた。


だから、みぞおちだよ。みぞおち。ふざけんなよ!


てか、あの女? ああ、あの魔法少女かぁ。

あれ、なんだろ。なんだろ。

なんかあたしのアタマの中に何かがたくさん入ってくる。うぅぅ気持ちわりい。

リサ? リサだよ。あの魔法少女。

てか、さゆたんだぁ。


それをキッカケにどんどん想い出があたしのアタマを支配していく。

そう同級生たちの名前と一緒に。


なんでこんな大事なこと忘れてたんだ!


いいことノートは文字だらけ。魔法学校時代はいいことしかなかったんだよ。

一冊じゃ足らないよ!

なんで忘れちゃってたんだろ。


今までなんで忘れちゃってたんだろ。その瞬間、あたしの身体の中で稲妻が落ちたような感覚を覚えた。そうサキちゃんの時の感覚だ。試しに魔法を発動してみた。


プチサンダー!


え、それ。

プチサンダーのレベルじゃないんだけど。


雑魚キャラBは黒焦げになってた。


「ボス、こいつ魔法使ったぞ」


雑魚キャラAはそう言って、出口に逃げようとしてる。


「あ、お前。自分だけ逃げるな」


ボスキャラが泣き出しそうだ。


とりあえず、雑魚キャラAをプチファイア!


それプチファイアってレベルじゃないんだけど。


そんなことを思っていると、ボスキャラが雑魚キャラみたいな口調で脅してきた。


「お前がここでどんなに抵抗しても無駄なんだよ。魔法少女たちは港からもうすぐ出港する。へへへ、外国に売り飛ばせばいい値がつくんだよ!」


なんでコメディーのワルモノさんはこんな雑魚キャラみたいな口調なんだろ。


あたしが拘束を自分で解いたら、ビックリして尻持ちしているボスキャラにプチファイア。


「自白ご苦労。港ね」


 港ね。あ、さすがコメディー。ワルモノさん顔の雑魚キャラがいっぱい湧いてる。

あの船ね。てか、魔法少女がいっぱい捕まってる。

やっぱり、あの呪文は1年生で教えなくちゃダメだよ。

あとで校長先生に言っておこう。


あたしは桟橋の上に立って仁王立ち。


「なんだおめえ!」


雑魚キャラがいきった中学生みたいなこと言ってきたから、とりあえずいつものをやった。


「ま、いいや! 〇に代わっておしおきよ!」


「なんか知らねえけど変だぞこいつ!」


雑魚キャラたちが騒ぎやがる。


はあ、あたしが誰だか知らんのか。


プチサンダー!

プチファイア!


プチプチを連打! 連打! 連打!


雑魚キャラが全員黒焦げになったのを確認すると、あたしは手のひらを天に向けて突き上げ、そこに魔力を集中した。

なんか、白い光があたしだけではなく、魔法少女たちも包んでいく。

そして、思い出したあの呪文。


「◯◯◯」


魔法少女たちを拘束している魔道具が崩れ去った。

自由になった魔法少女たち、てか同級生たちはあたしの元にやってきてあたしをもみくちゃにした。

そうだよ。不幸な境遇だって、落ちこぼれだって、仲間がいれば結構いい人生さ。


「やっぱり、奈々が一番すごいね」


同級生たちは口々に言う。


ん、なんか違う。絶対違うぞ。


「あたしは女にかこまれてチヤホヤされたいんじゃなぁい。あたしがほしいのはオトコだ!」


冬月奈々 17才。

職業 魔法少女『ルナ』

今日も元気に仕事(バイト)に行きまぁす!

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