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Partners 〜戌亥隼人の奇怪譚〜  作者: 土ノ子ウナム
エピローグ
32/32

禁足地で。


ゴーンゴーン


鐘の音が響く。


お祈りの時間だ。


「おはようございます。シスター。」


「おはよう。さぁ、今日もお祈りをしましょう。」


修道女たちは、皆目を瞑ってお祈りを始める。

空に浮かぶ黒い太陽に、国を統べる王に、

そして、この世界を救ってくれた神を想って、祈りを捧げる。


世界は、解放された。

少なくとも、そう信じる者たちにとっては。


多くの者が呪いに飲み込まれ、呪霊に襲われて、死んだ。


しかし少なからず呪いに適応し、生き残った者もいた。

ある者は呪いを受け入れた。

またある者は祈りに目覚めた。


呪いはもはや日常となり、呪いという呼称すら無くなった。


そして5人の王が、生き残った者たちを導いた。

崩壊していた世界で、5つの大国が生まれた。


文明も、歴史も、秩序も全てが混沌となり

呪霊は、いつしか"魔物"と呼ばれるようになる。


王たちは永遠とも呼べる時をかけて、かつて誰かが生きていた世界を作り変えていった。





「ここが…コクヨーの地か。」


「ついにここまで来たんだ。慎重に行くぞ…。」


2人の男が、深い深い森を歩く。


そこはかつて神が生まれ5人の王を導いた場所とされており、禁足地とされた島。

聖地であり、踏み込むことは決して許されない。


だが、男たちは大海を渡り、荒波を越えやってきた。

見つかればどんな罰を受けるのか、見当もつかない。


「本当に…いるのか?」

「信じるしかないさ。団長たちが命を賭けて調べてくれたんだ。」


徐々に濃くなる霧を抜け、闇より深い森を歩き、静かに歩き続ける。


「ここのはずだ。」


そう言って、進む先に

朽ちて崩れた建物が、まるで死骸のように寝そべっていた。


「間違いない。ここだ。」

「…ここに、"六人目の王"が。我々の救世主がいるというのか?」


ォォーーーン


突然どこかから、遠吠えが聞こえる。

男たちは急いで身を屈み、茂みに潜む。


遠吠えのした方を見つめた。

ほんのりと光が視える。


その光は徐々に近づいてくる。


「いた…!」


現れたのは、

魔物と呼ぶにはあまりに神々しい、白く燃える狼だった。

翼が生え、赤く脈打つ黒い前足。


「伝承によれば、あらゆる魔法に耐性を持ち、守護と天運を司ると…」

「言葉は通じるのか?本当に…味方になってくれるのか」


「団長たちを信じるしかない!"形代"は持っているな?」

「あぁ。本当にこれを渡せば…」


ォォォォーーン!!

次は明らかに男たちに向けて遠吠えがした。

自らの震える身を殴りつけ、立ちあがる。


男たちは武器を捨て、気配消失の魔法を解いて

茂みからゆっくりと出る。


六人目の王、この世で唯一神に牙を剥いた白狼。

敵意が無いことをどうにか伝えるために、2人は両手をあげて近づいた。


白狼は男たちを見据える。


「突然、失礼する。

我々は革命党の者だ。

伝承に基づき、あなた様の助力を得たく来た。」


男たちは刺激しないようにゆっくりと話す、そしてポケットから白い人形を取り出す。


「イヌドウ様の形代と呼ばれる物だ。これはあなた様の物と聞いた。まず、お返しする」


白狼はそれを見て、少しだけ驚いたような表情をしたあと

どこか暖かい目を浮かべた。


「私たちは、身分の差が無い、本当に自由で平等な世をつくりたいのだ。

我らと…共に来てくれないだろうか。」



世界を支配する神と、神に付き従う5人の王。

混沌とした世界で、

彼らは狼の魔物に頭を垂れた。


世間で彼らは邪教と呼ばれているだろう。

だが、彼らにとって本当の正義は自らにあると信じて疑わなかった。


こうして、歴史に記されぬ革命譚が始まった。

それを神話と呼ぶか、反逆と呼ぶかは――

生き残った者だけが決めることになる。

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