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Partners 〜戌亥隼人の奇怪譚〜  作者: 土ノ子ウナム
第四章 二兎を追う者は一兎をも得ず
24/27

第3節 唸るジャイロボール1-2

1-2 

広場には、既に人が溢れていた。

老若男女。子どもから大人まで、分厚い防寒着に身を包み、皆どこか浮き足立っている。


太鼓が鳴り、簡易の櫓の上に立った司会者が声を張り上げた。

司会「さぁさぁ!お待ちかね!

第十回・終戦記念雪祭り名物!雪合戦のルール説明だぁ!!」


ウォオオ

パチパチパチ

拍手と歓声。


司会「参加者は東軍と西軍に分かれてもらう!

雪玉を作って、相手に当てろ!」


司会「当てられた者は外野へ移動!再入場はなしだ!!」


去は腕を組みながら聞いていた。


司会「敵軍が全員外野に出た時点で勝利!

その時点で当てられずに残っていた者が“勝者”だ!!」


去「ふむ……要は雪玉版の殲滅戦か」

モモ「物騒な言い方やめるさ」


司会は続ける。

「ただぁーーし!

優勝景品は――最大八個まで!!つまり8人までだ!!」


ざわざわと空気が揺れる。


「八人以上残った場合!

その八人で再編成!

決勝サドンデス戦だぁ!!」


子どもたちが「うおお!」と声を上げる。


去「……普通にハードだな」

戌亥「町の祭りとは思えないルールだ⋯。」

異様なほど熱気を帯びた町人たち

この祭り、ただごとではないーー


◆作戦確認

少し離れた場所。

人混みの端で、寅が声を落とす。


寅「いいか、簡単だ」


地面に雪で簡単な図を描く。

寅「戌亥くんと去くんは雪合戦に参加。出来るだけ勝ち残れ」


戌亥 「異能は使わない、ですね。」

寅「そうだ。フェアが前提だ。呪詛師を探すためとは言え、君たちが異能を使うようじゃ本末転倒だからな。」


寅は去をちらりと見る。


寅「特にお前さんだ。

制御できない怪力で人に雪玉投げたら、死人が出かねねぇ」


去「……木に投げる分にはいいのか?」

寅「それもダメだ」


モモが腕を組んで頷く。

モモ「モモと寅は外から見とくらしいさ!

呪い、異能、怪しい動き……全部チェックさね」


寅「優勝景品周りもな。

何かあれば、即対応しよう。」


戌亥「もし怪しい人がいたら?」

寅「俺が声をかける」


寅は戌亥を見る。

寅「その時は、わざと当てられて抜けてくれ。

すぐ合流して対処だ」


去「複数人いた場合も考えられるぞ」

寅「だからこそ――」


寅はモモを見る。

寅「去くんとモモちゃんは、雪合戦に残っててくれ。陽動兼、保険だ」


モモ「任せるさ!」

去「……やれやれだな」


戌亥は深く頷いた。

戌亥「分かりました」


◆雪合戦、開始

太鼓が三度鳴った。

「――始めぇ!!」

一斉に雪玉が飛ぶ。

戌亥は反射的に身を屈めた。


ドンッ、と肩に当たる音。 外野へ向かう人。


戌亥(……思ったより、速いし多いな⋯!)


去は雪玉を握りしめ、軽く人がいないところへ投げた。

ボスッ。

雪玉なのに地面がえぐれる。


戌亥「……それは、、、当たりどころ悪ければ普通に死ぬな。」


だが周囲の町人たちが、異様に上手く、去の剛速球を見ても気にしていない。


「当たれー!」 「そっち行ったぞ!」

「いまだ!反対投げろ!」


戌亥は驚いた。

戌亥(……連携が取れてる)


去も舌打ちする。

去「舐めてたわ。

この町、雪合戦ガチ勢しかいねぇ」


そのときだった。

「や、奴が来たぞぉぉ!!」

野次馬の声と共に、

一人の少年が前に出る。


後ろにかぶった帽子。少し小生意気な目つき。 小柄な体。

茂野山「俺は茂野山 小五郎。

おっちゃん、まあまあやるね。」


茂野山「だけど、、、俺には敵わないよ!」

茂野山少年は振りかぶる、、そして次の瞬間。


キュルルル――

ジャイロ回転しながら高速で向かってくる雪玉。


去「……は?」


球は伸び、浮かび上がりながら去の顔面を襲う。

咄嗟に顔をずらして避けるが、ギリギリ頬をかすめる。


「あ、当たったかぁ!!?」


去「な、なんだ今の!?」

小五郎「うーん、かすめただけか。今のはノーカンってことでいいよ!」


野次馬「あれだ!あれが幻の――ジャイロスノーボール!!」


去「ふ、ふざけんな!!雪玉でこんな玉ありえるのか!?」


周囲は爆笑。


戌亥(……この町、ヤヴァいな。)


◆異変

わちゃわちゃと去と茂野山が激闘を繰り広げる中。

人混みの向こうから、聞き覚えのある声が響いた。


寅「――戌亥くん!!」

戌亥はすぐ振り向く。


寅「呪詛師らしき怪しい奴が居た!頼む!!」


戌亥は迷わない。


すぐにわざと、正面から雪玉を受けた。


ドンッ。

「アウトー!」


外野へ走る。

戌亥はすぐ人混みを抜け、寅の元へ走る。


戌亥「どこですか」

寅「優勝景品だ」


寅は歯を食いしばる。

寅「呪いの波動を感じた。

見に行ったら……祭りの騒ぎに紛れて、雪人形を持ち去った奴がいてね」


戌亥「追ったんですか」

寅「ああ。だが声をかけた瞬間、逃げやがった」


寅は町外れを指差す。

寅「あっちだ」


二人は走る。

雪に足を取られながら、路地を抜ける。


右に曲がり、次は左に曲がり

次は突き当たりを右に曲がりーーー


戌亥(この町って、こんな入り組んでたっけ?

それにーーー)

祭りの日に、あんなに騒がしかった町が

不自然なほど、人の気配が消えている。


やがて―― 行き止まり。

高い雪壁。


人影はいない。


戌亥「……!誰もいない⋯?」


その瞬間。

背後、いや戌亥の背中に冷たい感触。


ズブリ、と。


戌亥「……え?」

腹部まで貫かれる、刃。

熱くも、痛くもない。

ただ、身体の芯から力が抜けていく感覚と、ジリジリと迫る寒気


戌亥はゆっくり振り返る。

寅は、笑っていなかった。

寅「……すまねぇな、戌亥くん」


雪が、静かに降り始めていた。


白い祭りの裏側で――

血の匂いは、雪にかき消される。

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