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Partners 〜戌亥隼人の奇怪譚〜  作者: 土ノ子ウナム
第四章 二兎を追う者は一兎をも得ず
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第2節 去先生の呪術講座1-2

夜。

山道を抜け、辺りは徐々に白く染まる。

町に着く頃には、雪は身の丈ほどの高さにまで積もっていた。


急いで宿をとり、荷物をおろす。

肩が軽くなる。


去「とりあえず2部屋空いてて良かったな!モモが下の酒場で飯にしようってよ。」

戌亥「あぁ。すぐ行くよ。」


去「⋯おう。先に行ってるぜ!」

階段を降りていく音。

戌亥「言霊⋯呪いへの理解か⋯。」


戌亥の身に宿る異能。


鬼の籠手と、白炎。

戌亥(白炎は島の憎しみ、絶望、、、燃やし断罪したいという逆恨みから生まれた呪い)


戌亥(鬼の籠手は⋯犬童と初めて会ったとき、、、あまり思い出したくもないが最初は犬童にかかる呪いだった。

それを俺が引き継いだ⋯。)


戌亥の持つ呪いは自身から生まれたものではないということに、改めて気づく戌亥。


戌亥(俺は他人の呪いを使ってる、、そもそも呪いが効かないっていうのも、俺が式神だからなのか?)


戌亥は深く息を吸って、指先から小さく白炎を出した。

戌亥(呪いのコントロールか⋯。)


指先の炎を浮かしたり沈めたり、くるくると指の周りを回す。


すると下の階から去の大きな声が聞こえた。

去「おーーーい!!戌亥!!

いつまでかかってんだ!

さっさと来いよ!!

モモが酒呑みやがって、お前も相手しろーー!」


戌亥「はいはーい!」

戌亥は白炎をしまい、あえてゆっくりと階段を降りていった。



---


雪の町の酒場は、外の静けさが嘘みたいに騒がしかった。


薪のはぜる音。

笑い声。

酒を注ぐ音。


壁には古い写真がいくつも貼られている。

雪合戦の集合写真。

その隣には、色あせた写真――軍服姿の若者たち。

【終戦記念 雪祭り 初回開催】

という手書きの札。


戌亥は、その写真から目を逸らし、席に着いた。

店主「あいよ!」

目の前に、大きなグラスと並々と入った酒。

戌亥「まだ頼んでないんだけど⋯モモ「頼んどいたさ!!戌亥も飲むさ!!」

戌亥は、なんとも言えない気持ちで杯を持ち上げた。


モモはすでに上機嫌だった。

モモ「果実酒おかわりさ!」

店主「はいはい、お嬢ちゃんはよく飲むねぇ」

去「ちなみにコイツ何歳なんだ⋯?」


モモ「乙女の年齢を聞くとは!無礼者め!」

ゲシゲシと両の手で去の肩を叩くモモ

去「あーっ、うぜえな!」

モモを止めようと、肩で押し返す去

モモが押し返された瞬間

去「んぁぁ!ァ゙ダダダ!」

激しい頭痛に襲われる去


モモ「モモに攻撃したからさ!」

去「攻撃じゃねえだろ!」

戌亥「厄介なことに判定ガバガバなんだよね⋯。」

モモ「やぁーい!」


酒場で一番騒がしいのは、僕らかもしれないと

戌亥は笑いながらため息を吐いた。



---


落ち着いた去は串焼きを片手に、豪快にかじっている。

去「……この町の飯は味が濃いぃな。」

モモ「それは寒いからお酒を飲むさ!!去は箸を持つのが下手さね〜」

去「うるせえなァ、普通に握ると割れちまうんだよ!」

モモ「確かにこの肉はうまいさ!」


戌亥「話通じてるのか⋯?」


戌亥が苦笑した、そのとき。

「おうおう!

若いのが三人も揃って、ずいぶん楽しそうじゃねぇか!」


やけに通る、陽気な声。

振り向くと、

店の入口に――

にこにこ笑うおじさんがいた。


厚手のコート。

少しの無精ひげ。

目元に深い笑い皺。


左脚をかばうような立ち方だが、それを隠そうともしていない。

男「いやぁ〜、雪の町はいいねぇ! 寒い!うまい!酒が進むだろう!」


勝手に隣の席に腰を下ろす。

去「……誰だァオッサン?」

男「おっと、失礼!」

男は大げさに頭を下げた。


男「俺はトラと呼ばれている!

ただの流れ者で、酒好きで、ちょいと昔に怪我しただけのおっさんさ!」


戌亥は、一瞬だけ警戒する。

戌亥「…寅…?」


寅はそれに気づいたのか、すぐに笑った。

寅「あぁ、安心しな。 もう“特異対策局”の人間じゃないぞ」


去「…特異対策局だと…?」

寅「おっと、そっちの兄ちゃんも警戒心バリバリだねぇ。

局は君のことも"追っていた"からなあ。

⋯だが安心しな!もう局は無いんだ!」


モモ「おじさん、うるさいさねぇ〜」

寅「ははは!手厳しいねぇ!」

寅は酒を一口飲んで、ふぅと息をつく。


寅「しかしなぁ……  局がなくなるたぁ、思わなかったねぇ」


戌亥の手が、わずかに止まる。

寅「俺の相棒もよ、局が無くなってからふっと居なくなっちまってよ。

俺は怪我で長いこと療養してたから、治って現場復帰かと思ったらこれよ!」


寅「世知辛いねぇ」

戌亥「…怪我…トラさん⋯」

寅「ん?」

戌亥「!もしかして根津さんの……」

寅「ああ!」


ぱっと顔が明るくなる。


寅「そうだよ!乙班で一緒だったんだよ!

口はちょいと無愛想だが、根は優しくてなぁ。」


寅は、からりと笑う。

寅「俺は今は“フリーの怪異探偵”さ!

依頼は来ねぇ!金もねぇ!

だが呪いに困ってる人は放っとけねぇ!」


モモ「ヒーローさね!」

寅「おっ、分かってるねぇお嬢ちゃん!」


去「……ただの厄介事好きだろ」 寅「ははは!否定はしねぇ!

呪いや呪詛師の話があればどこにだって行くよ俺ぁ!」

一気に場の空気が緩む。


戌亥も、少しだけ肩の力を抜いた。

しばしの団欒が戌亥たちを包んだ。


去は少し声を落としながら問う。

去「で、寅さんや。アンタがここに来てるってこたぁ、この町でなんかあんのか?」

寅は酒を一口含み、答える

寅「この雪祭り。明日の""雪合戦"が本番だが……」


寅「その景品目当てに、呪詛師が来るというタレコミがあったんだ。」


寅は、冗談めかした調子のまま言う。

寅「せっかくの雪合戦を、血生臭くさせるわけにはいかねえ。」


モモ「それは許さんさ!」

去「……だから俺らに声かけたってわけか」

寅「ハハハ!そういうこった!」


寅は、戌亥をまっすぐ見る。

寅「頼む。協力してくれねぇか」

寅「若い力が必要なんだ」

戌亥は、少し考え――モモと去を見て頷いた。


戌亥「……分かりました」

寅「ありがてえ!」


寅は、嬉しそうに杯を掲げた。

寅「じゃあ今夜は前祝いだ!  明日は雪玉投げて、呪いも投げ返すぞ!」


モモ「うまい!去!座布団1枚さ!」

去「……なんでそうなるんだ」

酒場に、笑い声が響く。

外では、雪が静かに降り続けていた。


そして――

新しい“争い”が、白い雪の下で形を成し始めていた。

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