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Partners 〜戌亥隼人の奇怪譚〜  作者: 土ノ子ウナム
第四章 二兎を追う者は一兎をも得ず
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第2節 去先生の呪術講座1-1

山道を抜ける頃には、空気が少しだけ柔らいでいた。


去が先を歩き、 戌亥がその後ろ、 モモはというと、二人の間をちょろちょろしている。


モモ「いやぁ、家来が増えるのは良いことさ!」

去「増えてねぇ。

勝手に数えてんじゃねぇ⋯と思う。」


戌亥「否定の仕方が弱いよ、もう。」

去「お前も分かるだろ。

どこからが逆らい判定になるんだコレ⋯」

二人を見ながらモモはケタケタと笑っている。


戌亥もつられて笑いながら、ふと思い出したように言った。


戌亥「⋯そういえば去。」

去「んぁ?」

戌亥「お前、言霊がどうとか、印がどうとか言ってたよな。

あれ、どういうことなんだ?」


去「あー、まぁそうだな。

別に隠すようなことでもないしな。」


去は少し歩くペースを下げ、戌亥の方へ振り返りながら話す。


去「いいか。 まず大前提から話すぞ」

モモ「あっ!蝶々が飛んでるさ!」


◆ 呪いと異能の基礎

去「これはお前も知ってると思うが、呪いも祈りも、元は心の力だ」

戌亥「心……感情のことだよな」

去「まぁ平たく言えばそうだ」

去「怒りや憎しみ、恐怖、執着⋯」


去「そういう“負の感情”から生まれるのが――呪い」

戌亥は白炎に包まれながら絶叫する島を思い出す。


去「逆に、 願い、希望、誰かを想う気持ち⋯」


去「それが強くなれば――祈りと呼ばれる力になる。」


モモ「ふむふむ。つまり、モモの力は祈りさね。」

去「……どこがだオイ」ボソッ


戌亥は真剣な眼差しで聞いている。


去「そもそも俺達人間が使う異能ってのは、おおよそそのどっちかが基になって、身体や性質として根付いたもんだ」


去「呪い由来の異能もあれば、 祈り由来の異能もある」


戌亥(……鬼の手は、どっちなんだ)


去は続ける。


去「呪いには大きく二つある」

去「呪術型。そして、被呪型」

去は指を二本立てた。


■ 呪術型

去「呪術型ってのは、 負の感情を“誰か”や“何か”に向けてぶつけるタイプだ」


去「そもそも人を呪うなんて、本来抑えられないような強い負の感情から始まったもんだ。

上手くコントロールなんて出来やしねえ。」


去「だからこそ、コントロールするために言霊(技名)を使う」

戌亥「……具体化するためってことか?」


去「まぁ〜⋯そうだな。」

去「言葉には力が宿る。冷えろと言いながら燃やすことは難しい」


去「燃やしたいなら、『燃えろ』と言う方が形になる。

なんとなく分かるだろ?」

戌亥「なるほど。」


モモ「萌えろ!萌えろ!」グヌヌ

戌亥「⋯。」


去「そんで、印を結ぶってのは、更にその補助みてえなもんだ。」


去「俺みたいに手や体を使うやつもいれば、紙に呪印を書いたり、札に呪詛を書いたり⋯。

印って言っても、これは多種多様だ。」


去「そもそも正解なんてねえ。たまたま見つかるもんもあれば、呪詛師一族が代々受け継ぐ秘伝の呪印ってのもある。」


戌亥「印を結ぶことで、呪いを安定させたり、威力を引き上げたりするってことか。」


去「ま、印の効果はほんとにそれぞれだ。俺の【如意亡】も別に印を結ばなくても発動はする。

だが、射程を長く、よりまっすぐに飛ばすためにいろいろ試した結果があの印だ。」


モモ「なんか某ヒーローのスペシ◯ム光線みたいだっ去「それ以上言うな。」


戌亥「なるほど。言霊で呪いの力をコントロールしつつ、印で安定、強化する⋯」


モモ「じゃぁ、名前が長いほど強いさ?」

去「そうとも限らねえ。

それに、戦闘中に長々と話してたら言い終わる前にやられちまう。

ま、それもまた『呪詛』として紡がれていくようなもんだ。」


■ 被呪型

去「そんでもう一つが――被呪型だ」

去「これは“すでに呪われてる”やつが、 その代償を払いながら力を使う」

去「俺みたいにな」


去は、自分の腕を見る。 さっきより少し細くなっている。


去「怪人の呪い」

去「常識外の力が出るが、、、制御できねえ。」


去「それに使うたびに身体に無理がかかる。

痛み、疲労、寿命――何かしら持っていかれるだろうな。」


去「まぁ他にも呪具を使うやつや、狐の一族みてえな固有の異能を持つ奴らもいる。」


去「全部を知るなんてのはむりだ。」


◆ 戌亥への忠告

去「で、だ」

去は戌亥を指さす。


去「俺からすれば、お前は今、 力を使いこなせてはない。」

戌亥「え?」


去「あんな無理やり、、、

よく出来てるとは思うが、、ただ呪いの力を暴発させてるだけだ。

燃費も悪いし、、、何よりあんな戦い方してたら周りにいる俺たちが危ねえ。」


戌亥「……じゃあ僕はどうすれば?」


去は少し考え、 それからぶっきらぼうに言った。

去「⋯それは自分で考えるもんだ。」


去は頭をかきながらまたペースを戻して前を進む。


去「意地悪ってわけじゃねえぜ?俺にはお前の負の感情も、どんな力として扱いたいのかも、なんも理解してやることは出来ねえからよ。」


去「それに、その呪い自身のこともな。」

三人は進む。北へ。 黒羊家へ。


戌亥「呪い自身への⋯理解か。」

戌亥の胸の中で、 まだ名前のない呪いが、静かにうずいていた。

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