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Partners 〜戌亥隼人の奇怪譚〜  作者: 土ノ子ウナム
第四章 二兎を追う者は一兎をも得ず
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第1節 お供と北上珍道中

◆ 第四章

第1節「お供と北上珍道中」

1-1

北へ向かう街道は、思ったよりも賑やかだった。

馬車。 徒歩。 呪具を売る露店。 胡散臭い祈り札を配る老人まで居る。


戌亥 隼人は、荷物を背負いながらその流れに混じって歩いていた。


隣では――

モモが、やたら元気だった。


モモ「なぁ戌亥!聞いたさ聞いたさ! この辺り、最近“サル”って名乗る男が暴れてるらしいさ!」


戌亥「……また変な話を拾ってきたなぁ。」

モモ「失敬な!これは人助けの匂いがするさ!」

戌亥「人助けって言葉、最近お前の中で随分軽くなってないか?

そう言えばなんでも僕が乗ると思ったら大間違いだぞ。」

モモ「気のせいさ!」


胸を張るが、ない胸はやはり張られない。


戌亥はため息をつく。

戌亥(……特異対策局が潰れてから、妙な噂が増えたな)


呪い。 異能。 怪物。

表に出てきてはいけなかったものが、 堰を切ったように街道を流れている。


モモ「それでな!その去って男、 裏の山に勝手に住み着いて、街の人を追い返してるらしいさ!」


戌亥「追い返してる?」

モモ「そう! 中には女性を襲ったとか、走ってる車を握りつぶしたとか!

皆、怖がってるさ!」


戌亥は、少しだけ眉をひそめた。

戌亥(……“暴れる”男か⋯。)


モモは戌亥の表情を見て、にやりと笑う。

モモ「よし!決まりさ! 行くぞ戌亥!」

戌亥「……行くって?」

モモ「その山に! 去って男をとっ捕まえるんだ!人助けさ!」


戌亥「⋯なんか楽しんでないか?」

モモ「ないさ!」

即答だった。


戌亥「……はいはい」

こうして戌亥は、 また一つ面倒ごとに足を向けることになった。


◆ 第四章

1-2 「サル

街の裏手。 人の手が入らなくなった山道を進むと、 空気が変わった。


静かすぎる。 鳥の声も、風の音も、どこか不自然なほど。


モモ「この辺りさ。静かだけど、人が生活している気配がする。 山に住んでるって話は本当みたいさね」


戌亥「……気をつけてーー」

その瞬間だった。


――ドンッ!!!!


地面が揺れ、 目の前の木が根元からへし折れた。

戌亥「ッ!」

頭上で奔る、影。


素早い人影が、木から木へと跳んでくる。


男「またオレを狙う大バカ者が来たのかぁ!?」


現れたのは、

ぼろぼろの服を着た大男。


だが、異様なのは体格だ。 大きい。

いや――大きさのバランスが、おかしい。

左腕と比べて右腕の筋肉が異様に太く大きい。更に呼吸に合わせて膨張している。


男「⋯テメェ呪詛師か。

良い"気"の練り方だ。

なかなかやり手みてえだな。」


戌亥「…お前がこの山に住み着いてるっていう、サルか?」


男は、鼻で笑った。

去「そうだ。 ここはオレの家だ。 出てけ、不法侵入者め」

戌亥「勝手に住み着いてるのは、そっちって聞いたんだけど⋯去「うるせぇ!!」


次の瞬間。

去の脚が地面を蹴り、 戌亥の視界から消えた。


――速い。

戌亥が振り向くより先に、 背後の木が砕け散る。


去「オレの家から出てけ!!」

戌亥「っ……!」

戌亥は腕を鬼の手に変え、去の拳を拳で受け止める。


ゴンッ!!


衝撃が、骨に響く。

戌亥(……重い。

いくら怪力でも、これは“普通”じゃない)

去「……!」

去の目が、一瞬だけ輝いた。


去「オレの手に触れて……全く壊れなかったものは初めてだ!」

どこか、嬉しそうに。


去は再び跳び、 今度は宙を舞いながら両手を振る。


風が、刃になる。

去「風サルまわし【空蝉】!」


突如鎌鼬のような風刃が、戌亥の皮膚を切り裂く。


戌亥は炎を纏い、狼の姿を模して駆ける。


戌亥「っ…鎌鼬か…!」

去「ほぉ!白い炎を纏ってら!

おもしろい技を使うなぁ! なんて技だ!?」


戌亥「……技名なんて無いよ。 必要なのか?」


去「なんて勿体ねェ……!」


去「テメェに呪術ってのを教えてやるよ!


そもそも呪いってのは想いの力!

そんで呪術ってのは、呪いに言葉の力【言霊】を込めるんだよ!」


去は飛び回りながら右手の指と左手の指と右手の指を交差させ、印を結び始める


去「更に印を結ぶ!

呪術の発動補助!対象に狙いをつけて呪術をより具体的に発現させる!」


去は両の手で摩訶不思議なポーズを決めて叫ぶ


去「如意亡ォ(にょいぼう)!!」


一瞬だけ吹き荒れていた風が止み

去の正面から一筋の光線が伸びる

戌亥の腹を尽き、そのまま押し込み何本もの木をなぎ倒しながら戌亥は吹き飛ばされる。


意識を失いかけた戌亥だが、すぐに立ち上がり、再度炎を纏う


お互いに空中でぶつかり合い、 木々を砕きながら山を荒らす。

二人は地面を離れ、枝を蹴り、空中で何度も位置を入れ替える。


そのとき


モモ「やめんかーーーっ!!!」

甲高い声が、山に響いた。


去・戌亥「!?」

二人は思わず顔を見合わせる。

モモ「いきなり暴れ出してさ! 戌亥もアンタも! 一旦落ち着け!別にぶっ殺しに来たってわけじゃないさ!」


去「……なにィ……?」


モモは腕を組む。

モモ「まず聞くさ! 街を襲ってるってのは本当か!?」


去は、少し黙ったあと、舌打ちした。

去「……襲ってはねぇ。 だが、ビビらせちまったのは事実だ」


去「オレは怪力の呪いを受けてる。 一見すると良い力だが、この怪力はコントロールできねぇ」


去「ドアを開けりゃ潰す。 飯を食おうとすりゃ机を吹っ飛ばす」


モモ「⋯机は吹っ飛ばんだろ⋯。」

戌亥(……吹っ飛ぶな。鬼の手が初めて発現したとき、僕も吹っ飛んだことある。)


モモ「女性を襲ったと聞いたぞ!」


去「⋯襲ってねえよ。

車に轢かれそうな女がいてな。 庇ったら……止めた車を木っ端微塵にしちまった。」


去「それから街の連中、怯えちまってよ。

もともと俺はちょっとしたお尋ね者ってこともあって、雇われた呪詛師やら聖職者ってやつが度々来るようになった。」


モモ「なら、なぜここに居座るさ?さっさと逃げれば良かったさ。」

去の視線が、山の奥を見る。

去「……弟たちを待ってる」


モモ「弟?」


去「前に特異対策局の奴が来た。

オレは捕まると思ったが、弟たちの居場所を知ってるって言いやがった」


去「それに、ここに連れてくるってな。」

戌亥「……特異対策局が?」

モモは、あっさり言った。


去「ぁあ。怪しい話だが、そもそも特異対策局の奴らから俺は賞金首として狙われてる。

だがソイツは俺を捕まえずに去っていった。

弟たちのアテもねえし、とりあえず待ってみてるってわけだ。」


戌亥「だけど⋯」


モモ「特異対策局は潰れたさ」


去「……ェ゙?」


モモ「ついこの前ニュースでやってたさ。

上層部の人たちも消息不明ってなってるし、多分ありゃ死んでるさ。」


去「な、なんだそりゃ⋯」


モモ「ただ待つより、探しに行くさ!

人探しのプロ、モモは知ってるさ!」


去「……」


モモは懐から、団子を取り出す。

モモ「まぁとりあえず食えさ! 飯もまともに食えねえだ山に籠ってるだで、腹、減ってるだろ!」


戌亥「……あっ、」


モモ「ほれ、あーん!」

去「な、なんだよ! 自分で食うわ!」

赤面しながら団子を奪いとり一口で頬張る去。


モモ「ニヤリ……さ」

戌亥「あーあ」


去「もぐ……ん?」

去の体が、淡く光り始める。

去「な、なんだぁ!?」


モモ「あーはっはっは! これでお前もモモの家来さ!」


去「はぁ!?なんだそれふざけんな!!」


モモ「安心しろさ! モモに攻撃しようとすると頭が痛くなって、 モモに逆らうとお腹を下すだけさ!」


去「それ最悪だろ!呪いじゃねえか!!」


モモ「いーからいーから!

とりあえずモモについてこいさ!

お前の弟たちも探してやるさ!」


去「だ、誰がてめぇみてえな詐欺師と⋯がぁ!」


グルルルルゥ

腹を抑えてへたりこむ去


戌亥「⋯諦めろ。

分かるよ、結構キツイよな。」


腹痛に耐えられず腹と尻を押さえる去

合わせてさっきまで肥大化していた腕も縮み

全体のサイズも少し小さくなる


モモ「なんだ!体のサイズを変えられるのか!?」


去「チィ……!今はそれどころじゃ⋯!」

顔を真っ赤にして唸る去。


モモ「なぁなぁ!なんで縮んだのさ?」


去「ぐぅぅ⋯そうだよ!これも呪⋯術だ!変⋯幻⋯自在ってゆー、、、

そんなことよりこれ止めろ!!!

お前の家来になるから!!ついていくから!!!」


モモ「それでよいのだ!」

無い胸を張る少女。


こうして――


また一人、モモに家来が増えた。

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