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治癒師の憂鬱  作者: 甘木
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0.プロローグ

(ここは何処だ…)

隣にいる女の匂いは妻のものだ。微かな香油の香りが心を落ち着かせる。

(あぁ、家に戻っていたのか。)


どうやって帰ったのだろう。国王の病気を治療するため王城にいたはずだ。

俺の治癒魔法は他の連中とは違い、病気も治すことができる。罹患して3日以内なら病気や中毒を無かったことにできるのだ。この能力を持つ者は他に誰もいない。他に可能な人物がいない以上、王の治療は自分に託されたのだ。


(動けない。目もよく見えない)

そうか、気を失うような魔力切れを起こしたのか。よく死ななかったな。多分2~3日も寝れば回復するだろう。いつもやっている治療なら一人数分程度なのだが、王は長患いだったからな。覚えているだけで2時間は続けたから魔力も切れる。流石に王相手に今日は疲れたからおしまいとは言えない。限界までやったのだろう。


数日寝るとなると寝ているうちに子供が生まれてしまうかもしれないが、まあ起きていたところで今の俺が出来ることはほとんどない。万一の出産事故に備えることはできるかもしれないが、俺の治癒魔法は特殊で、出産時の治療はどうなるのか、俺にもわからない。それに今の魔力状況では多分役に立たない。


「貴方のお父様は命を掛けて王様を病気から救ったのよ」

ん?何を言っている…って妻か。子供は生まれていたのか。

「まだわからないだろうけど、お父様の功績で、貴方が成人するまで、年5枚大金貨が貰えるの。」

5枚の大金貨か。意外とけちだね。いや、子供が成人するまで毎年となるとそうでもないな。王の命の値段ってことだからかな。もう少し寝るか…


腹が減って目が覚める。声を出そうとしたが、上手くできずにあうあうしていると、妻がいきなり胸を押し付けてきた。

(ちょっと待てよ、寝起きでいきなりそんなことを)

いきなり乳首を銜えさせられたとき、(でかいな)と感じ、ようやく自分のサイズを実感する。俺が俺ではないようだ。やたら小さい。


乳を飲みながら考える。有り得ない現状だが、今の自分は乳児である。そして、妻が俺に乳を飲ませている。妻は俺が王城に召し出されたとき、いつ生まれてもおかしくない状況だった。と、言うことは俺は死に、その間に生まれた子供に乗り移った。ということか。そして死んでまで王の命を救った代償としてその子の生活費を下賜することになったということか。

(うーん、死んだのか。でも生きてるな。じゃあ考えるのは後でいいか、もう少し寝よう)


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