狙撃の名手2
首都アイネスの北部の町はずれ
警備隊の駐屯所の横にケーンたちのラボはある。
見慣れた扉をくぐり、受付の女性に軽く手を挙げ挨拶をする。
調査室の入り口の小さな石板に魔法石入りの身分証を掲げ青く淡く光るのを確認し扉を開ける。
デスクの横で立っていた女性がケーンに話しかける。
「チーフ、先に来た警備隊から伝言を受け取りました。指示されたものはそろっています。」
「よぅしホリー、地図を広げよう。現場は中央広場から南に抜ける大通りの商店街だ。被害者はこの3か所。遺体の向きはすべて南向きに倒れていた。」
ケーンの説明をホリーと呼ばれた女性が地図に情報を書き込んでいく。
「3名とも南向きということは、中央広場のほうから攻撃されたということね。でも、通りには人がたくさんいたはず。遺体同士は離れているから射線が通らないわ。」
「ケリー、地図は平面だが、実際は立体だ。中央広場には何がある?」
ホリーが中央広場の真ん中、まさに地図の中心を見る。
「時計塔?じゃあ、時計塔の上から3人の頭を撃ちぬいたってこと?すごい精度だわ。」
「素人じゃない。プロの仕業だ。」
ケーンが時計を見ながら続ける。
「ホリー、もうすぐティムが裁判所に書類を提出し終わって帰ってくるはずだ。二人で時計塔を調べてくれ。私は魔法省から戻ってくるダルを待って容疑者を絞る。」
「わかった。何かわかったら警備隊を連絡に走らせるわ。」
ホリーはロッカーから捜査キットを取り出し、受付へ向かう。
入口の横の柱にもたれかかりながら考えを巡らせる。
(被害者の3人には共通点が無いように感じるわ。無差別に選んだのかしら。)
(快楽殺人?、、、だったらなぜ3人でやめたのかしら。)
(、、、何かを試している?)
ぼんやりとした思考が徐々にまとまっていく。
ふいに入口の扉が開いた。さえない顔の男が入ってくる。
「すまない、遅くなった。事件があったって?」
「ええティム、チーフがあなたと時計塔を調べるようにって。いきましょ。詳細は歩きながら話すわ。高いところは平気?」
「あぁ、眺めがいいところは大好きだ。犯人が見た景色を見に行こう。」
扉を出てすぐの場所からも中央広場の大きな時計塔が見えた。
二人は話しながら中央広場の時計塔へ向かって歩き出す。