暗い夜道
心霊写真チェックは二十二時頃まで続き、映画用に持ち寄っていた食料も粗方つまみ尽くしてしまっていた。小休憩としてじゃんけんに負けたアカリとサナエの両名が近くのコンビニへお菓子を買い足しに出ている。
「ガチなのは少なかったけど、今日も豊作でしたな」
「ふふ、窓枠の中にペカチュウの顔がでっかく貼ってあったの良かった。ああいうの大好き」
「パッと見普通に怖かったよね。初代のだし、ハイライト消されてたし」
「そういえばサナエくん、前にモケモンカードたくさん集めてたよね。もう店舗大会とか行ってないの?」
「あー、そうだね。ボルダリング始めてから一切やってないかな」
「まるで今もボルダリングしてるみたい。二週間、だったっけ?」
「十日で辞めたなー」
「シューズとか色々買ってたのにね」
「しょうがないでしょ、飽きちゃったっていうか、なんか違うなーってなっちゃったんだもん。アカリちゃんだって色々手ぇ出してる癖に」
「私はそんなスッパリ捨てたりとかできないよ。ソシャゲも読書も編集も、ちゃんと好きだよ」
コンビニに着いた二人は、めぼしいお菓子と一・五リットルのお茶を籠に入れていく。
スイーツのコーナーについつい目を奪われつつも、二人で分けられるアイスを一つだけ追加で買うに留めて会計を済ませた。
折り返しの帰り道、アカリは買ったばかりのアイスを二つに割ってサナエに渡した。
「はい、半分」
「ちょっとさっきの話の続きみたいなやつなんだけどさ、アカリちゃんって将来どうするとか、もう決めてたりするの?ボクたち何だかんだもう二年だし」
「んー、無難に会社員?結婚願望とかは無いし、普通に大学行って、女性でもキャリア積める仕事探すと思う。書士さんとかになって事務所立ち上げるのも面白そうかなーとか」
「へー、なんかすごいね。そんな考えてるんだ」
「別に今なにか決めてるとかそんなレベルじゃ全然ないよ。サナエくんはご両親お医者さんなんだし、医療系は興味ないの?」
「うちは放任主義だから親から強制とかないし、ボク自身もそんな興味ないし……。なんか、さ。何がやりたいのかわかんないんだよね。大抵のことは面白いと思うし楽しめるけど、こう、芯を捉えてないっていうか……。ボクって何がしたいんだろうなーって」
「ちょっと話が逸れちゃうけど、私も昔、私ってなんなんだろーというか、ちょっとズレてるかもーとか悩んだことがあって、でも結局その答えが見つかるまで丸一年くらいかかったけど、そんなこともあるかーって、びっくりするくらいふわっと着地したんだよね。当時は死にたくなるくらい深刻に考えてたのに。結局答えは未来にしかないよ」
「うーん……。まぁ考えても仕方ない気は薄々してたけど、タイムリミットがあるでしょ?だからどうしようって」
「気にしなくていいんじゃないかな。私も書士になりたいとかさっき言ったけど、ケーキ屋さんになりたくなるかもしれないし」
「はは、なにそれ。でもそんなもんか。なるようになるみたいな?」
「そうそう」
じわりと溶けかけのアイスを口に飲み込みながら、待っている二人の元へ夜道を歩いていく。