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おやすみの館

作者: 夙多史

場所:旅館「おやすみの館」

ボケ:女将

ツッコミ:田中

田中「ようやくまとまった休暇取れたから一人旅でもしようかな。よし、ちょっと奮発して山奥の豪華な旅館を予約してみたぞ」


田中、吊り橋を渡った先にある旅館へ向かう。


田中「すみません、予約していた田中です」


女将「おやすみの館へようこそ。私は当旅館の女将を務めさせていただいております」


田中「あの、まだ少し早いんですけど、チェックインってもうできますか?」


女将「おやすみの館へようこそ。私は当旅館の女将を務めさせていただいております」


田中「え? あの、それはさっき聞いたんですけど」


女将「おやすみの館へようこそ。私は当旅館の女将を務めさせていただいております」


田中「いやあんた村人Aかなんかなの!? あ、誰か来た」


旅館の奥からもう一人の女将が駆け寄ってくる。


女将「申し訳ありませんお客様!」


田中「ええ!? 女将さんが二人!?」


女将「ああ、それは私がフロントを離れている時に置くNPC女将です」


田中「NPC女将!? ロボットってこと!? そんなもの作る金があるなら人雇ってー!?」


女将「お客様、そんなに叫ばれては」


田中「あ、すみません、ご迷惑でしたね」


女将「ナマハゲが来ます」


田中「どういうこと!?」


重低音『わりぃごはいねぇがぁ?』


女将「ほら」


田中「ほら、じゃなくて!? え? ここってそんな危なそうなナマモノが徘徊してるんですか?」


女将「ナマモノじゃなくてナマハゲです」


田中「そこはなんでもいいよ!?」

 

女将「改めましてお客様、おやすみの館へようこそいらっしゃいました。本日ご予約の……えーと、山田様?」


田中「田中です」


女将「申し訳ございません。お顔が山田っぽくてつい」


田中「女将さんの知り合いに俺に似てる山田くんがいるの?」


女将「今度会ったらぶち殺してやろうと常々思っております」


田中「山田くん一体なにしたの!?」


女将「危うく人違いでお客様を永遠におやすみさせるところでした。今後はお気をつけてくださいね」


田中「気をつけるのはあんただよ!? んでどこから取り出したのその包丁は!?」


女将「あ、申し訳ございません。さっきまで厨房でお食事の準備をしていたもので」


田中「シェフ雇え」


女将「女将兼料理長なので」


田中「まあもういいや。それで、チェックインはできるんですか?」


女将「はい、問題ありません。それではお部屋にご案内します」


田中「お願いします」


田中、女将に連れられて旅館の奥へ。


女将「お客様、当旅館は――あっ、山田このクソ野郎!!」


田中「うわっ危ない!?」


田中、女将の振り回した包丁を避ける。


女将「申し訳ございません、お客様。人違いでした」


田中「ちょっと目を離したら俺のこと忘れちゃうの!? 人違いじゃなくてもやめておこうね!?」


女将「以後、気をつけます。ところでお客様、当旅館は『静けさ』を売りにしております。お部屋の防音設備は完璧で、お客様も最高の環境でおやすみできると思いますよ」


田中「なるほど、だからうるさくするとナマハゲが来るんですね」


女将「着きました。ここがお客様が当旅館でお過ごしになられる『喧騒の間』でございます」


田中「名前が超うるさそう!?」


重低音『わりぃごはいねぇがぁ?』


田中「すみません静かにします」


女将「では当旅館のスケジュールをご説明させていただきます。十八時にお部屋にてお夕食。売店は二十時まで開いております。二十一時に遊技場が閉場、二十二時に唯一の吊り橋が落ち、二十三時に温泉が閉まるので入浴はお早めにお願いしますね」


田中「待って今さらっと『吊り橋が落ちる』とか言わなかった!?」


女将「午前零時に喧騒の間殺人事け――え? そんなこと言いました?」


田中「もっとやべー内容が聞こえたー!? 『喧騒の間』ってここですよね!? あんたやっぱり俺を永遠におやすみさせるつもりだろ!?」


女将「いえ違います。犯人はナマハゲです」


田中「ナマハゲさんに罪を被せないでー!? よくミステリーにある見立て殺人か!?」


女将「私にはその頃フロントにいるという完璧なアリバイがあるはずなので」


田中「それNPC女将でしょー!?」


女将「はっはっは、そんなわけないじゃないですか。落ち着いてください山田様」


田中「田中です!?」


ポロリと女将の袖からレコーダーが落ちる。


女将「申し訳ございません、携帯レコーダーを落としてしまいました」


重低音『わりぃごはいねぇがぁ?』


田中「ナマハゲのトリック見つけてもうたー!? これあかんやつや!? このまま旅館に泊まったら女将さんに山田くんと間違えられて殺される予感しかしなーい!?」


女将「お客様、どうか落ち着いてください」


田中「くそっ、もうこんなところにいられるか! 俺は帰るぞ!」


女将「あ、お客様!」


田中「もう決めたんだ! 引き止めたって無駄だからな!」


女将「キャンセル料五百万円になります」


田中「なんなのこの旅館!? もうおやすみをおやすみしたーい!?」


~END~

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんなんだ なんなんなんだ なんなんだ KARANUKI。心の俳句。 いや、こんな旅館いきとうない。 キャンセル料をぼりすぎている。許されないことだ。
[一言] 山田と田中を間違えたり、ナマハゲや女将のNPCなど、ネタが多彩で面白かったです。
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