いつきとゆら
「にしても桜子、なあ…」
ゆらは一人で公園のベンチに座り、つぶやく。
「んー」
赤井桜子は人間ではない。
だが、それはどうでもいいことだ。
そこへ、誰か歩いてくる。
「おっ、いつきか」
いつきは一人で公園へと来ていた。
目を丸くする。
ゆらはにやりとする。
「元気か?力なし」
嫌みだ。
ゆらはいつきをどこか馬鹿にしていると思う。
「あっ、ゆらさん」
いつきは気づきつつ何も言い返さない。
「力なしのくせに桜子を見てるんだろう?」
「たまに、です…いざというときとか、私は何もできないので…」
「そうか、なあ、いつき」
「はい」
「桜子をどう思う?」
いつきは素直に答える。
「きれいな人です」
「きれいな、ひと、ねえ…」
「ゆらさんは桜子さんが苦手…ですか?」
「苦手だと?それはない」
「そうなんですか…?」
ゆらはどこか笑う。
「桜子は悪いやつじゃない、命令だから仕方なくしてるんだ」
「そうですか…」
「ああ、好きになんて生きれるもんじゃないからな」
「…」
ゆらはどこか目を細める。
「どこかしらには場所が必要でそこで生きていかなければならない」
いつきは黙って聞く。
「わかるだろ?そうじゃないと生きてけないんだ」
いつきはうなずくだけする。
「桜子のことや私のすることは全て自分がこの世界に居場所がありなくさないためにしてるんだ」
「…」
「まあ、他にも理由はあるが」
ゆらは続ける。
「桜子も私にとっては自分の居場所をなくさないためだけの…ものだ」
「でも、」
いつきは声を出す。
「あなたは桜子さんのとこも行ってるんですよね?えっと、兄が言ってました」
いつきはまっすぐにゆらを見る。
「それは、しなくていいことのはずなのに、しているからゆらさんはえっと、面倒見のいい方だって」
「そんなこといってるのか?あいつは」
「どうして、しなくていいことをしてるんですか?」
ゆらは肩を落とす。
「できることはしたいだけだ」
「?」
ゆらは立ち上がると行ってしまう。
いつきは後ろ姿を見つめる。
ゆらは右腕をあげる。
「力なし、またな」
「あっ!はい!また…!」
いつきは急いで答えた。