いつきとかいと
あるアパート
いつきは、洗い物が終わり、本を読んでいた。
かいとはテレビを見ながら聞く。
「いつき、何読んでるんだ?」
「小説」
「何の小説?」
「んーと、戦う系だよ」
「戦う系?」
「うん!」
かいとは何の本かわかり、いう。
「おもしろいよな。主人公が強いんだよな!いいよな、で、女子がかわいいんだよな」
いつきが答える。
「そう!女の子がかわいいの!とにかく女の子がかわいいの!いいよね!」
「かわいいよな、わかるぜ!」
「そう!もう!いいよね!強い女の子!憧れるんだー。かわいくてかっこいい!」
いつきは楽しげに話す。
普段あまり話さないいつきは、この話題はとてもしゃべる。
しゃべるしゃべる。
「兄さんは誰がタイプ!?私はね!黒髪の女の子!強くて、強くて!あーいいなあ!銀色の髪の女の子はね!本当は怖がりなのに立ち向かう所がすてき!全員がもう好きで好きで、大好きすぎて!あーもう、かわいいなあ」
「俺は…」
いつきが楽しそうなのでかいともうれしくなった。
夜中、かいとは目が覚める。
二人に伝えようと思う。
そもそも、誰を優先にとかではないこと。
だが、なぜか伝えるのが不安を感じる。
そもそもかいとは思う。
_何だか主人公みたいなことしてるなと
_自分はすみっこの一人でしかないのに
_偉そうに。なんだかそう感じる
そこへ、扉が開いた。
いつきである。
「兄さん起きてる?」
「いつき、どうしたんだ?」
いつきはかいとの隣へと来る。
「なんか…変な気持ちで…不安みたいな、怖いみたいな」
「大丈夫か?」
「…うん」
かいとは小さくいう。
「不安なんてなくなればいいのにな」
でもなくなることはない。
そういうものだ。
一生なくらならない。
どれだけその時楽しくても。
笑っていても。
不安にはなる。
いつきもつぶやく。
「不安なんてなければいいのに」
かいとはそっと、いつきの頭に手を置く。
なでるではなく、置いた。
いつきは温かいなと思った。
かいとはただそばにいようと思った。
_でも、桜子と陸に伝えたいから。
_俺がそうすると決めたなら
_偉そうでも
_やるんだ
_伝えるんだ
いつきは質問する。
「兄さん?どうかした?」
「いや、なんか…俺偉そうにしてるなって」
「うん、兄さんは偉そうにしてる」
「やっぱりか!?うわあ…嫌な奴だな」
いつきはにこっとする。
「ごめん、全然そんなことないよ。別に偉そうじゃないよ。でも、そうだな…んー、私の方が偉そうだよ」
「…そうか?いつきはいつも素直で丁寧だろ?」
「違うよ。私は自分のことがわからないから…そう見えるだけだよ」
「…そうなのか?」
「自分のことって本当よくわからない。自分のことなのに」
「俺もだぞ?」
かいとは人差し指を立てていう。
「あれだな。自分のことがわからなすぎて困る。だな」
いつきは笑う。
「うん、そうだね」
暗い夜だ。
夜は暗い。
でも。
温かさが。
光が。
_どこかでありますように_




