かいとのまわりの世界
「赤井桜子は壊れてないか?」
質問された彼は、屋上にいた。
そこは使われていない小学校である。
現在は壊されるではなく改築され、会社が仕事場として使っていたり、地域交流の場などに使われていた。
その三階の屋上にいた。
誰でも入っても危なくないように高い格子が囲んでいた。
「壊れてねーよ」
彼はすぐに答えた。
彼の前にいる彼女ははっきりという。
「他のやつが暴走した」
彼は目を開く。
「どうなった…んだ?」
「自分で自分を殺した」
「…他になんか方法はなかったのかよ!?」
彼は目の前の彼女の首元のえりを掴む。
「壊れたやつを、助けようとしなかったのか!?何かできることはなかったのかよ!?」
「そんなもの、ない」
「なんでだよ!?なんで…なんで…考えねぇんだよ!?考えようともしなかったのか!?」
彼の名前を明かそう。
彼は、かいとだ。
彼女の名前も明かそう。
彼女は、ゆらだ。
青色の髪をショートにした美人だ。
黒いスーツを着ている。
「ないといっている、離せ」
「だけど!考えようと努力すれば!何かは少しでも変えられるかもしれないだろ!?」
かいとは必死に叫ぶ。
ゆらはえりを掴む腕を右手で掴む。
かいとの足を自分の右足で横に蹴ると、かいとがバランスを失い、地面に体が落ちていき、地面にうつ伏せに体を倒した。
「方法なんてないからいっている」
「…っ…」
ゆらはかいとを見下ろす。
「とにかく、赤井桜子はお前が一番の安定なんだろう?知らんが」
「それはわかんねーけど…」
「壊れないよう、ちゃんと見ておけ、他のやつにも伝えておく、がこれはいわせろ」
ゆらはどこかいらいらとして眉をあげる。
「なんで!赤井桜子の見守のあいつは私と会うと攻撃してくるんだ!?」
「ああ、あいつは桜子が好きなんだろ?」
「はあ?なんで好きなんだ?」
「桜子はかわいいからな」
かいとは真面目な顔で言い放った。
ゆらは肩を落とし、顔に手をあてる。
やれやれ、という感じだ。
「私からいわせれば人間でもない彼女をどうして好むのかわからないな」
「人間じゃないとか関係ねーよ」
「関係ない、か、お前はそうでも本人は違うかもしれないぞ」
それをいわれると何もいえない。
「…」
「まあ、赤井桜子はまだ大丈夫なようだし、あいつもまあ、大丈夫…だろう」
ゆらは息をつくと、かいとの目を見る。
「暴走の時はわかっているな?」
かいとはわかってはいた。
けど、他の方法をさがす。
一つじゃないんだ。
一つしかないと思うから苦しすぎる。
仕方がないとしても。
かいとは前を向く。
「俺は、他の方法もさがしてる」
「そうか、勝手にしろ、だが」
ゆらは急に底冷えする目をする。
「命令通りに行動しろ」
「」
かいとは何も答えなかった。
ゆらは行ってしまう。
かいとは残され、体を起こすと、広い空と多くの建物の並ぶ風景を屋上から見た。
一人つぶやく。
「何ができることはしなかったのかだ、俺だって同じだろ、俺はその誰かを助けられなかった、なのに、ゆらさんにどなって…最低だな俺…
けど、見つけるんだ」
かいとは立ち上がる。
前を向く。
「他に方法は死ぬ気で探せば…見つかるんだ」
正直、そこまでしても見つからないこともある。
それでも、探すしかない。
それでも、自分で探すしかないんだ。