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6/2012

いつきと桜子

「お願いがあるの」


彼女はそういった。


「私のお願い聞いてほしいの」


彼女は、そう、いった。


だから何かは聞いてみた。


_お願い?って?


「私は、役立たず、だから」


彼女はまっすぐにいう。


「私は自分でいたくない」


_そんなこと、いわれても…


何かは困るが聞いてみる。


_どうして自分でいたくないの?


「弱いのは嫌なの、だから」


彼女はやはりまっすぐにいう。


「私になってほしい」


彼女は何かに自分を渡した。

何かは彼女となった。




ある日の帰り道。

いつきは桜子とともに歩いていた。

桜子は、いつきの兄のかいとと幼なじみである。


桜子は黒く長い髪がふわりと揺れる。

にこりと優しい表情でいつきにはなしかける。


「いつきちゃん、ありがとう」


いつきはぽわっと顔を赤くさせる。


「どうして急に!?私何もしてませんよ!?」


「一緒に帰ってくれてるから」


「そんな!兄じゃなくてすみません!」


「私うれしいのよ、とても、でも…一人でくらい帰れるのに…そうしたら、もっといつきちゃんたちはいつきちゃんたちの時間が使えるのに…ごめんなさい」


桜子は謝る必要のないというのに謝った。


「いえ!謝らなくていいんですよ!?」


いつきはさっきからあわてたはなしかたをしてる。

桜子はどこか目線を落として笑う。


「ごめんなさい…変なこと言って」


「いえ!桜子さんは優しいから…私桜子さんと帰るの好きですよ」


「…ありがとう…」


「いえ!」


いつきは桜子の家まで一緒に帰った。

桜子は大きな木造の屋敷へと入る前にいつきへ頭を下げる。


「ありがとう、いつきちゃん」


「いえ、私こそありがとうございます」


「…また明日」


「はい、また明日!」


桜子といつきは別れる。

桜子は木造の屋敷の方を向くと、そこへ入る。


「ただいま…」


小さくいうと、玄関に誰かがやってくる。


「お帰りなさい!」


明るく元気に桜子に何かが飛びついてきた。

そこには動物がいた。

かわいらしく、黒猫のような姿である。


「ほこ、ただいま」


その黒猫は宙を浮かんでいた。


「お帰りおかえりー!」


桜子は肩に乗る黒猫は放っといて長い廊下を進む。

ほこが聞いてみる。


「桜子、今日どうだった?」


「いつもと同じだったわ」


桜子は目を柔らかくさせうれしそうにいった。


「いつもと同じは幸せ?」


黒猫は質問する。

桜子は歩きながら答える。


「幸せよ、いつも通りって、本当に幸せ」


「どうして?」


「いつもと同じって普通ってことだと思うの、普通って壊れやすくて、でも壊れてほしくないもので…」


桜子はどこか切なげに言葉を続ける。


「なによりもずっと、できれば普通が続いてほしいの」


「続く?」


「ずっと、壊れないで永遠に」


「普通はある日いきなり壊れるものなの?」


黒猫はまだ質問してくる。


「うん、壊れやすいの」


「普通は悲しそう」


「どうして?」


「桜子は悲しそうな顔してるから、だから頭なでてあげる」


黒猫はよしよしと頭をなでた。

桜子はどこか目元を細めると、いう。


「ありがとう…ほこ」



桜子は廊下を進んだ。



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