表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/2091

かいとと桜子

かいとは、ゆらによばれた。

セツナの部屋は、本などが散らばっている。

かいとの隣には桜子がいる。

ゆらは目の前で話していく。


「夜の学校に何かいるらしい」


「…はい」


かいとは答える。


「調べてくるんだ」


「夜ですよ?学校とか入っていいんですか?」


「依頼してきたのは学校関係者、話せば入れる」


「俺たちの通う学校ですか?」


「中学校だ」


桜子が答える。


「中学…ですか?」


「ああ、調べてきてくれ、危険なら倒してきてくれ」



と、いうことで

夜の中学校内にいる。


「くら…」


かいとは懐中電灯を手にして、歩いていく。

桜子は暗いからか、さっきから何も言わない、が。

かいとの背中の服をつかんでいる。

こわいのだろう。


「桜子、大丈夫か?」


桜子はあわてていう。


「こ、こわくないから、暗いとか、慣れてるし!こ、こわくないの」


こわいらしい。

かいとは背中をつかまれているため、にこりとする。


「背中より、手握らね?」


「え?い、いい!手、汗かいてるし」


「気にしねーし、てか後ろつかまれてると、うまく動けない」


かいとは引っ張られていて動きずらそうだ。


「ご、ごめんね…!」


ぱっと手を離す。

かいとは、桜子の手にふれると、つなぐ。


「…………!」


桜子は何も言わずに顔を赤くする。


「というか、桜子は来なくてもよかったのに」


「それはやだ、だって、かいとくんて…強いから、なんていうんだろ、自分の弱音とかいわないし」


「え?弱音なんて、ものすごく言うし、うるさいぞ、俺、強くねーし」


「かいとくんは…じゃあ、強がる?から!」


「いやいや、そうか?」


「うん!」


かいとは困ったように笑うが、桜子と手をつなぎ、廊下を進んでいく。



屋上へ行く階段をのぼっていく。のぼると、屋上をのぞく。

懐中電灯の電気は消している。

何もいない。

かいとも桜子もしゃべらない。


暗い。

屋上は暗い。

夜だから暗い。


何もいない、のかと思った時、すうっと、白い陰が動いたような。


かいとは


(誰かいるのか?)


と思う。


桜子が手をぎゅっと握ってくる。

がたがたとふるえ、かいとの手を握るのが強くなる。

桜子も見たのだろう。


「俺、ちょっとでてみる」


「え…まって」


「少し、見てくるから、桜子は待っててくれ」


桜子はぎゅうと手を握る。

力が強い。

こわいのだろう。


でも、小さくいう。


「私も行く」


「え、でもこわがって…」


「こ、こわくないから、私も行く」


「わかった」


二人で屋上へ出てみる。

音のした方へ懐中電灯を向ける。


そこには少女が一人。

一人で座っている。

声をかける。


「何してるんだ?」


少女は答える。


「おにいさん、どうしたの?」


「いや、屋上に何かいるって聞いて」


少女は立ち上がる。


「ああ、それ私!ねえ!1年生の教室行こう」


「え、ああ」


少女の言うとおりにして、かいとと桜子はついて行く。


少女は質問する。


「おにいさんとおねーさん、こいびと同士?」


桜子が顔を赤くする。


「そ、そんな!違うの、私はかいとくん好きだけど」


「つきあってるわけないだろ!?」


声が重なった。


「えー、そうなの?じゃあ、どうして手つないでるのー?」


桜子ははっとする。


「ち、違うの、学校が暗いから!」


「そうなんだー」




1年生の教室につく。

かいとは電気をつける。

少女は教室に入ると、机の並ぶ場所の一番前から二番目の席に行く。


「ここ、私の席だったの」


「そうなのか?」


かいとは答える。


「あのね、楽しいことたくさんあったよ」


少女は楽しげにいう。

が。


「なのに、どうしてかな?」


少女は明らかに表情が変わる。


「どうしてかな?」


桜子が聞く。


「どうしたの?」


「私、無視されたの、友達だと思ってたのに」


「何もなかったの、急にだったの、よく分からないの」


「急にみんなさっと、行っちゃったの」


「…え」


「で、みんな笑顔で卒業していった」


少女は冷たい目をする。


「にくいの、ゆるせないの」


机ががたがたと揺れだす。

怒りのように。

椅子がいくつか浮かぶと桜子へと飛んでくる。

かいとは、桜子を抱きしめ、倒れる。

椅子はかいとの背中にぶつかる。


「かいとくん!」


「へーき…」


椅子はまだ飛んでくる。

桜子はかいとに守られるように倒れている。

桜子は赤い玉を三つ発生させると、椅子へと当てる。

椅子は形がなくなってしまう。


少女は机も浮かすと、桜子へと向ける。

桜子は、赤い玉で机を消せたものもあるが、当たらなかったものもあり、こっちへと向かってくる。

桜子は倒れるかいとの背中に重なり、守ろうとする。


そこで、少女ははっとする。

机がかたんと落ちる。

桜子は目を開けると目の前の少女は、


「ごめんなさい、あのね、あのね」


とても弱々しい声。

桜子は少女の目から涙が流れるのを見た。


「私を殺して」


「え…」


「このままだと、誰かを傷つける、いや、いや、いや…だから、殺して」


少女は涙をポタポタと落とす。


桜子はかいとが心配だが少女の元へと行く。


「ごめんね、かいとくん…私、あの子のとこ行くね…」


少女の前へと行く。

少女は泣いていた。

こどものように。

いや、こどもなのだ。


桜子は少女を抱きしめる。

が、透明からか抱くことはできない。


「おねーさん、私を殺して」


「うん……楽になって」


桜子は手の中で赤い光が輝く。

赤い光は少女の姿を消していく。

少女は小さく笑う。


「…あったかい」


さわれないはずなのに。

さわることなんてできないはずなのに。

抱きしめる手はふれられないのに。

なのに、少女はそう言った。


桜子は少女が消えていつまにか自分もひとすじ、涙がながれていたことに気づいた。


かいとは立ち上がると痛そうだ。


「いってえ…」


桜子は


「大丈夫!?かいとくん!」


「大丈夫だ!それより、あの子は」


「…消したの」


「そっか…じゃあ、あの子は何だったんだろうな」


後に、彼女は数年前にこの中学校で亡くなった生徒とわかる。

彼女は…。

桜子は何も言わない。

かいとはいう。


「一人でも…誰かがそばにいたら…ここにいた、かな」


それはわからないことだ。

わからないけれど、すでに起きたことは変えられない。

戻せない。

戻したくても。

かいとはいう。


「ゆらさんのとこ、行かないとだな」


「うん」


_きっと、時間が戻ればいいのにと思う誰かもどこかにいるんだろうな。_




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ