上の方と敬造
赤井家 屋敷内
広く、本棚の置かれた部屋に敬造がいた。
赤井敬造とは。
いつきとかいとの父の兄である。
敬造は机の上に水晶を置いている。
そこから、声がする。
「桜子はどうだい?」
敬造はっきりと答える。
「桜子は安定しています」
「そうか、それならいいね」
「はい」
声は静かにいう。
「かけらから人の形に分かれてしまうとは思わなかったよ、かなたはよけいなことをして」
「ですが、かなたくんはかいとくんのために…」
声は敬造の言葉を最後まで聞かずにいう。
「それで、もし、この場所が危険となる可能性を作るのは許せないことだよ、だからこの場所から追い出した」
「はい…」
「もしも桜子が暴走してたら…ただではすまなかった…」
「ですが、暴走はしていません」
「他国の少女は、暴走し、自分で自分の命を絶った」
声はどこか暗くいう。
「わるいもの…とはいえない存在だからね、できれば守りたいよ」
敬造は「はい」とうなずくと、質問をする。
「あの…かいとくんといつきちゃんたちは、ここへは戻ることはやはり、許さないんですよね」
「ああ、来ることはいいさ、住むことは許さないさー」
上の方は続ける。
「あっ、気になってさ二人やうづきにこの屋敷に戻りたい?って聞いたらさ戻らなくていいと言われたよ」
_上の方とかいと_
_会話_
_ある日の屋敷内 水晶での会話_
「屋敷に戻りたくはないか?」
かいとは困った顔で答える。
「戻らなくて、いいですね」
「赤井家としての役目はしてもらうのに、名字もなのらせてもらえないのにか?」
「あの家を出て、自分がどれほど甘いやつかわかった、きっと、あそこにいたら、俺はわがままでひどく甘いやつとして死んでたかもしれない」
「なんだその話、長くなるか?」
「はい、俺は大きい家に住んで、何も家族のことも見てこなかったと思う、でも、今は近くてさ、見えるようになったんだ…すこし、だけど」
「たまには帰りたいけど、戻ろうとは思わない」
かいとは続ける。
「今の自分の方が昔よりは…あー!まだまだ、ましじゃねーけど、でも今の方がいい」
「戻らせてやろうとは考えてないが、言ってみたがそう返されるとは思わなかった」
「俺はもっと、自分をきたえねーと、甘いやつのままだ」
_上の方といつき_
_会話_
_ある日の屋敷内 水晶での会話_
「かいとからはそう言われたが、お前は戻りたくないか?」
いつきは、静かに答える。
「…戻らなくてもいいです」
「お前もか?」
「…私は、仕方ないと思ってます」
「兄が憎いか?」
「…許せなかったときもあったかもしれません、でも、もう過去です」
「私は…今を生きてます」
「なんだ?希望のある笑い話でもしてくれるのか?」
「いえ!その、私は…どうせ、生きているだけで苦しい日々と思うので、どうでもいいんです」
「どうでもいい?」
「お金とか、将来はとても心配ですが、どうにもなりません、誰もたすけてくれないですし、私を守ってくれたのは家族だけです」
「私はお前達に金のことでは一切助けてないからな」
「…私は、そうですね、もうどうにもならないので…これから先もどうせ絶望で終わると思ってます、そんなものだと、今は思えることができました」
「なら戻れるとしても、もういいのか?」
「もう、過去のことです、忘れることはないですけど」
「忘れないか」
「忘れるは、ないですね」
いつきはまっすぐに前を向く。
「忘れません、忘れないで進みます」
_上の方とうづき_
_会話_
「妹と弟の言ってたことだ」
「いつき、かいと…会いたいぃ」
「ほぼ、他国で暮らすお前はどう思う?」
うづきは、めずらしくその時は自分の住む場所に帰ってきていた。
赤井家へと行き、桜子に屋敷にいれてもらい、水晶で勝手に会話をしていた。
赤井家に行くことはいいが、もう住むことは許されていないのだが。
「妹と弟がそう思うならいいと思うわ、私もたまーに、たまーにしか帰らないし」
「そうか?」
「ええ、私はほぼ、あっちにいるもの、決めるのはここにいる妹や弟、母だから」
「話を聞いておもしろかったよ」
「聞いただけ?」
「ああ」
「ふーん」
水晶はきらりと輝いた。




