色葉とかいとの話
色葉は笑う少女だ。
明るい少女。
かいとを好きな少女。
「色葉はどうして兄さんが好きなんだろう」
いつきは思う。
誰かを思う色葉はとても笑顔がまぶしい。
まぶしすぎて見たくないほどに、すてきだ。
でも、かわいくて、かわいくて
とても悲しくなるほどに。
「兄さん、か」
いつきの兄。かいとは、妹思い、誰にでも優しい。
優しい人は好きだ。でも、優しいと、誰にでも好かれる。けど、それは、いつきにとっては。
彼女にとっては。
自分にないものを持つ人。
嫌いで、嫌いで、仕方がない人。
「兄さんのことは嫌いだな」
いつきは兄が嫌いだ。
でも、優しさには助けられているから、本当に嫌いにはなれない。
「…」
その頃、かいとは公園にいた。
隣には色葉がいる。
「先輩!私は先輩が大好きです!」
「お、おう、そうなのか?」
「先輩は私好きですか!?」
かいとは即答する。
「好きだぞ」
色葉は顔を赤くする。
「えっ、本当に!?私も好きです!」
「仲間だからな」
色葉は口を開けたまま、いう。
「せんぱいぃ…ひどいです」
「え」
かいとは困ったように笑う。
「嫌いじゃないんだから好きっていうだろ」
「そうですけど!ひどいです!期待しました!」
「それは、悪かった…」
かいとは素直に謝るためそういうところが好かれるのかもしれない。
色葉は頬をふくらませる。
「もう!嫌いになれないです!」