表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/2097

いつきと有理架

リンゴーン、と。

高級そうなチャイムの音が響く。

そこは洋風の大きな屋敷だ。

屋敷のまわりや、庭には様々な色の花が多く、いきいきと咲いている。



扉が開くと、そこには執事服の男性がいた。

深い緑の短い髪。

きりっとした目は鋭く、初対面であれば、緊張する。


「おはようございます、いつき様」


「様はいらないです」


「有理架様に様をつけるようにと言われてるんです」


「そうなんですか」


「どうぞ中へ、有理架様が喜び_」



そこへ、ピンク色がぶわっと揺れた。


「ちょっと!いつきさん!またなんであなた来てるんですの!?」


彼女は花宮有理架。

金髪の右横にツインカールをしてピンクのミニドレス姿。

いつきははっきりという。


「強くなるためです」


「あなた最近私に叩かれたですわよね!?来る!?」


「いえ、前から来てたし…その通りです!私はできることしようとして、勝手です」


有理架は腕を組む。


「わ、わかっているならいいんですの」


深い緑の髪の男性はいう。


「有理架様にお友達がいてうれしいです」


「友達じゃないですわ」


「そうですか、有理架様は友達が…いないのですね」


緑の髪の男性はどこからかハンカチを手に持ち、目をふく。


「ここへと来るのは有理架様のお姉様とその他の方などはいますが、お友達が来ることはあまりないのに…いつき様はここへ何度も来ていたから…私もミレディ様も喜んでいたのに」


「優斗!ちょっと!私をさみしい奴みたいに言うなですわ!友達がいなくたって生きていけますわ!」


いつきはその光景が終わるのを待っていると、白色のエプロンに黒色のメイド服姿の女性が来る。

金色の髪を後ろの下辺りに団子になるようにまとめている。

彼女はミレディ。


「いつき様、すみません、あの二人は無視して行きましょう」


「え…いいんですか?」


「はい、優斗さんは有理架様で遊ぶところがあるので無視しましょう」


「はい、あの…いつきでいいです」


「いえ、いつき様とおよびします」


いつきは振り向く。

優斗は口元をにやにやとしているのを手で隠しながらいう。


「有理架様、いつき様が行ってしまいます」


「あんたが私を悲しい奴みたいに言うからでしょう!」


いつきは広い体育館につく。


「どうぞ、いつき様」


いつきはそこでまずは準備運動をしていく。

有理架までしていく。


「花宮さんもですか?」


有理架はむうとする。

眉をつり上げ、いう。


「有理架でいいですわ!」


「あ!そうでした、すみません」


「一応昔から知ってるのに、なんか他人みたいで嫌ですわ!」


「はい、有理架さん」




遠くから緑の髪の男性。

優斗はどこか優しげに笑う。

そこへミレディが声をかける。


「優斗さん、私たちは屋敷の掃除に行きましょう」


「わかりました」


「…うれしそうですね」


「うれしいですよ、有理架様がうれしそうですから」


ミレディは有理架の方を見る。

そっと小さく口元をほころばせる。


「私も…うれしいですね」


二人は体育館を出て行った。




いつきは体育館内を円をかくように走る。


体操着姿の有理架はその姿に一緒に走りながら一言。


「じゃあ、四周」


「はい!」


いつきは体育館内を走る。

基礎体力のために走るが大事らしく、いつきはしていく。


走り終わると、いつきは床に倒れた。


「は、走りました、つ、次…!」


有理架は体操着姿でいう。


「十分休憩ですわ」 


「で、でも…」


「休むのも大事なんですわ」


「…はい」


床から起き上がると息をしていく。


「疲れてるんですの?」


「つか、れてないんですか?」


「疲れてないですわ、全く」


「そうなりたいで…す」


そこへ、ミレディが来る。


「有理架様、狂花(きょうか)が咲きます」


「わかりましたわ、いつきさん、少し失礼します」


「…はい」


いつきはそこにいると、優斗がやってくる。

鋭い目の彼にいつきはびくっと肩を飛び上がらせる。


「いつき様、今日も見ていきますか?」


「…見たいです」


立ち上がると優斗の後をついて行く。

屋敷の中は、広い廊下や多くの扉がある。

ある扉に着くと、開く。

そこには、とても広い部屋があり、大きなガラスケースがある。

ガラスケース内は、一つだけ大きな木が生えている。

そこに、ピンクのミニドレス姿の有理架がいる。

地面から赤紫色の花が飛び出てくる。

その花はツルを伸ばし、有理架へとそのツルを刺そうとする。

地面をたっと走りツルをよけていく。

ツルは2本ほどで、よけた有理架の右足に絡みつく。それによって、地面へと、倒れる。


いつきはハラハラとする。


「有理架さん…!」


有理架は地面へと倒れてしまい、ツルは有理架の腕も掴み、空中につるす。


赤紫色の花は、地面から生えていて、四つの花弁の中央が口のようにぱかっと開く。


「有理架さん!?」


優斗はいう。


「あれで有理架様は倒されな_」



ばくんと花に食べられた。


「食べられましたよ!?」


「え?えっ!?え!?有理架様!?」


優斗は驚いている。


「有理架様!!」


優斗はガラスケースの中へと入ろうとした。




ガラスケース内。

赤紫色の花はペロリと自分の唇の部分をなめる。

ツルの形の針が花の上の方から突き出た。


花は穴があき、そこから赤紫色に染まった有理架が現れた。



花はまだツルを動かしている。

ツルをまだ伸ばそうとしてくる。

有理架は穴を開けた部分を赤紫色に染まった手で引き裂いていく。

そうすると…

ようやく花は動きが止まる。



「もっと早くに種まけばよかったですわ」


赤紫色に染まった有理架の元へ、ミレディがタオルを持って行く。


「有理架様、おけがは…!?」


ミレディは感情の見えない顔だが、声はあわてている。


「平気ですわ」


優斗はとたんと地面に倒れる。


「よかった…………」


いつきもガラスケースの入り口へ行く。

有理架とミレディが出てくる。


「有理架さん!大丈夫ですか、食べられてて」


「食べられて、もうだめかと思いましたわ」


「どうやって無事だったんですか?」


「食べられたとき焦ったけど私の上の方に種を5つまいたんです、自分に刺さったら大変…でしたわ」


「そうだったんですね…!大丈夫でよかったです」


有理架はタオルで頭をふくという。


「いつきさん、途中ですが…ごめんなさい、私シャワー浴びてきますわ」


「はい!」


「体育館は好きに使ってですわ、帰るときはミレディか優斗に伝えてください」


「…はい!ありがとうございます」





有理架はシャワーを浴びていた。

赤紫色が床に流れていく。

暗い目をする。

シャワー室の外のミレディに声をかける。


「ミレディ…そこにいる?」


「はい、います」


「そう…そこにいてですわ」


「…はい」



有理架は暗い目で自分の体を抱きしめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ