いつきと有理架
リンゴーン、と。
高級そうなチャイムの音が響く。
そこは洋風の大きな屋敷だ。
屋敷のまわりや、庭には様々な色の花が多く、いきいきと咲いている。
扉が開くと、そこには執事服の男性がいた。
深い緑の短い髪。
きりっとした目は鋭く、初対面であれば、緊張する。
「おはようございます、いつき様」
「様はいらないです」
「有理架様に様をつけるようにと言われてるんです」
「そうなんですか」
「どうぞ中へ、有理架様が喜び_」
そこへ、ピンク色がぶわっと揺れた。
「ちょっと!いつきさん!またなんであなた来てるんですの!?」
彼女は花宮有理架。
金髪の右横にツインカールをしてピンクのミニドレス姿。
いつきははっきりという。
「強くなるためです」
「あなた最近私に叩かれたですわよね!?来る!?」
「いえ、前から来てたし…その通りです!私はできることしようとして、勝手です」
有理架は腕を組む。
「わ、わかっているならいいんですの」
深い緑の髪の男性はいう。
「有理架様にお友達がいてうれしいです」
「友達じゃないですわ」
「そうですか、有理架様は友達が…いないのですね」
緑の髪の男性はどこからかハンカチを手に持ち、目をふく。
「ここへと来るのは有理架様のお姉様とその他の方などはいますが、お友達が来ることはあまりないのに…いつき様はここへ何度も来ていたから…私もミレディ様も喜んでいたのに」
「優斗!ちょっと!私をさみしい奴みたいに言うなですわ!友達がいなくたって生きていけますわ!」
いつきはその光景が終わるのを待っていると、白色のエプロンに黒色のメイド服姿の女性が来る。
金色の髪を後ろの下辺りに団子になるようにまとめている。
彼女はミレディ。
「いつき様、すみません、あの二人は無視して行きましょう」
「え…いいんですか?」
「はい、優斗さんは有理架様で遊ぶところがあるので無視しましょう」
「はい、あの…いつきでいいです」
「いえ、いつき様とおよびします」
いつきは振り向く。
優斗は口元をにやにやとしているのを手で隠しながらいう。
「有理架様、いつき様が行ってしまいます」
「あんたが私を悲しい奴みたいに言うからでしょう!」
いつきは広い体育館につく。
「どうぞ、いつき様」
いつきはそこでまずは準備運動をしていく。
有理架までしていく。
「花宮さんもですか?」
有理架はむうとする。
眉をつり上げ、いう。
「有理架でいいですわ!」
「あ!そうでした、すみません」
「一応昔から知ってるのに、なんか他人みたいで嫌ですわ!」
「はい、有理架さん」
遠くから緑の髪の男性。
優斗はどこか優しげに笑う。
そこへミレディが声をかける。
「優斗さん、私たちは屋敷の掃除に行きましょう」
「わかりました」
「…うれしそうですね」
「うれしいですよ、有理架様がうれしそうですから」
ミレディは有理架の方を見る。
そっと小さく口元をほころばせる。
「私も…うれしいですね」
二人は体育館を出て行った。
いつきは体育館内を円をかくように走る。
体操着姿の有理架はその姿に一緒に走りながら一言。
「じゃあ、四周」
「はい!」
いつきは体育館内を走る。
基礎体力のために走るが大事らしく、いつきはしていく。
走り終わると、いつきは床に倒れた。
「は、走りました、つ、次…!」
有理架は体操着姿でいう。
「十分休憩ですわ」
「で、でも…」
「休むのも大事なんですわ」
「…はい」
床から起き上がると息をしていく。
「疲れてるんですの?」
「つか、れてないんですか?」
「疲れてないですわ、全く」
「そうなりたいで…す」
そこへ、ミレディが来る。
「有理架様、狂花が咲きます」
「わかりましたわ、いつきさん、少し失礼します」
「…はい」
いつきはそこにいると、優斗がやってくる。
鋭い目の彼にいつきはびくっと肩を飛び上がらせる。
「いつき様、今日も見ていきますか?」
「…見たいです」
立ち上がると優斗の後をついて行く。
屋敷の中は、広い廊下や多くの扉がある。
ある扉に着くと、開く。
そこには、とても広い部屋があり、大きなガラスケースがある。
ガラスケース内は、一つだけ大きな木が生えている。
そこに、ピンクのミニドレス姿の有理架がいる。
地面から赤紫色の花が飛び出てくる。
その花はツルを伸ばし、有理架へとそのツルを刺そうとする。
地面をたっと走りツルをよけていく。
ツルは2本ほどで、よけた有理架の右足に絡みつく。それによって、地面へと、倒れる。
いつきはハラハラとする。
「有理架さん…!」
有理架は地面へと倒れてしまい、ツルは有理架の腕も掴み、空中につるす。
赤紫色の花は、地面から生えていて、四つの花弁の中央が口のようにぱかっと開く。
「有理架さん!?」
優斗はいう。
「あれで有理架様は倒されな_」
ばくんと花に食べられた。
「食べられましたよ!?」
「え?えっ!?え!?有理架様!?」
優斗は驚いている。
「有理架様!!」
優斗はガラスケースの中へと入ろうとした。
ガラスケース内。
赤紫色の花はペロリと自分の唇の部分をなめる。
ツルの形の針が花の上の方から突き出た。
花は穴があき、そこから赤紫色に染まった有理架が現れた。
花はまだツルを動かしている。
ツルをまだ伸ばそうとしてくる。
有理架は穴を開けた部分を赤紫色に染まった手で引き裂いていく。
そうすると…
ようやく花は動きが止まる。
「もっと早くに種まけばよかったですわ」
赤紫色に染まった有理架の元へ、ミレディがタオルを持って行く。
「有理架様、おけがは…!?」
ミレディは感情の見えない顔だが、声はあわてている。
「平気ですわ」
優斗はとたんと地面に倒れる。
「よかった…………」
いつきもガラスケースの入り口へ行く。
有理架とミレディが出てくる。
「有理架さん!大丈夫ですか、食べられてて」
「食べられて、もうだめかと思いましたわ」
「どうやって無事だったんですか?」
「食べられたとき焦ったけど私の上の方に種を5つまいたんです、自分に刺さったら大変…でしたわ」
「そうだったんですね…!大丈夫でよかったです」
有理架はタオルで頭をふくという。
「いつきさん、途中ですが…ごめんなさい、私シャワー浴びてきますわ」
「はい!」
「体育館は好きに使ってですわ、帰るときはミレディか優斗に伝えてください」
「…はい!ありがとうございます」
有理架はシャワーを浴びていた。
赤紫色が床に流れていく。
暗い目をする。
シャワー室の外のミレディに声をかける。
「ミレディ…そこにいる?」
「はい、います」
「そう…そこにいてですわ」
「…はい」
有理架は暗い目で自分の体を抱きしめた。




