いつきと辻さん
「あの、辻さん」
ある住宅街の家に住む60代ほどの女性へといつきはいう。
「なにかしら?いつきさん」
女性は家の庭にいた。
花が咲いている。
花壇が並べられ庭に四角形になるように置かれていた。
青色の花のみが咲いていて風にゆれる。
いつきは今回依頼を頼まれた。
戦うとかではなく、ある女性のお願いであった。
女性は辻遥という名前であり、優しげな目をしてる。
いつきは質問をする。
「誰を待ってるんですか…?」
「目印なの、これは」
女性は青色の花のある花壇の中央に立つと青く輝くうろこのようなものをポケットから出す。
「あの、私は何をしたらいいでしょうか」
「あなたは、これをまいていてほしいの」
女性は地面に置かれた小さな箱を持ち上げると、にこりとした。
いつきはというと、女性の近くで箱の中の青色の小さな紙をばっと、空中にまく。
紙は地面へと落ちた。
女性はというと、うろこを空へと向ける。
いつきは思う。
辻遥という女性は毎年春頃になるとこの依頼をしているらしいが、いつもは陸が行っている。
それを考えると、色々思うが、依頼である。
いつきは青色の紙を庭へばっとまく。
女性は空を見ていう。
「来たわ」
風が止まった。
「?」
いつきは一瞬目を閉じ、開ける。
目の前に青色が見えた。
青色の花が空中にあり、いつきと女性のまわりを囲む。
花は、止まっていた。
が、急に風が起こり、びゅうと音を立て、青い花は舞うように空へと吸い込まれていく。
いつきはその強さに目を閉じたが、なんとか、上を向き目を開ける。
空にいたのは長い体を持つ青色の何か。
もし、言葉で言うなら
なんだろう
「りゅ、う…?」
青色の花が龍のまわりを囲む。
二つの角。
体が長い。
しっかりとした鋭い目つきの気がする。
いつきはそれを見て動けなかった。
が、隣の女性はいう。
「今年も来たわね!元気で体とか体調くずさないようにね、もうあばれちゃだめよ」
龍は一瞬眉のような部分を下げるが後ろを向く。
いってしまうようだ。
龍は天を翔る(かける)ようにいってしまう。
いつきは何も言わずにその姿を見つめた。
が、青い花が空から落ちてきていつきを埋め尽くす。
いつきは、青い花の中で倒れるが花が支えてもくれたため、けがはない。
女性は少し、眉を引くつらせると、倒れたいつきを抱き起こそうとしてくれた。
女性の手をつかみ、いつきは立ち上がる。
「大丈夫かい!?いつきさん」
「は、はい…」
女性は空の方を向きいう。
「おとなしくなったと思ってたけど、まだまだね…」
女性の頭にも青い花がのっていた。
「あの子、昔はもーっと暴れん坊で、でも、大分おとなしくなったのよねって、思ったらいつきさんに意地悪して、次会ったら叱るわね」
それから青い花を家の中へと持って行く。
家の中の一室が青い花まみれとなる。
全て花瓶へといれ、飾った。
いつきはその花を見て、あの龍から女性への贈り物のように思え、どこか胸が温かくなる。
女性はいう。
「ありがとう、いつきさん」
「あ、いえ!陸さんじゃなくてすみません!」
「そんなことないわよ、陸さんが来ることも、あなたが来てくれたことも私はとてもうれしいの」
「…は、はい」
いつきは、もう少し女性の家でくつろぐことになった。
お菓子をごちそうになってしまった。
とてもおいしかった。
いつきはそれから、女性と別れ、暗くなっていて泊まってかないかまでいわれたが、そこまではさすがにと断る。
外へと出てみるとかいとがいた。
「兄さん」
かいとはいう。
「遅くなるってメールとかしろよな、心配するだろ!」
「ご、ごめん」
いつきは、あまりメールとかしない方だ。
「帰るぞ、いつき」
いつきはかいとと家へと帰っていった。
「…うん」




