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いつきとかいと

最近、野菜炒めをすることが多い。

かいともいつきも、あまり料理が得意じゃないが、お互いに少しずつできるようになってきた………………と、思いたい。

まだまだだな。

うん

お互いに


洗い物とか、終わるといつきは小説を読む。

少し読み、あるシーンが好きで、その場所を忘れないようにしおりを挟む。


「……………………」


いつきは、かいと以上に多分、物語が好きかも。

かいとは、聞く。


「いつきは本、好きだよな」


「!だって!かわいいから!純粋だし!純粋に歪んでる!そこがいいの!」


いつきの物語好きはかなりだ。


「兄さん!かわいい女の子に「いかないで」って、涙目でいわれたら!どきどにするでしょ!」


それは

たしかにと

かいとは思う。


「涙目は、たしかに」


でも

どういう状況だろう。


「女の子はかわいいの!!!!!!とっても!」


いつきの物語の女の子好きは、うん。

かなりだ。

かなりの好き。

かいとは頷く。


「かわいいのはわかる。かわいいよな。本当」


「うん。なんかね、好きなんだよね」


「男子とかは…」


「………………そこそこ好きだよ」


そこそこなのか。

かいとは思う。

女子の方が好き、か。

でも、好きなのって人それぞれだよな

いつきはニコニコ。


「かわいいよ。かわいい。もう、好きで好きで止まらない」


かいとは、小説を見る。


「俺も好きだけど、いつきは俺以上かもな」


「兄さん以上かはわからないけど、好きなんだよねー好きすぎて、好きすぎて、困ってる」


「そんなにか………いや、わかるけどさ」


かいとは幸せそうないつきを見つめる。


「なんか、好きすぎるって…いいな、なんか、幸せそうだ」


幸せそうといわれていつきはどこか笑顔を作るが、暗闇が宿る。

でも、目はしっかりしてる。


「本当はね、大嫌いなんだよね。物語が嫌いで嫌いで嫌いで………でもね、嫌いになったからかな?」


いつきは笑いながらしゃべる。


「嫌いって思えば思うほど好きになってた」


「好きになればなるほど大嫌いだった」


「嫌いになった時、うれしかったんだよね」


「あー。よし。物語なんてもう見ないって思ったんだけど」


「嫌いになればなるほど好きになるんだよね」


「誰かの物語を見れば見るほど好きになる。不思議だよねー」


かいとはじっといつきの話を聞くと、自分の気持ちをいう。


「俺は嫌いだった時ないな」


「私は嫌いだった。好きだったから大嫌いだった………………なのに………………!」


いつきはブンブンと手を振る。


「もう!みんなの書く物語おもしろすぎ!おもしろいの!本当に!おもしろすぎるの!!!」


「おもしろいよな!たしかに」


かいとは強く頷く。


「嫌いになれないよ!これじゃあ!おもしろいよ!おもしろすぎるよ!」


いつきは物語が嫌いだったようだ。

しかも、相当に。

顔を見ていたら何となくわかる。

好きだけど、どこか闇のある瞳。


「まだ嫌いだけど、多分、私」


いつきは声は暗いが、幸せそうにする。


「死んでも好きだと思う」


「そ、それは………」


「そんな気がするー」



物語が好きないつき。

多分、彼女の趣味の中で、一番の趣味。

ただ好きという。

馬鹿みたいな気持ち。




かいとはいつきの頭をなでておく。

いつきはなんというか、うーん、言葉でうまくいえない。

複雑なのかもしれない。

かいとは、それでもいう。


「好きなのがあるっていいよな!」


「う……うん、なんで頭なでてるの」


「何となくだ!なでられてろ」



いつきは思う。

好きは、地獄。

好きがあるのは地獄だと思える。

彼女は“好き”は天国にはならないと思っている。


“好き”は一生の地獄。

生きながらの地獄。


いつきは、部屋で本を抱きしめて寝る。


「大っ嫌いだから大好きだよ」


一人でつぶやく。


好きすぎるから嫌いを知ることができた…?のかもしれない。

ずっと、命が終わるまで好きな気がする。

命が終わるまで。

ずっと

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