数秋とかいと5
「んで、連れて来た?」
「目が覚めたらいつものようにします」
「そう?楽しみね」
「はい」
声がする。
かいとは目を開ける。
そこは暗い。
でも、ボールがいくつか跳ねている。
「なんだ、ここ」
かいとはうつぶせ。
起き上がれない。
_な…
かいとの前に数秋が来る。
「起きました?じゃあ」
そこに一つ手鏡が浮かぶ。
それから声がする。
「はじめるわよー」
かいとは、そこにいて、急に頭に痛みが来る。
ズキズキと。
_い、痛い!?頭…?なんで
かいとは頭を抱える。
誰かがいう。
「へー。ただの人間じゃないわね、力が多い。いいの連れて来たわね」
かいとの痛みは収まらない。
_いてえ!!!なんなんだ!
続く痛み。
数秋は手鏡へ声をかける。
「そろそろいいのでは?」
「まだだめ!彼、力多いわ、もっともらう」
「ですが、これ以上は」
「はあ?」
手鏡から水色の服を着た女性が現れ、数秋の両頬を掴む。
「これは、私の力なのよ?あんたは私の力を借りてるだけ。私はね、力が必要なのよ?あんたの望み叶えたでしょ?嫌がらせをした奴らは苦しめた」
女性の目は強い。
「次は私の番よ」
数秋はビクリとする。
「けど…!」
「黙れ」
強い口調でいわれ、数秋は黙る。
昔、数秋は嫌がらせばかりされていた。
だからか、自分のことだけが好きになった。
その時、ある少年が数秋を助けた。
かいとだ。
「やめろよ!嫌がってるだろ」
それからかいとを見ていた。
自分が好きなのに。
彼を見ていた。
彼は数秋を見なかった。
それが、なぜか腹がたった。
嫌いだった。
気づく。
嫌がることをしたら彼は自分に気づいた。
だから、彼に嫌がらせをした。
見てくれるから。
それをしすぎて、殴られてしまったが。
彼のことは嫌いなのに。
離れてからももっと見てしまう。
嫌いなのに。
数秋は女性へという。
「やめてください」
「は?何いってるの?まだよ」
「お願いします……………」
嫌いなのに。
数秋は動いてしまう。
嫌いなのに。
女性は
「……………あんたを助けたやつだっけ?それによって止めてあげる。でも、なら。悪い奴を連れて来て」
数秋は頷く。
「はい」
かいとは目を覚める。
「俺!あれ」
かいとは体育館に寝ていた。
その隣には草太がいた。
「草太……?……」
「すまない。かいとくん」
「嘘だったのか?あのモテたいとかの話」
「いや!あれは嘘じゃない」
「そいつって」
数秋も床に寝ていた。
「数秋さんは…………」
「そいつ、何がしたかったんだよ」
「多分…………会いたかったんだと思う」
「俺?」
「数秋さんはかいとくんの話多いから」
「お前らって」
かいとは気になる。
「どういう関係なんだ?」
「僕はいじめる奴にいわれるまま数秋をいじめた」
「…」
「僕はだから、いうことを聞いてる」
「そうだったのか」
「…………ああ」
草太は静かにいう。
「モテたいとかいったけど人をいじめた僕が誰かを好きになんてなってはいけない」
「……………」
かいとは軽く何もいえない。
でも。
「…………でも」
草太は困った風にいう。
「数秋さん起きる前に行ってくれ」
かいとは。
でも。
「行かねーよ!ちゃんと話す。俺のことそいつ嫌いなんだろ?次会ったときに困るから起きるまで待つ」
かいとはそういう奴だ。
_行けるかよ!ちゃんと話せるなら話さねーと!