逃げの間2
私は、かいとという少年が出て行き、自分も教室を出ようと思う。
扉にふれ、開けようとするが開かない。
ガタガタと音はするが開かない。
「え?さっきは開いたのに?」
少年は出ていった。
開くはずだ。
なのに開かない。
「どうして」
そういえば、自分で出口を見つけろと言っていた。出口はこの扉ではないのか?
開かないということは他に出口があるのか?
「出口を探してまでこの世界で生きてく価値は私にはない」
なにもできない。
何をしても失敗して
「恥をかいて笑われるだけ」
そんな世界で
「私には生きる価値なんてない」
出口を探す気になんてならない。
出口なんて
「出口なんてなくていい、ここでいい」
でも、ここは教室だ。
窓の方へと近づいてみる。
窓の戸も開かない。
窓の外から見えるのは。
私はぞっとする。
外には多くの怪物が下の方にいて私の方を見ると手を伸ばしてくる。
窓から離れる。
「なに、あれ」
膝をつくと体を抱く。
怖い。
こわい。こわい。こわい。
でも、外の世界だってそうだ。
いい人もいればこわい人もいる。
あの怪物よりも怪物もどこかにひそんでいるかもしれない。
それなのに、
「私は、嫌、嫌、外もここもいや!」
叫ぶ。
怪物の手が窓に張り付く。
が、中には入ってこないようだ。
入れないのかもしれない。
「…ここは、あんぜん…?」
教室ではあるが、安全かもしれない。
外の誰かともいなくてすむかもしれない。
なら
「ここにいた方が私は幸せなんじゃ…ない?」
自分へという。
安全だ。
私は安全だ。
私は、弱い。
弱い人間に生きる場所は、ない。
生きることはできない。
「私はここに、いれば…」
どうなんだろう。
怪物は入ってこない。
なら安全。
ほんとうに?
もし怪物が窓のガラスを割ったら?
わからないじゃないか?
この教室にずっといるということは綺麗な景色は見れない。
音楽も、本も、テレビも、ない。
誰かが作っているからあったものだ。
食べ物も飲みものも、電気も、この建物だって、道路も、何もかもが誰かがいるからあるものだ。
ここにいたら、何もわからない。
あの怪物しか見えない。
「それは、幸せ?」
私は私に質問する。もう一度。
「ここにいることは私は幸せ?」
苦痛と思うなら、嫌だと少しでも思ったなら行動するべき…なんだ。
引きこもりがなんだ。
外へ出ようと本気で思えば、出れるかもしれない。
たとえ、誰が私を笑おうと
馬鹿にしようと
こわいことだ。
人の目は怖い。
こわいことだ。
でも、私はここにいても何も変わらないと、思った。
「もし、少しでも変わりたいのなら、そう思ったなら」
ここから出たいと思ったなら。
分からないはだめなんだ。
探すんだ。
あがくんだ。
「かっこわるい?ばかにされる?だから、だから…なんだ、なんだっていうの」
ぎゅっと拳を作る。
「こわいよ!なにもかも!ばかにされるのはこわいさ!それはそうだ!こわいからってなんだ!」
私は叫ぶ。
「何が!逃げの間だ!逃げたよ!逃げましたよ!でも!」
私はきっと目を強くして前を見る。
「私はまだここにいる、ここにいるなら、諦めるのは最後まで方法を探して、してみてからだ!」
私は出口を探す。
黒板をさわってみたり、机、椅子にさわる。
もう一度窓を見ると、怪物の手がない。
のぞいてみる。
そこには、かいとという少年が怪物と戦っていた。
どうして戦えるのか?
怖くないのか?
どうして、立ち向かえるのか?
私にはわからない。
でも。
私はここから出たい。
現実はひどく残酷だと知っている。
頑張っていた人間は幸せになれない。
頑張っても意味はないことばかり。
もっと最低なのは頑張った人間の方が悪いことが起きることがある。
それが
現実。
それでも、それでも、私は出たい。
ここから。
出たいから、方法を、探す。
探してもだめでも探してやる。
方法は一つじゃないと信じたいんだ。
私は、机の中に手を入れると何かがある。