いつきとかいと
かいとは、じーっといつきを見つめる。
_俺、兄なのに………いつきは本当にしっかりしてるよな
_俺が弟みたいだ。俺は………なぜか好かれてるとかいわれるし…………いや、うれしいけど………うれしいよ!本当に好かれてるならうれしいよ!
いつきをじーっと見つめる。
「兄さんどうしたの?」
「あ………そのさ、いつきはしっかりしてるよな」
いつきは眉間にしわをよせる。
「どこが?」
「いや、俺は………なんていうか、励まされたり、みんなに優しくされてばっかりで何も返せてない……て…思って…」
いつきは、どこか小さく笑って答える。
「そうかもね。兄さんは何も………ううん、兄さんがいたから助けられた誰かもいるかも」
いつきは、優しげに笑う。
「私は…兄さんがここにいることで、私はみんなといられたよ」
いつきは素直にいう。
「兄さんがつないでくれてるんだよ。私とみんなを」
_そ、そうなのか?
「私は、本当は人と関わるのできない。人といられる人っていうふりをして生きてる」
いつきは言葉を続ける。
「兄さんが色んな誰かとつながってるから私はここにいる。私一人なら………」
いつきはにこりとする。
「何でもない」
_笑ってるな。いちいち聞かない方がいいか…
「俺だっていつきがいて、誰かとつながれる」
「そうかな?私は何もしてないよ」
いつきは、捨てるようにいう。
「私は、何もしてない。そもそも。自分のためにしか何もしないから」
_………はっきりしてるな
かいとは静かにいう。
「自分のために、か」
「私は私のためにしかしない。人のためとか嫌いなの。昔から大嫌い。自分のためなら、自分のせいにできる…」
_自分のせい……か
「でも、こんなこといってるけど人のせいにすることが多いからさ、いつも自分ため自分のためっていってる」
「いつき、どうしてそうなったんだ?」
「私が人のせいにしてきたから」
いつきはまっすぐにかいとの目を見た。
真っ暗だけど吸い込まれるほどの表情。
_なんで、こんな目ができるんだ…?いつきは
「だって、私が悪いんだもん。それに、人のせいにしたって、何も変われなかった。人のせいにしてる時間があるなら」
「自分を変えるために生きればよかった」
_俺は何もいわないほうがよさそうだ。
でも気になる。
誰でも色々とあるんだろう
「…………“空っぽな風”の時か?」
_あまりこの話は出さない。
いつきは妹だ。
俺の妹。
俺には妹が二人いると思ってる。
いつきはにこっとする。
「うん。そうかも」
悲しそうだけど、どこかもう何もかもから解放されたような顔。
いつきはそんな顔をした。